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前世の執着を背負った剣の達人の武士が、異世界に生まれ変わって聖騎士団で活躍します。女ですけれど・・・  作者: 広之新


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第73話 受け継ぐ

 ミハイルのロンチェスター寺院への襲撃は終わった。アリの活躍で撃退できたものの、その被害は甚大だった。一番隊のキタ隊長戦死。二番隊のナラク隊長が右腕を斬り落とされた。そして多くの団員が死傷した。聖騎士団は大打撃を受けたのだ。


 カルヴァン団長はオーガ副団長と相談して聖騎士団を立て直すことにした。


「隊長を失った一番隊だが、マリウスを隊長に昇格させようと思う」

「それでいいと思う。マリウスにはそれだけの力がある。王宮の警備は本部から人を出そう」


 いよいよマリウスが一番隊を引き継ぐことになった。一番隊は今回の戦闘で多くの死傷者を出した。そのため、他の隊からの団員の補充を受ける。それだけにこれをまとめられるかが問題となる。


「二番隊をどうするか・・・。ナラク隊長があの状態ではもう十分に戦うことができない」

「ナラク隊長は指揮を執ることはできる。だが戦いとなると誰か腕の立つ者を入れる必要がある」


 それはカルヴァン隊長も考えていた。適任は一人しかいない。


「やはりアリか?」

「俺もそう思う。いいタイミングで戻って来てくれた。アリはミハイルと五分に戦った。正団員として二番隊に入れよう」


 アリは二番隊の正団員として復帰することに決まった。だがまだまだ問題が残る。今回のことで多くの正団員が死傷した。その人員を補充しなければならない。窮余の策で見習いを従団員に、従団員を正団員に昇格させることにした。また各地から見習いになる剣士たちをかき集めた。これで見かけ上は以前と同じ団員の数となる。だがこれでは小手先のことでしかない。聖騎士団の戦闘力が格段に落ちたとことは確かだ。


「ミハイルはまた襲ってくるかもしれない。次は防ぎきれるか・・・」


 カルヴァン団長は顎に手を当てて考えていた。


 ◇


 今回の戦いで亡くなった団員たちの合同葬儀がしめやかに行われた。キタ隊長をはじめ50数名・・・惜しまれながら最後のお別れをした。彼らの遺体は火葬され、遺族の希望によっては敷地内にある墓地に葬られた。


 マリウスはキタ隊長の墓に手を合わせていた。


「隊長。どうして・・・。あなたは邪悪な黒魔術師を打ち破るために聖騎士団に入ったのではないのですか・・・天啓によって・・・」


 自分がいたなら・・・それが悔やまれてならない。すると背後から声をかけられた。


「マリウス。それが運命(さだめ)なのだろう」


 振り返るとカルヴァン団長が立っていた。


「団長」

「だが彼の意志は受け継がねばならない」


 カルヴァン団長は剣を差しだした。それは極星十字剣だった。


「これを・・・」

「そうだ! マリウス。君が持つんだ。キタに代わって君が黒魔術師を討て」


 マリウスは極星十字剣を受け取った。そのずっしりとした重みを感じた。


「わかりました。僕が引き継ぎます。この聖剣で黒魔術師を倒します」


 マリウスはキタ隊長の墓の前で誓った。すると剣は光を帯びた。本当の持ち主を得たかのように・・・。


 ◇


 アリはナラク隊長の見舞いに行った。教会の療養所に重傷者は入院している。


「よく来た! 話は聞いている。二番隊に来てくれたそうだな」


 ナラク隊長は笑顔で迎えてくれた。


「これからお世話になります」

「いや、面倒をかけるのはこちらの方だ」


 ナラク隊長は左手で右腕をさすった。そこにはもう肘から先はない。


「左手だけになった。これでは満足に剣は振るえない。本来ならここで退くべきなのだが、状況がそれを許してくれない。だから君に頼むしかない」

「いえ、僕なんかが・・・」

「いや、君だから頼める。君の剣を受けた時、感じたんだ。剣士の風格を・・・」


 確かにアリの中には前世の剣豪だった丈一郎の魂が受け継がれている。


「それで君に渡したいものがある」


 ナラク隊長は長い箱を出してきた。それは桐でできた古いものだった。消えかけた文字も見える。


「これを開けてみてくれ」

「はい」


 アリは箱を開けてみた。


「あっ! これは!」


 そこには1本の日本刀が入っていた。それも懐かしい・・・。


(茨丸か!)


 そんなことはありえないと箱の文字を見て見た。消えかけているが「茨丸」とも読めないこともない。


「これは我が家に古くから伝わる刀だ。剣と違って片刃しかなく、しかも湾曲している。我が一族は古来、どこか遠くから移住してきたようなのだ。そのいで立ちは大小の2本の剣を差していたようだ。私はそれで2本の剣を使う輪舞の技を極めたのだが・・・」


 ナラク隊長はそう話している。だがアリにはわかっている。大小の刀は2刀流のためではないと・・・。


「君の剣術を見て私は思った。この刀を使えるのは君じゃないかと。だからこれを君に託そうと思う」

「ありがとうございます」

「早速抜いてみて感触を確かめてくれ」


 そう言われてアリは刀を腰に差した。


(この感触・・・久しぶりだ・・・)


 遠い前世の記憶がよみがえってくる。アリはさっと刀を抜いてみた。よく手入れが行き届いてくもり一つない。


(これは茨丸! 間違いない!)


 アリは確信した。丈一郎が死んでどんないきさつでここにあるのかはわからないが・・・。ナラク隊長はその姿に満足したようにうなずいた。


「うむ。やはりそれは君が使ってこそ、真価が破棄されるだろう。これから頼むぞ!」


 アリは剣をしまって頭を下げた。


「聖騎士団としてこの刀で使命を全ういたします」


 こうしてアリは茨丸を再び手にすることになった。


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