95話 クーデターの終結
鬼神小隊の皆は、立ち上がろうとするもよろけてしまった。そんなボロボロの六人を見て、流は盛大に笑った。
「ふふふ……あっはっは! いや、そうかそうか。立ち上がれもしないか。僕が皆担いで行こうか?」
「「断る!!」」
「自分たちで行けます」
流の煽る様な笑みに、榊と焔が大声で断り、白亜は手でそれを差し止めた。
そんな六人を愛おしそうに眺めながら、流は先を歩いた。六人はお互いを支え合いながら、ゆっくりと歩く。
「色々と聞きたいことはあるけど、一旦は戻らないとね。ゆっくりしたいし」
「そうですね。僕も早く戻りたい……ここは、嫌だ」
流の言葉に、久龍が強く同意した。珍しい久龍の強い反応に、流は目を丸くした。
「こりゃまた珍しい。久龍くんがそんなこと言うとはね」
「……疲れましたからね」
久龍は流の好奇の視線から目を逸らしながらそう答えた。
久龍の答えに、流は頷いた。
「そっかそっか。それゃ疲れるよね。っていうか、これからの方が疲れると思うけど」
「「「「「「え?」」」」」」
流が発した言葉に、六人は声を揃えて疑問を呈した。頭の上には疑問符が浮かんでいる。
「いや、だって、こっからあの山登るんだよ? 行きとは違って、君達マナ使えないし……」
流はきょとんとした顔で、そう言った。
「流さん……」
「流さん……」
榊と焔は、流の顔を見上げた。不思議な反応に、流は混乱して目を泳がせた。
「え、なに?」
「「俺達を担いで行ってください!」」
二人は息が揃ったお辞儀をして、流に頼み込んだ。
榊と焔に続くように、懇願する様な目で他の四人も流を見つめた。
「あはははは! しょうがないねぇ。僕が担いであげよう」
流は声を上げて笑うと、六人の腹のあたりにタックルするような姿勢で突っ込むと、そのまま抱えた。
「ひとっ飛びといきますか」
流はそう言って、マナによる身体強化で一気に足を強化すると、勢いをつけて跳んだ。
常人であれば悲鳴が上がりそうなものだが、そんなことはなく寧ろ歓声で溢れていた。
輝かんばかりの笑顔に、流はホッとしたような顔をする。
幸いにも、今だけは今回の件の自分の失敗を忘れられているようだ、と。
失敗は悔いても引き摺らないことが重要なのだ。
(これぐらいで折れられたらこっちが困る。本当に……強い子たちだよ。僕なんかよりも)
流は心を外には出さず、笑顔を貼り付けた。
そんなことを露も知らない六人は、楽しそうに流れていく景色を見送ったのだった。
十分もすれば、すぐに隊舎に着いた。流は抱えていた六人を下ろした。
「ふぅ〜……さすがに六人は疲れたな」
流はげんなり顔でそう言った。
「「あざ〜す!」」
「本当に調子いいね君達……」
榊と焔の元気の良いお礼に、流は苦笑で返した。
「まぁ良いよ。今日で九州に帰るしね。あ、でも事後処理とかもあるよな〜……どうするか」
流が考え込む様に、顎に手を当てながら首を捻っていると、怜が走ってこちらに来た。
「禁間さんから伝言です。後はこちらに任せて帰って良いぞ。だそうです」
急に横に来た怜に、流は驚いた反応を見せた。
「うぉっ! びっくりしたぁ……怜くんか……。あ、そうなの? じゃあ、帰ろっか」
「多分そうした方が、鳳凰隊も何かとやりやすいんでしょうね」
怜は流の言葉に頷き、転移陣の方向へと歩き始めた。六人もやっとのことで体力が多少なりとも回復したのか、よろよろではあるが自分で立って歩いていた。
流はその横を悠々と歩いて追い越した。
「挨拶は……ま、いっか。さっさと帰ろう!」
「今回ばかりは、流さんに賛成ですよ」
流の掛け声に、怜は苦笑しながらも頷いた。
そんな和やかな雰囲気の二人に、焔は泣きそうになった。
「なにこの人たち……化け物?」
「いや、まぁ……初動は僕たちの方が早かったから……」
「あと、私たちはマナを使い切っているのもデカいだろうな」
焔の悲壮な様子に、取り成す様に久龍と白亜がフォローする。その言葉で幾分か焔の表情も和らいだ。
「ていうか、俺達はまだ始めたばっかなのにこの人たちと同じだったらヤバいだろ」
「確かに……それもそうだな」
榊が口をへの字にしながら焔を向いてそう言うと、焔は口を間抜けに開けながら頷いた。
会話を聞いた流は六人の方を振り向いた。
「君達さぁ……僕への礼儀とか無いの?」
「俺達のこの状況へ一言どうぞ」
「…………。まだまだ君達、弱いねぇ!」
「はい、尊敬に値しないから、礼儀とか必要性を感じないわ」
「おい! ヒドイな君達!」
流の煽りに榊は両腕でバツ印を作りながらそう言うとと、流が怒った様に拳を掲げて叫んだ。勿論、本気ではないことは二人共分かっている。
飽く迄もこれはその場のノリで、場を和らげるものだ。皆、流への感謝の気持ちはある。それを表には出さず、笑い合う。
その度その度に感謝を示したりするのは、堅苦しくて、流は少し苦手だった。
だから、この雰囲気が心地よかった。
そうこうしているうちに、転移陣のある山小屋に着いた。少し音を立てて扉を開けて、全員で陣の中に立つ。
流が陣にマナを込めた。
強い光を出したかと思えば、そこはもう既に違う所だった。
建物の外に出れば、最早見慣れた対幻魔防衛隊九州支部の隊舎がそこにあった。
六人はそれをみた瞬間、その場にへたり込んだ。
「「「「「「か、帰ってきたぁ…………」」」」」」
気が抜けて、安堵の息を漏らすのだった。
彼等にとって、この三日間は本当に長かったのだろう。顔には疲弊が見て取れた。
「ほら、早く部屋に戻って。お風呂に入ってねな。今後の予定は明日言うからさ」
流のこの言葉で、六人はゾンビの様に立ち上がると、フラフラ右へ左へ動きながらも自分の部屋に向かった。
「あはは……本当にお疲れ様。よく頑張った……生きてくれた」
「そうですね。流さんもマントをすっかりビリビリにしちゃって……」
「あ……」
九州支部のNo.1とNo.2はそうしてまだ青い六人の背中を見守ったのだった。
あと何話ぐらいだ……すみません。分かんないです。早くこの章終わらせた~い!




