第44話 選手
いよいよ剣技会の季節になった。本部や各隊から選ばれた団員が出場して剣の腕を競うのである。正団員、従団員、見習いからそれぞれ選手を出すことになる。
サイト隊長が三番隊の全員を広間に集めた。
「皆も分かっていると思うが近々、剣技会が行われる。正団員はオットー。おまえが出ろ。三番隊の看板を背負うのだからしっかりやれ」
「はっ! しっかり戦ってまいります」
オットー正団員は敬礼して答えた。
「従団員は・・・アリに出てもらおうと思う。異存はないな?」
団員たちは皆うなずいた。全員がアリの実力を認めていた。
「ではアリ。頼むぞ。君には優勝してもらわねばな」
「はい! がんばります!」
アリも敬礼して答えた。
あとは見習いの部だ。三番隊には見習いは6名いる。最有力はルーカスだ。過去に剣術大会優勝3回の実績に加え、任務もそつなくこなしている。ルーカス自身も自分が選ばれると思っていた。
「見習いの部は・・・リー、お前は誰がいいと思う?」
サイト隊長が従団員筆頭のリーに尋ねた。
「私はルーカスを推薦します」
リーは答えた。すると今度はアリに問うた。
「アリはどう思う?」
「僕は試合で決めるべきと思います。見習いの誰もが素晴らしい剣の腕をもっています」
アリはそう答えた。ルーカス以外の者でも十分その資格があると思ったからだ。
「そうか。それもそうだ。わかった。見習いに試合をさせて決めよう。リーとアリに任せる」
サイト隊長はそう決めた。この決定にルーカスは不満げだった。だが勝ち抜く自信はあるようだった。
◇
見習い6人が武道場に集められた。リーとアリが審判を行う。
「剣技会に出場する者をきめる。総当たりだ。まずはルーカスとジェイコブ」
リーに言われて2人が訓練用の剣をもって前に出た。お互いに見合って剣を構える。
「はじめ!」
その合図でまずルーカスが前に出た。剣を激しく打ち下ろす。ジェイコブは剣で受けたが、続いて鋭い突きに見舞われた。それにはもうどうすることができない。
「それまで! 勝者リー!」
あっけなく勝負がついた。やはりルーカスは強い。
「次! ガイガとピエール」
ガイガは見習いで一番の古株だ。剣の鋭さはないがテクニックを持っている。ピエールは相変わらず緊張している。
「はじめ!」
まずは慎重に両者が向かあった。ガイガはフェイントでピエールが仕掛けてくるのを待つ。一方、ピエールは気おくれしてなかなか手が出せないでいた。
「両者! 積極的に攻撃しろ!」
リーが注意を与えた。それでガイガが仕掛けていった。上下左右、剣で揺さぶりをかける。それをピエールが何とか防いでいた。それが繰り返される。そうしているうちにピエールは落ち着いてきた。
(これならやれる!)
ピエールはガイガのトリッキーな剣の動きが見えてきた。それで初めて前に出て剣を振った。
「それまで! 勝者ピエール!」
ピエールの剣がガイガの体に当たっていた。
「やった! この僕が勝てた!」
ピエールは左手を握りしめた。剣では劣ると思っていたのに勝てたことがうれしかった。
「ピエール! 最後までちゃんとするんだ!」
アリが声をかけると、はっとして試合後の礼をかわした。その試合をルーカスはつまらなそうに見ていた。
ルーカスは強かった。その後も立て続けに3人に瞬殺で勝った。一方、ピエールも一つ勝ったことで自信がつき、粘り強い試合でなんとか3人に勝つことができた。あとはルーカスとピエールが戦うだけである。
ルーカスは相変わらず、自信満々だった。見習いで自分に敵う者などない・・・そう思っているようだった。ピエールの方はただその試合に全力を尽くすだけ。結果は考えない・・・そんな風だった。
「では決勝になる。ルーカス。ピエール、前に」
2人が礼をかわして剣を構えた。
「はじめ!」
ルーカスが早速、前に出て打ちかかってきた。今回も瞬殺で決めようと・・・。だがピエールは何とか防いだ。ルーカスはさらに打ち込むが、それもピエールが剣で受け止めた。
(そんなはずは・・・)
ルーカスは目論見が狂った。相手をすべて瞬殺しようとしていたが、このピエール相手ではうまくいかなかった。だが・・・
(いつも稽古している相手だ。実力はわかっている。こいつなんかに負けるわけがない!)
ルーカスはピエールをなめていた。それですぐにでも勝負を決めようと焦っていた。ピエールはそんなルーカスの攻撃をしっかり受け止めていた。
(ねばりやがる! うっとうしい!)
ルーカスは決めにかかろうとした。強引でも接近して剣を強く何度も叩きつけようと・・・。だがそこに振りが大きくなった。ピエールはそこを見逃さなかった。彼の右腕がさっと動いた。
「そこまで! 勝者ピエール!」
リーがそう宣告した。ピエールの剣が確実にルーカスの体をとらえていた。
「そんな馬鹿な・・・」
ルーカスは信じられなかった。まさか自分が負けるとは・・・。
「剣技会にはピエールに出てもらう。いいな」
「待ってください! もう一度やらせてください。今度は負けない」
リーの裁定にルーカスは異を唱えた。そこにアリが口を出した。
「あきらめるんだ。結果は出た。君は負けたんだ」
「そんなことはありません! 本当なら私の方が強いはずです。それはアリさんだってわかっているはず」
するとアリは首を横に振った。
「いや、君はピエールに勝つことができない。その慢心した心では・・・」
アリが言いかけたが、ルーカスは聞く耳を持たなかった。
「アリさんは僕が気に食わないのでしょう。こんなところでやっておれません!」
ルーカスはそのまま出て行った。




