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青春学校  作者: むにょこ
小学校編

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小学校編 13.5時間目 ―呼び捨てでいいよ!―

〈美香視点〉

「それでは、こちらへどうぞ」

斎森さんに案内されて、私と愛理ちゃんは部屋の中へと足を踏み入れた。

(うわぁ……!)

思わず辺りを見回してしまう。

さっきから驚いてばかりだけど、やっぱり吉沢家ってすごい。

でも、それよりも気になるのは――。

(みんな、もう来てるかな?)

待ち合わせの時間には遅れちゃったし、きっと全員揃っているはず。

怒ってなきゃいいけど……。

そんなことを考えていると、聞き慣れた声が飛んできた。

「あ! 美香! 愛理!」

(……あっ!)

桃だ!

私は声のした方へ振り返った。

「おほひよー!」

「…………」

(……ん?)

おほひよー?

私は思わず首をかしげた。

よく見ると、桃は何かを口いっぱいに頬張っている。

(……あははっ!)

なるほど。

「おはよう」って言いたかったんだ!

「ちょっと、桃!」

すかさず紗奈ちゃんが注意する。

「食べたまま喋らないの!」

「んむっ……!」

桃ちゃんは慌てて口元を押さえた。

その様子を見て、愛理ちゃんが呆れたようにため息をつく。

「桃ってば、相変わらず大食いなんだから……」

(……ふふっ)

桃ちゃんって、本当に食べるのが好きだよね。

普段はおっとりしていて、ちょっと恥ずかしがり屋なのに、食べ物のことになると夢中になっちゃう。

そんなところも桃らしい。

……って、そうじゃなかった!

(まずは謝らなきゃ!)

私は慌ててみんなに向き直った。

「みんな、遅れてごめん!」

頭を下げる。

「私、寝坊しちゃって……」

うう……。

改めて口にすると、恥ずかしい。

楽しみすぎて夜更かししたせいで寝坊しました、なんて。

我ながら情けないよぉ……。

すると、桃ちゃんがこちらを見て、にこっと笑った。

「わたひたひは大丈夫!」

「……!」

まだ口の中に食べ物が残っているらしい。

(桃ちゃん……!)

思わず笑いそうになってしまう。

「俺たちも大丈夫だよ!」

続いて、燈李くんが明るく答えてくれた。

(……よかったぁ)

二人とも、全然気にしていないみたい。

私はほっと胸をなで下ろした。

すると、帝耀くんも口を開いた。

「待ち合わせの時間、少し早かったかな?」

「え?」

「ごめんね?」

(……ええっ!?)

私は慌てて首を横に振った。

「そ、そんなことないよ!」

悪いのは完全に私だ。

帝耀くんが謝ることなんて、何もない。

「私が寝坊しちゃっただけだから!」

「そっかそっか!」

帝耀くんは気にした様子もなく笑った。

そして、近くに用意されていた食べ物を示す。

「じゃあさ、これ食べていいから!」

「……えっ!?」

私は思わず目を輝かせた。

「いいのー!?」

「もちろん! どうぞ!」

(やったぁ!)

さっきまで遅刻のことで落ち込んでいたのに、急に元気が出てきた。

……いや、私って単純すぎるかな?

帝耀くんは愛理ちゃんの方にも顔を向けた。

「ほら、愛理ちゃんも!」

「……あ、ありがとう」

愛理ちゃんはそう答えてから、ふと何かを思い出したように帝耀くんを見た。

「……ねえ、帝耀」

「ん?」

「ずっと思ってたんだけど……」

愛理ちゃんは少し言いにくそうに続ける。

「私たちのこと、呼び捨てで大丈夫だよ」

「……えっ?」

帝耀くんが目を丸くした。

(……あ!)

そういえば!

帝耀くんって、私たちのことをずっと「ちゃん」付けで呼んでくれてるんだよね。

でも、もう同じクラスの友達なんだし!

「そうそう!」

私は勢いよく会話に加わった。

「私は『帝耀くん』とか、つい癖で言っちゃってるけどさ!」

「うんうん?」

「帝耀くんは違うでしょー?」

私はにっと笑った。

「美香って呼んじゃって!」

「……ほんと!?」

帝耀くんの顔がぱっと明るくなった。

「うん!」

愛理ちゃんも隣で頷く。

「私も愛理でいいよ」

「そっか!」

帝耀くんは嬉しそうに笑った。

「じゃあ、遠慮なく!」

(……ふふっ!)

なんだか、ちょっと嬉しい。

名前の呼び方が変わるだけなのに、不思議だよね。

今までは、同じクラスになったばかりの男の子。

でも、こうして話していると、少しずつ本当の友達になっていく気がする。

(……お泊まり会、やっぱり来てよかった!)

私は心の中でそう思いながら、みんなの方へ歩み寄った。

〈13.5時間目・終〉

〈斎森右京〉

帝耀のお付の人。別邸では執事を務めている。

玲士がが子供の時からお世話をしており、玲士がが吉沢家に入る時に連れてきた。

2人からはじいやと呼ばれている。

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