第67話 運命
「だめだ。私ではないようだ。この剣を抜くのは・・・」
それでリンダやジョン、そしてシェルまでも大岩に上がって剣を引き抜こうとした。だが剣はびくともしない。
「おかしいな。天啓は下りたはずなのだが・・・」
ソウは腕組みをして考えた。天啓の言葉をよく思い出して・・・。
「抜けとは言っていなかった。それなら力技で。みんな、そこから離れてくれ!」
ソウは仲間をどかせると、剣を抜いた。そして大きく振りかぶって大岩に向かって行った。
「大岩崩し!」
剣を振り下ろすと、大岩が真っ二つに割れた。そして聖剣が上から落ちてきた。それをソウはがっちりつかんだ。
「よし! 剣は手に入れたぞ!」
するとまた地面が震え出した。今度はもっとひどい。天井からものが降ってくる。
「やばいぜ! 洞窟が崩れるかもしれない。早く出ようぜ!」
ウイルが逃げ出した。その後に4人が続く。彼らの通った後から天井が崩れていった。
やがてソウたちは洞窟の外に出た。その後すぐに洞窟の入口が崩れた。
「危ないところだった。ちょっとでも遅れたら生き埋めだった・・・」
ソウが額の汗を拭いてつぶやいた。
「まったくだ。はあはあ・・・」
5人は疲れ果ててその場に座り込んだ。するとジョンが急に立ち上がった。その目は閉じられている。また神が言葉を伝えようとしているのだ。
「よくやった! よくぞ極星十字剣を手に入れた! この剣は恐るべき黒魔術師を斬る運命にある。これを聖騎士団に! 聖騎士団に届けるのだ!」
また天啓が下った。ジョンはそれだけ言って地面に倒れた。
「また天啓よ!」
「聖騎士団に届けろってさ」
「どうする?」
「ここから王都はかなり遠いし、向かう先とは逆だし・・・」
リンダとシェル、そしてウイルはソウを見る。一人で王都まで行ってくれと・・・。目を覚ましたジョンもリンダたちの会話を聞いて、やはりソウを見る。
「俺か?」
「そうだ。君だ。君が大岩から聖剣、いや、この極星十字剣を取り出した。君が適任だ!」
ジョンがそうはっきり言った。
「そうか。そうなら仕方ない」
「我々は先に行く。追いかけてくるがいい。しかし・・・」
「しかし?」
「自分のやるべきことが見つかったなら、その通りにしたらいい。我々と別の道を・・・」
ジョンはそう言った。ソウの未来を暗示するかのように・・・。
ソウは仲間と別れて王都のロンチェスター寺院を訪ねた。そこで極星十字剣を届けるだけのはずが・・・。ひょんなことで剣の腕を示すことになり、聖騎士団に入ることになった。
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あれから10年以上が経つ・・・。ここでいつかは黒魔術師のミハイルと対峙することになるかもしれない。それを斬ることが自分に課せられた運命だ・・・キタ隊長はそう思っていた。
やがて魔獣が見えてきた。報告通りの大軍団だ。だが一番隊なら必ず撃退できると信じていた。
「行くぞ!」
「おう!」
キタ隊長とともに団員たちは魔獣の群れに斬り込んでいった。
◇
アリはずっと屋敷に閉じ込められていた。だがずっとこんな所に籠っていたら体がなまりそうだ・・・アリは少しだけ抜け出すことにした。
ドレスから男物のシャツとズボンに着替え、2階の窓から雨どいを伝って下りて行く。これは昔のままだ。幸いなことに誰にも見つかっていない。
「少し散歩でもしようか。この辺りは久しぶりだし・・・」
アリは道を歩き出した。空は晴れて快い風が吹いている。田舎の風景はアリの心を和ませるのに十分だった。するといろんな思いが湧きあがってくる。まずはアリに迫ってきたスレッド王子のことだ。
「私はこのまま王子様の妃になるのか・・・しかし・・・」
剣や聖騎士団のことが頭に浮かんでくる。そしてマリウスのことも・・・
(もう一度、剣を合わしたい。いや、そばにいるだけでも・・・)
ずっと離れてみて、マリウスはライバル以上の存在であることをアリは思い知った。
(それにフィンリー。はっきりとは言わなかったが、反王家運動にどっぷりはまっている。何とかしなければ・・・)
父に相談しても解決しないように思えた。フィンリーは家を飛び出してでもその運動を続ける・・・アリはそう思った。
(反王家運動はますます盛んだと聞く。ミハイルの狙い通りだ。このままでは王家は危うい)
そう思うと王妃様、そしてスレッド王子の顔が頭に浮かぶ。するとまた最初の思いに戻る。その堂々巡りだ。アリの頭の中では何も整理がつかないまま、屋敷に戻ってきた。
玄関先で王都からの届け物があるようだった。郵便馬車が停まっている。アリは郵便員に尋ねた。
「誰宛てですか?」
「アリ・ローザン様宛でございます」
「それなら私だ」
アリは小さな箱を受け取った。差出人は・・・なんとミハイルだった。アリは慎重にその箱を開けた。すると魔法が発動され、箱から煙が噴き出した。アリはその箱を放り出してそこから離れた。煙は黙々と立ち上り、中に何かが姿を現してくる。それは・・・
「お、おまえは!」
煙の中からミハイルが現れたのだ。




