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前世の執着を背負った剣の達人の武士が、異世界に生まれ変わって聖騎士団で活躍します。女ですけれど・・・  作者: 広之新


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第81話 全滅

 悪魔熊(デビルベア)が周囲を固めている団員に向かって行った。あまりに突然のことで団員たちは驚いて動けないでいる。


「応戦しろ!」


 ジン正団員が大声を上げた。それで団員がはっとして慌てて剣を抜いた。だが悪魔熊(デビルベア)の勢いはすさまじい。団員たちが斬りつけたが傷を負わせることができず、その鋭い爪でひっかかれたり、殴り飛ばされたりして多くの者が倒れていった。悪魔熊(デビルベア)1体に三番隊はピンチに陥っている。


 サイト隊長はそれを横目で見ながらも、「ミハイルに対しての構えを崩さなかった。団員たちを助けるために悪魔熊(デビルベア)に攻撃をかけることはできる。だがそうすればミハイルの方が襲ってくるだろう。サイト隊長は目の前の敵のため、団員が犠牲になっているのを我慢して見ているしかなかった。


「どうだ? 部下が気になるだろう?」


 ミハイルが不気味な笑いを見せた。だがサイト隊長はじっと黙っている。相手の動きに集中して間合いを少しずつ詰めて雷撃突きを放つタイミングを計っていた。


(ミハイルは斬られようとする時、転移魔法を使う。それを阻止するためには魔法発動前に勝負をつけねばならない)


 それにはかなりの速さが必要だ。サイト隊長は自分の雷撃突きならばそれが可能だと踏んでいた。


(もう少しだ・・・)


 サイト隊長ははやる気持ちを抑えた。あと少し接近すれば仕留められるところまで来ていた。すると何を思ったのか。ミハイルの方から進んできた。


(しめた! もらった!)


 サイト隊長はミハイルに突進してその胸に雷撃突きを食らわせた。思い通りの速さで完璧に技が決まった。


(仕留めた!)


 サイト隊長は勝利を確信した。だが手ごたえに妙な違和感を覚えた。すると背後に強烈な痛みを感じた。


「ふふふ。死ね!」


 サイト隊長は背後から剣で体を貫かれていた。ミハイルはサイト隊長の後ろにいたのだ。


「貴様は転移魔法発動前にその突きを食らわせようと思ったのだろう。そんなことは見抜いていたわ! だから俺の分身を前に出して俺はさっさとおまえの背後に転移した。おまえは罠にかかり分身に突きを食らわせたということだ」

「うぐぐぐ・・・」


 もはや言葉にならない。サイト隊長は無念の表情をしてそこに倒れた。


「隊長!」


 それを目にした団員たちは声を上げた。彼らはサイト隊長がそんな簡単にミハイルのやられるとは思いもしなかった。彼らの間に動揺が走り、浮足立った。


 ミハイルは団員たちには見向きもせず、その場から姿を消した。後の始末は悪魔熊(デビルベア)に任せるようだ。


「うがあ!」


 悪魔熊(デビルベア)はさらに狂暴になって団員たちに襲い掛かってきた。そうなったらまともには戦えるはずがない。逃げ腰になったところを悪魔熊(デビルベア)に次々に倒されていった。そして恐怖で動けなくなった見習いでさえ、容赦なく殺されていった・・・。



 最後はリーだけになった。先日、正団員に昇格して自信満々だったが、もはやその影すらない。悲壮な覚悟で剣を構えていた。


(ロック前隊長の仇を取れないばかりか、悪魔熊(デビルベア)に三番隊は全滅させられてしまう・・・。アリ! 俺たちの無念を晴らしてくれ!)


 リーは破れかぶれで悪魔熊(デビルベア)に突進していった。だが左手の爪で胸を串刺しにされ、そのまま息絶えた。これで三番隊は全滅してしまった。



 ミハイルはこのままこの場を離れようとしていた。ここは彼のアジトの一つに過ぎない。黒い剣の増産は果たし、ここはもう用がなくなったからだ。


「後は私が直接、手を下さなくても世は動く・・・」


 隊長クラスをはじめ多くの団員を失った聖騎士団にもはやかつての力はない。王家は早々に倒れよう・・・ミハイルはニヤリと笑った。


 だがミハイルは背後に急に気配を感じた。誰も追ってこないと思っていたのだが・・・。


「待て! ミハイルだな」


 それはマバラ隊長だった。ミハイルは山を下りるのではないかとここに来たのだ。ミハイルは振り返ろうともしない。そのままマバラ隊長に話しかけた。


「三番隊は全滅した。サイトもな」

「なんだと!」

「王家に味方した報いよ! おまえはどうするのだ?」

「どうするもない! おまえを倒すだけだ」


 マバラ隊長は剣を抜いた。


(ミハイルは侮れない。キタ隊長ばかりかサイト隊長まで倒したのか・・・恐ろしい奴だ・・・)


 自分が倒せるかはわからない。だがここはやるしかない・・・マバラ隊長は慎重に間合いを詰めた。だがミハイルは振り返りもせず、悠然と立っている。


「こちらを向いて剣を抜け!」


 マバラ隊長はそう声を上げた。たとえ恐ろしい黒魔術師でも刀を持たない者を背後から斬りつけることはできない・・・それは彼の信条であった。


「相変わらずだな」


 ミハイルは振り向いた。そしてそのローブのフードを脱いで素顔がさらした。青白い顔に鋭い眼光が光る。その瞼は神経質そうに震えていた。

 その顔を見てマバラ隊長は愕然として思わず声を上げた。


「あ、兄者・・・」

「ひさしぶりだな。チェズよ」


 ミハイルは笑顔を見せていた。


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