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少し広く開かれた空き地が見えてきたところで四人は野営をすることにした。荷物を置くとエナは地面に座り込んだ。クレアとレイルは地図を見て立ったまま話し始め、ヴィロは片膝を立てて座るも神妙な顔つきをして気配を追っているようだった。話を終えたレイルがヴィロを見下ろすと、ヴィロは軽く頷いた。クレアはエナの隣に座りレイルはヴィロの隣に座ると、クレアは正面に座っているヴィロに視線を向けた。
「まだ大丈夫みたいね」
「今のところは様子見ってとこかな。気配はするけどね……」
「だからって一人でこの場を離れたりするなよ。いつ狙われるか分からないからな」
「わかってるよ。なるべく女性二人は俺かレイルと行動な」
「わかったわ」
「………………」
三人は沈黙しているエナを見た。そして顔を見合わせるとクレアが話しかけた。
「エナ」
「えっ?はいっ……何?」
エナが顔を上げて答えると三人がこちらを見ている。
「な、なんですか……みんなして」
「ボーっとしてるぞ、お前。」
「な、ボーっとなんてしてませんよ」
ヴィロの言葉にエナは少しむきになって答える。
「エナ、疲れているなら疲れたと言え」
「えっ?」
「そうそう。レイルの言う通り。お前は旅慣れしてないんだ。疲れて当たり前なんだよ。だから……」
「何言っているんですか、大丈夫ですって」
そう言ってエナは笑顔で答えた。
「作り笑いね」
「………………」
さすがにもうエナは笑顔になれなかった。
「無理はするなと言っているんだ」
「無理なんか……」
レイルの言葉にふいに声が小さくなる。
「しているだろ。レイルもクレアも気づいてる。そんなに俺達が信用できないか?」
「違います!!」
ヴィロがその声に少し驚いたように目を見開き、レイルとクレアもエナの方を見た。
「だって私は……」
そこで一端言葉を切り俯くと、エナはその膝の上にある手の平を握り締めた。
「……旅もろくに出来ないし、戦う能力も体力もない。だから……」
「やっと本音を言ったわね」
クレアはふうっとため息をついた。それは呆れて出たものなのか、本心を聞けてほっとしてなのか……エナには分からなかった。それどころか返って不安になったエナが顔を上げられないでいると、森の奥を見るように眺めたレイルが口を開いた。
「この森、エナがいなかったら危なくて入れなかったと俺は思うが?」
「そうそう。エナがいたからここまで進めたんだ。だからもっと自分に自信を持てよ。な?」
エナはまだ俯いたままだ。
「誰にでも得意不得意はあるわ。それを努力して変えようとするならかまわないけど、エナはそれを隠そうとしているだけ。そうやって隠して倒れられた方が迷惑だと思うけど?」
クレアがエナをズバッと一刀両断した。
「お、おいおい。クレア、それはきつ……」
「そうだな」
「おい、レイル……」
「お前は黙ってろ」
レイルにそう言われてヴィロは黙った。
「エナ、欠点は誰にでもあるわ。だから隠して無理なんてしないで。もっと頼っていいのよ」
エナは俯くと自分が情けなくて、その優しさが嬉しくていつの間にか瞳に溜まった涙が彼女の頬を伝った。
「……はい……」
エナは涙を拭って顔を上げるとレイルもヴィロもそしてクレアも穏やかに微笑んでいた。
「ごめんなさい。心配かけて……」
レイルは隣にいるヴィロをちらっと見た。
「こいつみたいに、言いたい事は言え。がんばり過ぎるのも場合によってはあまりいい事ではないからな。溜め込まれる方が、こちらとしては困る」
ヴィロは頷きかけたが、ふと何かに気づいてにやっと笑った。
「もしかして、俺の事褒めてんのか?」
「そんな話をしてるんじゃない。いちいち真に受けるな」
「照れるなって、副長様」
「……お前の場合、何でも正直に言い過ぎだ。もっと物事を考えて発言しろ。何のための頭か分からない、それともその頭は飾りか?」
「……っとに、嫌味な奴だよお前は」
「それは悪かったな」
「お前、絶対悪かったなんて思ってないだろ」
そうやって言い合いを始めた二人を見て、クレアは今度こそ呆れたようにため息をついた。
「ヴィロもすぐむきになるから……」
クレアが呟くとエナが隣でくすくすと笑った。その様子を見てクレアはホッと肩を落とした。
「エナ」
「ん?」
「あの言葉覚えてる?」
「?」
「“背伸びすることはありません。今あなたができることをして下さい”」
エナはハッとしてクレアを見た。
「それって……」
「そう、テムド中長の言葉。エナ、その言葉を忘れないで」
「うん」
エナが頷くのを見ると、クレアはヴィロとレイルを見た。
「今日は初日だし早めに休まない?少し急ぎ足で来たから疲れてる人も多いでしょ?」
「そうだな。夜番を立てるか……」
「そんじゃあ、レイル。先に休め。時間になったら起こすからよ」
「どういう風の吹き回しだ?」
レイルは疑いの目でヴィロを見る。
「お前、あんまり休んでないだろ?だから……」
「何だ、悪い物でも食ったか」
「何でそーなる」
「……何だか気味が悪いが、せっかくだから先に休ませてもらおう」
「ていうか、素直に分かったって言えねーのかよ、お前は!」
レイルとヴィロの話を聞いているクレアにエナが話しかける。
「クレア、先に休んで」
「え?でもエナ、疲れてるんでしょ?先に休んだらどう?」
エナは首を大きく横に振った。
「今はなんか起きていたい気分なの」
「え、でも……」
するとエナは立ち上がってクレアを見た。
「さ、そうと決まったらとっとと夕飯作って休みましょ!」
クレアはエナに観念したように立ち上がると夕飯の支度を始めた。




