小学校編 58時間目 ―野球少年達の第一歩―
〈楪葉綺兎視点〉
今日は、待ちに待った日だ!
何の日かって?
それはもちろん……。
学校の少年野球チームの初練習の日!!
うちの学校では、小学校五年生から少年野球チームに入ることができる。
だから、俺たち五年生にとっては、今年が初めてのチャンスなんだ!
実は、俺と勇気は前から野球に興味があった。
野球って、見ているだけでも面白いし、実際にやってみたらもっと楽しそうだなって思ってたんだよね。
でも、まさか自分たちが学校のチームに入れるとは思ってなかった。
だから、最初から入部するつもりだったわけじゃないんだ。
そんなある日。
俺と勇気が野球の話をしていたら、偶然、帝耀のお父さんが通りかかった。
そして、俺たちの話を聞いて、
『そんなに興味があるなら、入ってみる?』
って勧めてくれたんだ!
…………。
ええっ!?
入っていいの!?
俺たちが!?
最初はびっくりしたけど、すっごく嬉しかった!
だって、興味があった野球を、本当に始められるんだから!
もちろん、勇気も大喜びだった。
こうして、俺たちは少年野球チームに入ることになった。
そして、もう一人。
燈李も野球チームに入ったんだ!
燈李が野球に興味を持っていたなんて、今まで知らなかったけど……。
でも、知ってる友達が一緒に入ってくれるのは嬉しい!
せっかくなら、みんなで楽しく頑張りたいもんね!
よーし!
今日から野球、頑張るぞ!!
*
練習が始まる前。
俺たちが集まっていると、燈李が嬉しそうに声をかけてきた。
「綺、勇! 今日から頑張ろうね!」
おっ!
燈李、やる気満々だな!
「うん! 頑張ろう!」
俺が答えると、勇気も笑顔で頷いた。
「頑張ろうね!」
うんうん!
やっぱり、友達と一緒に始められるっていいな!
これから練習が大変な日もあるだろうけど、三人で頑張ればきっと楽しいはずだ。
…………。
あれ?
そういえば……。
俺、燈李が野球好きだなんて聞いたことなかったな。
勇気とは前から野球の話をしてたけど、燈李とはそんな話、したことあったっけ?
…………。
うーん。
ない気がする。
じゃあ、どうして急に始めようと思ったんだろう?
……ちょっと聞いてみるか。
「ねえ、燈李」
「ん?」
「燈李って野球好きだっけ? なんで始めたの?」
俺がそう尋ねると……。
「ええっ!?」
燈李が、びくっと肩を揺らした。
…………。
え?
「ええっと……な、なんとなく!」
…………。
なんとなく?
……あれ?
なんか、すっごく慌ててない?
…………。
あっ。
もしかして……。
俺、聞き方ちょっときつかったかな!?
うわっ。
そうだったら申し訳ない!
別に、野球が好きじゃなきゃ入っちゃ駄目って言いたかったわけじゃないんだけど……。
ただ、ちょっと気になっただけで。
でも、燈李には責められてるように聞こえちゃったのかもしれない。
……反省。
「燈李、ごめん」
「え?」
「なんか、怒ってるみたいだったかも」
俺が謝ると、燈李は目を丸くした。
「ええっ!? なんで!? 全然気づかなかった」
…………。
えええっ!?
そうなの!?
じゃあ、別に怒られたと思ったわけじゃないんだ?
…………。
あれ?
だったら、なんであんなしどろもどろだったんだろう?
…………。
うーん。
分かんない。
でも、本人が気にしてないなら、まあいっか!
何か理由があるのかもしれないし。
無理に聞くことでもないよな。
それに、今は……。
野球の練習の方が大事だ!!
「おい、お前ら! 集まれ!」
そのとき、グラウンドに大きな声が響いた。
あっ!
いよいよ練習が始まるんだ!
俺たちは慌てて声のした方を向いた。
『はい!』
みんなの返事が重なる。
…………。
よし!!
ついに始まるんだな!
俺たちの野球生活!!
まだ、どんな練習をするのかも分からない。
上手くできるかどうかだって分からない。
でも……。
勇気も、燈李もいる。
だから、きっと大丈夫!
これから三人で、いろんなことを覚えて。
たくさん練習して。
少しずつ上手くなっていけたらいいな!
俺は期待に胸を膨らませながら、グラウンドへと駆け出した。
よし! 頑張るぞ!!
〈58時間目・終〉
〈矢野晴彦〉
燈李のお父さん。心優しいいい人。
夫婦でレストランアローを切り盛りしている。




