表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世の執着を背負った剣の達人の武士が、異世界に生まれ変わって聖騎士団で活躍します。女ですけれど・・・  作者: 広之新


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/35

第21話 頼み

 戦い終わったアリは剣を振って血を落とし、剣を回して鞘に納めた。それは前世での丈一郎と同じやり方だった。


「よくやった!」


 オーガ副団長は何とか身を起こして、アリに言葉をかけた。ひどいダメージを受けたが、何とか立ち上がれるようだ。そしてランガ従団員もようやく目を覚まして体を起こした。だがクロスだけはうつぶせに倒れたままだ。


「クロスさん!」


 アリはそばに寄って抱き起した。頭は割られて血まみれだが、かすがだが息がある。


「しっかりしてください! クロスさん!」

「アリ・・・か・・・」


 クロスは目を開けた。


悪魔熊デビルベア・・は?」

「何とか追い払いました」

「そうか・・・それはよかった・・・」


 クロスはまだ話そうとしていた。


「俺は悪魔熊デビルベアを倒したかった。兄の仇の・・・」

「もうしゃべらないほうがいい。傷がいえればまた機会はあります」

「いや、俺はもうだめだ。頼む! アリ! おまえが悪魔熊デビルベアを倒してくれ!」


それがクロスの最期の頼みだった。それを聞かないわけにはいかない・・・。


「わかりました。必ず倒します! 安心してください」

「た、頼んだぞ・・・約束だぞ・・・」


 そこでクロスはこと切れた。彼の閉じた目から一筋の涙が流れた。


「クロスさん! クロスさん!」


 アリは何度も呼び掛けたが、クロスの目が再び開くことはなかった。


 ようやくオーガ副団長が足を引きずるようにしてそばに来た。アリは彼に顔を向けて首を横に振った。それを見て彼はすべてを悟り、沈痛な面持ちで話し出した。


「クロスの兄は俺の親友だった。彼は人々を守るため、その身を犠牲にした。立派な騎士団員だった。クロスはその兄を尊敬していたし、目標としていた。これからというときに・・・俺がふがいないばかりに・・・」


 オーガ副団長の目には涙が光っていた。アリはクロスの両手を胸の上で組ませた。


「クロスさん。よく戦いました。安らかに眠ってください・・・」


 アリは両手を合わせた。多分、後のことを自分に託したクロスは「あの世」に行って安らかに過ごせるだろう・・・と。


 ◇


 この事件の後、幹部による会議が本部で行われた。そこで今回のことが詳しく報告された。

 二番隊はかなりの死傷者を出した。悪魔熊デビルベアが出現したこともあるが、今までとは違って魔獣が集団で襲ってきたからだ。明らかに敵は戦法を変えている。


「単なる王都のかく乱ではない。この聖騎士団を狙っているのかもしれない・・・」


 カルヴァン団長はそう思っていた。それはオーガ副団長も感じていた。


「それに対してわが方も強化しなければならない」

「それはどのように?」

「まずは人員の補充。そして訓練の見直し・・・」


 さまざまな課題がある。そして最後に議題が上ったのは・・・。


「クロス従団員を失い、他の従団員もけがをしているものが多い。二番隊に人員を各隊から補充する・・・」


 正団員は隊を代わることは少ないが、従団員以下は隊を異動することは多い。それで各隊から従団員は二番隊に送ることにした。そうなると・・・


「三番隊の従団員がやや手薄となる。見習いを昇格させる。誰がいいか?」


 カルヴァン団長の問いかけにオーガ副団長が手を上げた。


「本部付きのアリ・ローザンを推薦する。本部の見習いの中で剣の腕が優れている」


 だがそれに対して三番隊のサイト隊長が難色を示した。


「アリ? 入団したばかりだろう。それに剣技会にも出て来なかった。そんな者を我が隊の従団員にするのか?」

悪魔熊デビルベアを追い払ったのはアリだ。腕は保証できる」

「本当か?」


 サイト隊長はそれに疑いを投げかけた。


「本当だ。俺が現場にいた」

「どうせ副団長が手を貸したのだろう。そうでもなければ、悪魔熊デビルベアと戦って無事でいられるわけがない。前の隊長でもやられた魔獣だぞ」


 サイト隊長は信じようとしない。さらに、


「本部の部下かわいさに押し付けようというのだろう。マリウスの時と同じで・・・。そんなことでは困る」


 さすがにそれにはオーガ副団長はムカッとした。


「マリウスは剣技会で優勝した。実力は問題ないはずだ。アリだって大丈夫だ!」

「本当にそうかな? 身びいきじゃないのか?」


 険悪な雰囲気だった。そこでカルヴァン団長が口をはさんだ。


「サイト隊長。君はどうしたいんだ?」

「それほど副団長が推すなら、アリの腕を確かめさせてほしい。俺自身で」

「君が相手をするのか?」

「もちろんです。もし未熟だったら俺の隊の見習いを従団員に昇格させます」


 サイト隊長はそう言った。それしか彼を納得させられない・・・そう思ったカルヴァン団長はオーガ副団長に聞いた。


「いいか? ジーク」

「ああ、いいとも。アリならサイト隊長も認めるだろう」


 オーガ副団長は承諾した。だが彼はサイト隊長の腹の内が見抜けなかった。本部の見習いなど従団員として受け入れる気などないことを・・・。


(アリとか言ったな。かつてマリウスに勝ったことがあるといううわさだが、本当にそんな腕があるのか? まあ、どちらにしても俺が剣で徹底的に叩きのめしてやる。そうなったらオーガもあきらめるだろう。本部の干渉など三番隊は受けん! 俺の目の黒いうちは)


 サイト隊長は心の中でそう思っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ