表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
経営難な料亭を立て直すため、料亭で修行することに。だがなぜかラブコメ展開に!?  作者: 彼方夢
挫折

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/14

久しぶりのカップラーメン

 帰省できればどれほど楽だろう。逃げ出せればすべてが解決するような、そんな気がする。

 社会と戦う気力など、晶には残されていなかった。

 惰性で生きる――これが、大人になるということなのか。

 失敗すればするたびに料理長から激昂され、意気消沈していると暴力を振るわれる。その繰り返し。精神が摩耗していっている感覚を覚える。これをあと、どれほど繰り返せばいいのだろうか。


 歯がゆさから奥歯を嚙み続けて、奥歯が欠けた。

 表情が険しくなっているだろうな、と晶は思う。

 イベリコ豚のとんかつ調理、延べ十回。この神経質な作業もそろそろ佳境であってほしいものだ。

 皿に盛りつけたものを料理長に確認してもらうと、


「……まぁ、わりと良いんじゃないか?」

「あの……」

「なんだ?」

「今までの失敗の原因って、何だったんですか?」

料理長の三白眼がこちらに向けられる。

「そんなことも分からねぇのか?」

「すみません。勉強不足で」

 そいつは鼻を鳴らし、先ほどまで持っていたとんかつが乗った皿をキッチンに置いた。しばらく考える。

「油の余熱管理だ。お前、いままで挙げ終わったらすぐに取り出していただろう」

「はい」

「それが駄目なんだ。最低でも百八十度の油に五分はくぐらせていないといけない。でもまぁ、その塩梅が難しいんだけどな」


「…………」


「じゃあまぁ、今後も頑張れや」

 料理長はこの場を後にした。

「何なんだれ?」

「気いたことないか?」


 晶は振り返ると、そこには先輩が立っていた。


左官又さかんまたという料理店であの人、修行していたんだが、そこでかなりのしごきを受けて、そこで思い込むようになったんだよ。才能があるやつは先輩からしごかれるんだ、ってな」

「それで……俺に?」

 その先輩はため息を吐く。

「あの人なりの愛情表現だよ。ねじ曲がっているかもしれねぇが。我慢してやってくれ」

「……わかりました」

「とりあえず休憩してこい。神経使っただろ」

 そう言ってくれたので、晶は厨房を後にする。

「気に入っている奴にはあえて厳しく、か」

 毒づいてしまいたい気持ちに襲われるも、かぶりを振る。


 休憩所では、恰幅のいい料理人がカップヌードルを啜っていた。晶はその後ろを通ってコップに水を入れる。


「カップヌードル、食べる?」

「いいんですか?」

「いいよ」

 晶は料理人の前に座る。彼は袋の中からチリトマト、カレーヌードル、醤油を取り出した。


「これ三つあげる」

「ありがとうございます」

 ――残りふたつは姉妹のために持って帰ってやるか。

 沸いた薬缶からヌードルにお湯を注ぎ、五分待つ。

 料亭でも屋敷でも、仰々しい食事しかしてこなかったから、ジャンキーなものは久しぶりだ。

 五分たったので、啜り始める。

 美味い。頬が落ちそうだ。


「片意地張らずに頑張れよ」



 そう先輩から言われ、励まされた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ