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前世の執着を背負った剣の達人の武士が、異世界に生まれ変わって聖騎士団で活躍します。女ですけれど・・・  作者: 広之新


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第22話 試す

 アリは悪魔熊デビルベアとの戦いで負傷していた。それで医務室でモウ先生の治療を受けていた。その傷も順調に回復してきている。

 今日もシャツをはだけて腹の傷を見せた。そこにモウ先生がヒーリング魔法をかけていく。


「アリ。無茶してはだめよ。魔獣から受けた傷は普通の傷と違うのだから」

「だから治療に日数がかかるのですね」

「そうよ。どうも呪術がかかっているようなの。黒魔術のね。だからヒーリング魔法でもすぐによくならない」

「気をつけます」


 そう話しているとドンとドアが開いて、いきなりエレーヌが部屋に入ってきた。あわててアリはシャツの前を閉じた。女であることがばれないように・・・。


「エレーヌ。ノックぐらいしなさい」


 モウ先生が注意した。だがエレーヌはそれに答えず、アリに向かって慌てふためいて話しかけた。


「アリはここだったのね。大変よ!」

「どうしたんだい?」

「話を聞いてきたのよ。あなたが三番隊のサイト隊長と試合をするって!」

「えっ!」


 アリは驚いた。どうしてそんなことになったのか・・・。


「エレーヌ。落ち着いて話しなさい。どんなふうに聞いたの?」


 モウ先生がエレーヌに尋ねた。


「ええと・・・。幹部の会議でアリを三番隊の従団員にしようとしたの。副団長の推薦で。でもサイト隊長が難色を示したの。それでサイト隊長と試合をして、実力を認められたらという条件になったの」

「そうなのか。でもサイト隊長の剣の腕を見てみたいな」


 それがアリの気持ちだった。この世界で剣術の優れた者がどんな技を使うのか・・・それに興味があった。


「何をのんきなことを言っているの! サイト隊長のことを知らないの?」

「えっ? なんのこと?」

「陰で死神と言われているのよ。冷酷で容赦しない。試合なんかしたらボロボロにされるわ!」

「まさか! そんなことはないだろう。ははは」


 エレーヌが大げさに言ったと思ってアリは笑ったが、横にいるモウ先生は笑っていない。心配そうな顔でアリを見ている。


(やはりそうなのか・・・)


 アリはふうっとため息をついた。



 部屋に帰るとレイクが声をかけてきた。


「サイト隊長と試合をするんだって?」


 この話は団全体に広まっているようだ。


「僕は聞いていないのです」

「もうみんな知っているぜ。明日の朝、武道場でするんだってな」


 もう決まっているようだ。アリ本人には試合前に知らせるのかもしれない。


「見に行きたいな。でも勤務があるから見に行けない。がんばれよ。いや、がんばるな」

「どういうことなんですか?」

「あのサイト隊長相手だ。早いとこ降参した方がいい。そうしないとケガするぜ」

「どんな技を使うのですか?」

「サイト隊長の得意技は突きだ。さっと突進して相手に迫り、突きを繰り出す。特に大技『雷撃突き』は誰も避けられないといううわさだ。訓練用の剣でもその大技を食らったら大けがするからな。あっさり負けを認めた方がいい」


 レイクはそう忠告してくれた。もしサイト隊長が本気を出して来たら・・・ただでは済むまい。だが手を抜くことはできない。オーガ副団長が推薦してくれたのだからその顔を立てるためにもむざむざ負けられない・・・アリはそう思っていた。


 ◇


 次の日、アリが本部に出勤すると、オーガ副団長が待ち構えていた。


「アリ。今日は俺と来い」

「わかりました」


 アリはオーガ副団長とともに武道場まで歩いた。その道すがら彼が話しかけた。


「多分、うわさで知っているだろう」

「はい。サイト隊長と試合をするのですね」

「ああ、そうだ。サイトはおまえを認めていない。だから認めさせてやるんだ」

「はい」

「いい試合をしろ・・・などと生ぬるいことは言わない。勝て! きっと勝つんだ!」


 オーガ副団長はそう言ってアリの背中を「バン」と叩いた。それで気合を入れようというのだ。


(副団長は私の腕を信用してくれたのだ。これには副団長のメンツもかかっている。裏切るわけにいかない・・・)


 アリはそう感じていた。



 武道場ではすでにサイト隊長が一人で待っていた。腕組みをして壁に身をもたれさせている。


「来たか!」


 サイト隊長の目が冷たく光った。オーガ副団長が言った。


「アリを連れてきた」

「早速、腕を見よう」


 サイト隊長は壁にかかっている訓練用の剣を手に取った。


「アリ。剣を取れ。相手が隊長だからと言って遠慮するな! 行け!」


 オーガ副団長はそう言ってアリを送り出してくれた。アリも訓練用の剣をもってサイト隊長の前に立った。


「よろしくお願いします」

「さあ、かかってこい!」


 サイト隊長はかまえた。剣士には珍しく左利きである。いつもと勝手が違うとアリは少しやりにくさを覚えた。それに打ち込もうにも相手には一分の隙もない。その鋭い眼光がアリをとらえている。


(サイト隊長の技は突きだ。それを食らわぬようにしなければならない)


 アリはサイト隊長が間合いを詰めてくるのを警戒した。だが向こうからくる様子はない。


(直線的な動きで攻めてくるに違いない。それなら・・・)


 アリは相手の死角となるように右に回りながら剣を打ち込むタイミングを計った。サイト隊長も右回転をしてアリと動きを合わせる。


「どうした? 打ちかかってこないのか?」


 サイト隊長が挑発する。


(何とかサイト隊長の突きを食らわないように・・・)


 アリは間合いを詰めて斬りかかった。だがそれをサイト隊長はかわしていく。アリは反撃が来る前に下がって構え直した。サイト隊長の突きを防ぐために・・・。だが反撃はない。アリはまた斬りかかっては下がり、斬りかかっては下がりを繰り返した。


「どうした? 腰が引けているぞ!」


 確かにそうだった。サイト隊長の突きを警戒するあまり、自分の攻撃は中途半端になっていた・・・アリはそれに気づいた。


「俺の突きを警戒しているようだな。だがおまえではいくら備えたところで受け止めることはできん! 見せてやろう!」


 サイト隊長は少し腰を落として左手に持った剣をぐっと引いた。


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