小学校編 77時間目 ―大将騎に主導権!?吉沢派、まさかの大誤算―
〈太志視点〉
……やらかした。
完全に、やらかした。
騎馬戦の大将を決めたとき、俺たちは確かに納得した。
帝耀でも、莉玖翔でもなく、燈李を大将にする。
あいつなら学級委員長だし、どちらのグループにも公平に接してくれる。
だから、まあ、悪くない選択だと思ったんだ。
……だが。
俺たちは、とんでもなく大事なことを見落としていた。
「はぁ。俺らとしたことが、燈李を大将にしたら、自動的に大将騎のメンツがあいつらになるってことぐらい!! 分かったでしょ!!」
思わず声を張り上げる。
そう。
大将を燈李にしたということは、当然、燈李が騎手になる大将騎が必要になる。
そして、騎馬を組むメンバーは、それぞれのグループで考えることになっている。
つまり……。
燈李の大将騎を支えるのは、莉玖翔たちの側の連中になる可能性が高い。
いや、待て。
何で誰も気づかなかったんだ!?
大将を決めた時点で、もっと考えておくべきだっただろ!!
「いや〜、これはやっちゃったね〜」
蓮が、いつもの調子でのんびりと言った。
……いやいや。
何でそんなに余裕なんだよ!?
お前も俺たちと一緒に賛成してただろ!
「……だな……」
皇輝が、ぼそりと呟く。
……お前もか!
いや、今回は俺も人のこと言えねえけど!!
「あいつらに主導権握られるのは、ちょっと無理」
圭が、露骨に嫌そうな顔をした。
……分かる。
めちゃくちゃ分かるぞ。
「ちょっとというか、かなり困るな」
華人も、珍しく深刻そうな表情を浮かべている。
そうなんだよな。
騎馬戦って、ただ力が強ければいいってもんじゃない。
大将をどう守るか。
どの騎馬が攻めに行くか。
誰がどこに動くか。
そういう作戦を考える必要がある。
なのに、大将騎があっちのグループになったら……。
作戦まで、あいつら中心に決められるんじゃないか?
そんなの、冗談じゃねえ!!
「まさか誰も気づかないなんてね」
るるが、困ったように言った。
……本当にな。
俺たち、八人もいたんだぞ!?
八人いて、誰一人として気づかなかったって……。
どういうことだよ!!
「まあまあ、みんな落ち着いて」
海斗が、俺たちをなだめるように声をかけた。
……落ち着けるか!
いや、海斗が悪いわけじゃないけどさ!!
すると、帝耀が口を開いた。
「でもさ、あいつらのこと守ってあげるのは俺らなんだからさ。堂々と行こうよ」
…………。
…………は?
俺は、思わず帝耀の顔を見た。
こいつ……。
今、何て言った?
「帝耀!! そういう問題じゃないの!」
俺が叫ぶと、帝耀は少し困ったように笑った。
いや、笑ってる場合じゃねえって!!
俺たちが大将騎を守る。
それ自体は、別にいい。
騎馬戦なんだから、同じクラスの仲間として協力するのは当然だ。
だけど!!
だからって、あいつらに全部仕切られるのは違うだろ!?
俺たちだって、ちゃんと考えて動きたいんだよ!
……というか。
帝耀は、本当にそういうところがある。
相手が誰だろうと、あんまり気にしない。
だからこそ、俺たちが焦っていても、平然とそんなことを言えるんだろうけど……。
少しは俺たちの気持ちも考えてくれよ!!
「まあ確かに俺も、主導権握られるのは困るけど」
帝耀が、続けて言った。
……おっ。
何だ。
ちゃんと困るとは思ってたのか。
「それはさ、握らせなければいいんじゃないの?」
…………。
…………。
えっ。
「ううっ……」
俺は、思わず言葉に詰まった。
……いや。
確かに、そうなんだけど。
それが簡単にできれば苦労しねえだろ!!
俺たちが主導権を渡したくないのと同じように、あいつらだって自分たちで決めたいと思うはずだ。
何より、燈李が大将なんだから。
俺たちが勝手に仕切ろうとしたら、また揉めるんじゃないか?
「でもそれ、どうすんだ?」
華人が、首を傾げた。
「あいつらが一応大将騎なわけだから、自動的にそうなっちゃう気がするけど」
……そう!!
それなんだよ!!
俺は、大きく頷いた。
大将騎が中心になるのは、別に不自然じゃない。
だからこそ困ってるんだ。
……ああ、もう!!
どうしたもんか……。
そんなことを考えていると。
「あ、はいはい!」
蓮が、楽しそうに手を上げた。
……ん?
何だ?
何か思いついたのか?
「そんなの関係ありませ〜んって顔して、さも当たり前かのように俺らがすればいいんじゃない〜?」
…………。
…………。
……は?
いや。
待て。
つまり……。
大将騎がどっちのグループだとか、そんなことは最初から気にせず。
俺たちが、当たり前のように作戦を考えて。
当たり前のように指示を出して。
当たり前のように進めてしまえばいい……ってことか?
…………。
…………なるほど。
それ、いいじゃねえか!!
「いいね、それ!」
るるが、ぱっと顔を明るくした。
「でしょ〜!」
蓮は、得意そうに笑った。
……こいつ。
普段はふざけてるくせに、こういうときだけ妙なこと思いつくよな。
まあ、今回は助かったけど!!
「……だな……」
皇輝も、静かに頷いた。
圭も、どこか納得したような顔をしている。
華人は少し考え込んでいたけど、反対するつもりはなさそうだ。
海斗も、小さく笑って頷いた。
そして帝耀は……。
……ああ。
何だか、楽しそうな顔してるな。
まったく。
こいつが最初から焦ってなかった理由、少し分かった気がする。
大将騎が誰だろうと、俺たちがやるべきことは変わらない。
要するに、あいつらに任せきりにしなければいいんだ。
……よし!
「よし、それでいくか!」
俺が声を上げると、みんなが一斉に頷いた。
『おう!』
八人の声が、重なる。
……ふっ。
これで決まりだな。
大将が燈李だからって、俺たちがおとなしくしてる必要はない。
こっちはこっちで、ちゃんと作戦を考えてやる。
吉沢派の意地ってもんを、見せてやろうじゃねえか!!
…………。
……まあ。
それでまた揉めたら、どうするかって?
…………。
……そのときは、そのときだ!!
〈77時間目・終〉
〈椿可恋〉
清楚でとっても可愛く、おしとやかな女の子。蘭とは正反対で、男の多い家庭で育ち、服もお下がりが多かったため、かわいい服をなかなか買ってもらえなかったが、別邸に来てからはかわいい服を着れるようになって喜んでいる。




