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葵の修羅  作者: シト
第三部 クーデター
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94話 天からの迎え

 ミカエルは密かに目の前の相手に対して、恐怖を抱き始めていた。


(何なんでしょう、この人。化け物でしょう。対応力もさることながら、先読みが異次元ですね……)


 口元に微笑をたたえながら、ミカエルは内心荒れに荒れていた。


 そんな風に考えている間も、自分が動こうとした先に術を置かれ、動けなくなったりしている。

 目が爛々と光る流は、驚異の集中力を見せており、ミカエルの僅かな動きを見逃さず、隙を突き、確実に追い詰めていった。


 流は常に炎を最警戒し、簡単には炎を出させる隙を与えなかった。接近戦に持ち込むことで、炎を出す為のスペースを作らせなかった。

 尤も、ミカエルは常に炎の剣を手に持っていた為に、殆ど炎が無かったとしても同じ結果だったが。


 とはいえ、流がミカエルにとって戦い辛いスタイルをとっている事は事実であり、確実にミカエルは焦りを感じていた。


 ミカエルはまだ余裕はあるものの、流の猛攻を紙一重の回避で躱し続ける。

 流の武器は決まっていない。何でも使いこなしている。故に、ミカエルの対応も常に流動的となってしまう為、ミカエルの行動は更に制限された。


 矢を弓で上に向けて射ると、今度は拳でアッパーカットを振るい、かと思いきやいつの間にか刀が手元にあり返す刀で真上から振り下ろされる。

 ミカエルはそれを炎の剣で受け刀を燃やすが、既に手は離され手には拳銃があった。竜胆色に光るそれから撃ち出された弾丸は、正確無比にミカエルの眉間、心臓、首の頸動脈を狙い、空気を切って進んだ。


 ミカエルは自分の目の前と上方向に炎の壁を創り出し、防御した。

 弾丸は燃え尽き、上から降ってきた矢もほぼ同時に燃え切った。

 流はそれをしっかりと見た後、一度距離を取った。


「なるほどなるほど。形が違っても同時に燃える……」


 流は顎に手を当てながら、うんうんと何度も頷いた。相変わらずの笑みは顔に標準装備されていた。

 ミカエルの方はというと、口からふぅと息を吐いていた。額に浮かぶ玉の様な汗を拭う。


「まったく……隙のない人ですね。おまけに特殊マナすら使わないとは、苦労の甲斐も無いですね」


 ミカエルは流を見つめ返し、そう言った。やや大袈裟に肩を竦めていた。

 その言葉に、流はフッと吹き出した。


「くふっ! あぁ、特殊マナね。最近長らく使ってないね。しょうがないからなぁ。僕の場合、使っても気付かれないからね」


 流はゆっくりとミカエルに向かって歩きながら、そう笑い掛けた。ミカエルは思わず身構えるも、流は一切の構えも取らず、ノーガードで歩き続けた。

 ミカエルは一瞬で流の目の前まで移動すると、炎の剣を顔目掛けて横に薙いだ。


 流はそれを読んだ様に、下にほんの少し身体を屈め、ミカエルの腹に蹴りを入れ込む。

 しかし、ミカエルもそれは予想していたことで、左手を腹の前に置いてその足を掴んだ。


 ミカエルはそのまま右手に炎を宿すと、それを振りかぶった。流はもう片方の足で地面を蹴ることで、無理矢理にミカエルの体勢を崩した。

 ミカエルが無理に拳を振るった結果として、左腕が空へ向かい、右腕が地面に向かうことで、両腕は交差していた。


 ミカエルは歯噛みして、流に炎を飛ばす。未だ足を掴まれたままの流は驚きつつも、水の塊を飛ばしてそれを相殺した。土岐式水術、壱式、水玉乱すいぎょくらんであった。

 ミカエルはそれを煙幕に自らの姿を隠しつつ、流の足を掴んでそのままぶん投げた。


 流は投げられたかと思えば、自分の背後に木の葉で出来たクッションのような物を瞬時に創り出し、衝撃を完全に殺した。


 流は真っ黒な隊服についた葉っぱを手で払いながら立ち上がった。ゆっくりと前を視線を向ける。

 そこには、左手が無くなったミカエルがいた。血が滴り落ち、水溜りが出来るまであともう少しといったところだろうか。

 白く長い指をした左手に、真っ赤な血が落ちていくのがまた生々しかった。


 ミカエルは端正なかんばせを歪ませて、苦痛を堪えた。やはり堪え難いもので、時々呻き声をが聞こえる。


「ぐっ……よくも、やってくれましたね」

「左手ぐらいで何言ってんの。お前は何人殺した?」


 ミカエルが息も絶え絶えに言う言葉に、流は冷たい視線を送る。その言葉には、ほんの少しだけ、怒りが混じっていた。


 透明な水に絵の具を入れてしまったかのように、それはほんの少しであっても、非常に目に――耳についた。


「…………返す言葉もないですがね」


 ミカエルはフッと眉尻を下げて、そう言った。

 流はどうにもその仕草が流は癇に障り、もう一撃食らわそうと身をかがめた時、薄暗くなった市街地に光の柱が落ちた。


 それは正しく、光の柱であった。

 辺りに一陣の風を起こし、全ての生き物の動きを止めさせた。四大天使と四聖王すらも止まった。


 その光の中心には、一体の天使がいた。その天使はそこにいる四大天使達の二倍程の大きさで、四枚の翼をその背中に携えていた。


「メタトロン……っ!」

「あ、やばっ!」

「ほら、だからこうなるって……」

「裁……けねぇわ、流石に」


 四大天使は各々で焦りを体現した。


「メタトロン…………七大天使か。こりゃあ、大変だね」


 流はミカエルの口から零れた言葉を拾って、顎に手を当ててそう言った。流の目が細くなっていた。


「ミカエル、ラファエル、ガブリエル、ウリエル! 帰還の命令だ! 早くこっち来い!」


 美丈夫の天使――メタトロンは大声でそう叫んだ。四大天使は顔を顰めつつも、指示には従った。


 四聖王達は無理に追わない。

 向こうから帰ってくれるというのに、わざわざ襲い掛かる必要等ないのだ。


 光の柱の中に四大天使達は入った。

 メタトロンが顔を上げると、それに従って光の柱も下から段々と消えていき、天に昇っていった。


 メタトロンは四聖王達を一睨みして消えていった。


 八人は思わず溜息を吐いた。


「やれやれ、やっと行ったね」

「解散かいさ〜ん!」

改憶かいおく部隊は鳳凰隊の担当だよな」

「俺たちはもう休むか」

「…………」

「とりあえず、新人くん達を連れて帰らないとね」

「僕はちょいと話し合わないと」


 溜まっていた愚痴の様なものが一気に吐き出され、誰が何を喋っているのか分からなくなった。


 いつの間にか鳳凰隊の人たちはこちらに派遣されており、瓦礫を片付けたりしている。

 避難所となっていた建物も六花の絶門花による空間からの断絶から解放され、たくさんの人たちが出てきていた。


 俄に人々の話し声によって、場は騒がしくなった。


 そんな中、流は鬼神小隊の六人に歩み寄った。


「さ、戻ろっか」


 流が微笑んで言った言葉に、皆頷いた。


 街は壊れている。

 しかしながら、喧騒だけは元に戻っていた。

 あと何話かでこの章が終わります(多分、きっと……)。というわけで、この章が終わったらしばらく加筆修正タイムに入りたいと思います。大幅に変更される話とかもあるので見返してみてください(変更した話はきちんと書きますので)。

 僕途中で気付いたんですよ。急追絡繰きゅうついからくりが同じ時間に違う場所にいたことに……。

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