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前世の執着を背負った剣の達人の武士が、異世界に生まれ変わって聖騎士団で活躍します。女ですけれど・・・  作者: 広之新


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第78話 ゾルタン山

 ダダ隊長は催眠魔法によって男から情報を引き出した。


 男はヤルタという名前で反王家運動をしている。仲間5人とともにミハイルに呼ばれ、ゾルタン山のアジトに向かった。そこであの黒い剣を手渡された。それには聖騎士団員を抹殺するという黒魔術が籠められている。それで順番にその剣で団員を殺害していったという。


 隣の小部屋でカルヴァン団長とオーガ副団長は尋問の様子を見ていた。


「ミハイルは反王家運動の者と結びついている」

「ああ。これは厄介だ。やつがあの黒い剣をもっとばらまけば、聖騎士団を揺らしかねない」

「だから早速、やつのアジトを叩かねばならん!」


 カルヴァン団長は決意した。ミハイルを討伐するため聖騎士団をゾルタン山に差し向けることを・・・。


 ◇


 ミハイル征伐は三番隊と四番隊、および五番隊が受け持つことになった。全体指揮はカルヴァン団長が執る。前回の戦いで被害の大きかった一番隊と二番隊は除かれた。だがマリウスだけは参加する。極星十字剣を受け継いだ彼がミハイルを倒すとカルヴァン団長が期待したからだ。


 まずはサイト隊長が山への入り口に三番隊の団員たちを配置してゾルタン山を封鎖した。これで山から出ようとする者をすぐに発見でき、ミハイルを取り逃がすことはないはずだ。

 サイト隊長は山を見上げた。何か不穏な空気が動いているように感じた。


「うまくいけばいいが・・・」


 サイト隊長は何か言い知れぬ不安を抱いていた。



 五番隊が先頭に立ってゾルタン山に登った。急な斜面に木々が生い茂り、人が通る道などない。五番隊は魔法を使える者もいるので、その力を使って頂上への道を切り開いていく。その後に四番隊が続いた。その数は50名を超える。いくらミハイルでもこれだけの団員が押し寄せたら敵うまい・・・皆がそう思っていた。


 やがて木々の間を抜け、崖を上って行くと小屋が見えた。カルヴァン団長が包囲の命令を出そうとすると小屋から黒いローブの男が飛び出した。仮面をかぶっていて顔はよく見えないが・・・


「ミハイルだ! 逃がすな!」


 マリウスが追って行った。その後を5番隊の団員の多くが続く。だがダダ隊長は動かない。小屋をじっと見ている。カルヴァン団長が尋ねた。

 

「どうしたんだ? ダダ」

「いや、あの小屋にまだ殺気を感じる・・・」


 そう言い終わらないうちに小屋からまた黒いローブの男が出て来て逃げ去った。やはり顔を隠している。


「やはりさっきのはおとりだったのか!」


 ダダ隊長はその黒いローブの男を追って行った。残りの団員たちがそれに続いた。カルヴァン団長はたった一人残された。すると、


「ミハイルだ!」


 後方の四番隊から声が聞こえた。


(これはどういうわけだ? ミハイルがあちこちに現れたのか・・・。いや、そうではない。これはおとりだ。本当のミハイルはどこにいるのか?)


 するとまた小屋から黒いローブの男が出てきた。やはり仮面で顔を隠している。その者は黒い剣を振り上げてカルヴァン団長めがけて向かってきた。


(こいつがミハイルか!)


 カルヴァン団長は剣を抜いた。男は黒い剣を鋭く振り下ろしてきた。それをカルヴァン団長は受け止める。それでその男の技量がだいたいわかる。


(やはりなかなかの腕だ!)


 それから男は何度も攻撃してきた。だがカルヴァン団長はそれをことごとくはね返す。


(この男はミハイルではない。黒い剣で強化されているだけだ!)


 それなら一撃で倒さねばならない・・・カルヴァン団長は剣を振り上げて構えた。そこに男が突っ込んでくる。


光芒一閃(こうぼういっせん)!)


 カルヴァン団長の剣が目に見えないほどの速さで振り下ろされた。その威力はすさまじく、男の仮面を割り、その頭から体をスパッと一直線に斬っていた。


「ぐああ!」


 男はその場に倒れて灰になって消えていった。そこには黒い剣が残されたのみ・・・。


(やはりミハイルではなかった。やつはどこにいるのか・・・)


 割れた仮面からのぞいた顔は若い男のものだった。カルヴァン団長は辺りを見渡した。もはやその小屋からもまた周囲からも殺気じゃ感じられなかった。


 ◇


 マリウスは黒いローブの男を追って行った。その手に持つ黒い剣とその邪悪な殺気から、その男をミハイルだと思っていた。やがて男は森の中に入って行った。


「待て!」


 マリウスも躊躇せずに飛び込んだ。すると「ビューッ」と風を切る音がして黒い剣がマリウスを襲った。


「カキーン!」


 マリウスは剣を抜いて受け止めた。男は何度も剣を繰り出してくる。それをマリウスはことごとくはね返していく。


「マリウス隊長! 大丈夫ですか!」


 森の外からついてきた五番隊の団員の声が聞こえる。


「来るな!」


 マリウスは森の外に向かって叫んだ。この強敵と戦えるのは自分しかない。他の者がいれば足手まといだ・・・彼は一人でこの男を倒そうとした。


(キタ隊長から受け継いだこの極星十字剣。この聖剣で討つ!)


 そうなれば彼の必殺技しかない。


(満月剣!)


 マリウスは大きく剣を回し始めた。男は躊躇なく挑みかかってくる。


「ズバッ! ズバッ! ズバッ!」


 マリウスの剣がきらめいて男を斬り裂いた。


「ぐおう!」


 男は断末魔の叫びを残して消えていった。後は黒い剣が残るのみ・・・。だがマリウスに勝利の喜びはなかった。


(こいつはミハイルではない!)


 マリウスは確信していた。こいつは替え玉の1人に過ぎないと・・・。


(一体、ミハイルはどこにいるのか?)


 マリウスは辺りの気配を探っていた。


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