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前世の執着を背負った剣の達人の武士が、異世界に生まれ変わって聖騎士団で活躍します。女ですけれど・・・  作者: 広之新


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第70話 究極輪舞

 北門方面の結界が崩壊して、魔獣が中に侵入した。まず餌食になったのは退却した一番隊の団員である。隊長を失い、士気が下がっているところに魔獣の大攻勢である。さらに多くの者が魔獣に倒されていった。


 この状況はガゼル塔からもわかった。多くの魔獣が結界を突破して最悪な事態を迎えつつある。


「五番隊に北門に向かわせろ! すぐにだ!」


 カルヴァン団長がロウ従団員に命じた。一番隊の穴を埋めねばならない。オーガ副団長がその状況に首をひねっていた。


「キタはどうしたんだ? こんな状況に陥るとは」

「魔獣にやられるはずはないと思うが・・・」


 2人はまだキタ隊長の死を知らない。そしてミハイルの出現を・・・。


 ◇


 ミハイルはキタ隊長を葬って北門の結界を破ったが、それで満足したわけではない。


「次は向こうだ!」


 彼は東門の方に歩き出した。魔獣を引き連れて・・・。そこには二番隊がいる。



 二番隊は東門の外で魔獣を迎え撃っていた。数は多いが2番隊の団員たちは力を振り絞って魔獣を倒していた。そんな激闘を続けていたので一番隊が壊滅したのをまだ知らない。

 ただナラク隊長だけは異変を感じていた。


「おかしい。背後で大きな物音がする・・・」


 すると南門を守るはずの結界が崩れ去った。それにはナラク隊長をはじめ団員たちは驚いた。


「何事だ!」


 ナラク隊長が駆け寄るとその奥からローブを着た男と魔獣の群れが見えた。


(魔獣がそこにいるということはどこかの門が破られたか・・・)


 そして二番隊は挟み撃ちになっていることを悟った。そしてローブの男は・・・ミハイルに違いない。ここに最悪最凶の黒魔術師が現れるとは・・・ナラク隊長は両手の剣を構えなおした。


「私が相手になろう! かかってこい! ミハイル!」

「ふふふ。貴様も死にたいようだな。北門にいた隊長のように・・・」

「なに! キタを!」


 ナラク隊長はそこで一番隊が壊滅してそこからミハイルと魔獣が侵入したことを知った。だがあのキタ隊長がむざむざミハイルの殺されたと信じることはできない。


「ふふふ。驚いたようだな? 次は貴様の番だ!」


 ミハイルは悠然と剣を構えた。


(キタがやられるほどだから油断ができない)


 ナラク隊長は不用意に打ち込まずに、剣を構えたままじっと敵の動きを探った。


「かかってこないのか? それではこちらからいくぞ!」


 ミハイルは剣を振り回してナラク隊長に向かってきた。その剣の動きは速い。ナラク隊長はとっさに剣を受け止めた。


(この剣の動き・・・尋常ではない。やはり黒魔術の剣か・・・)


 それならば自分の得意技で挑まねばならない・・・そう思ったナラク隊長は得意技を出すことにした。ミハイルの剣を押し返すと後ろに下がった。そして左手でも剣を抜いた。


「輪舞!」


 ナラク隊長の体が回り始めた。回転攻撃で相手に隙を与えず、斬り込もうというのだ。だがミハイルは悠然としている。回転する剣が迫っても後ろに下がりながら自分の剣でいなしている。


(あともう少しだ。これからが私の本気だ!)


 ナラク隊長はさらに回転を上げて行った。


「究極輪舞!」


 回転コマのように回ってミハイルに迫る。


(これでどうだ! 黒魔術の剣と言えどもこの剣を受け続けることはできまい!)


 後ろに逃げたところでこの剣は追いかける。これがナラク隊長の必殺技だった。ミハイルは後ろに下がろうともせず、剣を振り上げて間合いを計っていた。


(もらった!)


 ナラク隊長は勝ちを自覚した。すでにミハイルはこの剣の術中にはまっている。だが・・・。

 ナラク隊長が間近に迫った時、ミハイルがさっと剣を振り下ろした。その速さは目にも止まらない。


「うわああ!」


 悲鳴を上げたのはナラク隊長だった。その右腕は斬り落とされて飛んでいった。そしてバランスを失ったコマのように不規則に回ってその場に倒れた。


「ふふふ。究極輪舞、敗れたり!」


 ミハイルは笑った。回転する腕の動きを見切って、その右腕を切り落としたのだ。


「うむむむ・・・」


 倒れたナラク隊長は身を起こした。斬り落とされた右腕の先から血が噴き出している。それを懐の布を使って口と左手で縛った。そして左手で短剣を握って立ち上がった。


「まだやるというのか?」

「まだ左手がある。ここで負けを認めるわけにはいかぬ」


 ナラク隊長は左手で短剣を構えた。


「さすがは聖騎士団の隊長だ・・・と褒めてやりたいところだが、左手だけではどうすることも出来まい。無駄なことを・・・」

「それはどうかな」


 ナラク隊長は左手で打ちかかっていった。


(ここで私が負けてしまえば二番隊は総崩れだ。魔獣どもの餌食になるだろう。応援が来るまでもたせねば・・・)


 五番隊が予備でひかえているはず。それに副団長たちが本部の団員を引き連れてくるかもしれない。ナラク隊長はそれに賭けていた。


「まだまだ戦う気があるようだな。それなら私が引導を渡してやろう!」


 ナラク隊長の剣をミハイルは適当に受け流す。そして思いっきり剣をはねあげた。


「カキーンッ!」


 ナラク隊長の左手の短剣が飛ばされた。そしてミハイルは剣を突きつけた。


「これで終わりだ!」


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