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ハッピー・テロリスト  作者: ウィザード・T
ターゲット7 アナザー・ワールド

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スペシャルパワー・テンセカンド

「ガバッ!」

 聖剣使いの勇者であったはずのカマ・セイケンの顔面が歪む。

 既に盾は壊れ鎧も砕け、文字通りの満身創痍。


 そしてこの一撃により、多くの女性たちを引き付けて来た顔面も失われた。


「まさか…ダメ令息とダメ修道女が…」

「ああ、やっぱり本当だったんだぁ!ごめんなさい!ごめんなさい!」


 ダメ令息とダメ修道女と呼ばれた二人が、王城と民を犯す邪竜を討ち取ったと言う知らせに、かつてダメ修道女としてコンガネを追放したカマ・セイケンはどんなイカサマを用いたのだと怒りコンガネと、ダメ令息ことカイジローの二人に喧嘩を吹っ掛けた。

 曰く、10秒時間を長引かせる事しかできない侯爵令息(しかも三男坊)と、金属の塊を作れるけど時間がかかり過ぎて使いこなせない修道女もどきなぞがあの邪竜を倒す事など出来ないと。


 しかし、結果はご覧の通りだった。


「申し訳ありません…」

「お、お、覚えて…やが…」

「カマ・セイケン。これがカイジロー殿とコンガネ殿の実力だ」

「王…」

「それよりそなた。勇者の名を盾に相当好き放題やっていたようだな」

「それは…!」

「そなたから勇者の名を召し上げる。コンガネ殿に対する行いを真に反省するまでそなたは最低ランクの冒険者とし、そなたに付き従っていた者も同様に冒険者ランクを最低まで落とす。それが嫌なら両名に賠償金を払え」

 王自らから告げられたその賠償金の額は一流冒険者の年収の数倍のそれであり、とてもカマ・セイケンの金魚の糞として付いて来たような連中に払えるそれではない。


 結果的にカマ・セイケンは屈辱に耐えられず聖剣を返還する代わりに冒険者を廃業、残る者たちは最低ランクの任務に勤めカイジローとコンガネに細々と賠償金を払うだけの生活になった。







「カイジロー様のおかげです」

「俺は必死に考えただけだ」


 彼らからの大量の賠償金と王家からの報酬、さらに実家の侯爵家からの財産分与と言う名目での金銭付与をもって、カイジローとコンガネは小さな領国を得た。この際に子爵の位を与えられており、有用なスキルを持たない厄介者の三男坊が子爵様になったのである。


「しかしわからないのです。一応聖女の家に生まれ、このスキルのせいで「ドワーフ聖女」と後ろ指を指され続けた私などを拾ってくれたのか」

「同病相憐れむだったかもな」


 コンガネはコンガネで、数多の聖女を生み出した家の長女として生まれるがその能力は「金属の塊を作り出す」と言う物であり、本来聖女として求められる癒しの力はなかった。そのせいで聖女としては不適格としてドワーフの地に送られ、そこで素材を作り出す事と下女の様な生活をしていた。そしてカマ・セイケンに拾われていたが、そこでも資金稼ぎとして金属の塊を作って売り出すだけの生活である事は変わらなかった。

 最終的にカマ・セイケンの資金が潤沢になり捨てられ、10秒令息などと言われ家内から放り出されたカイジローに救われて旅を共にするようになったのである。


「10秒令息」。


 「10秒待って」とか言う、そう唱えると10秒時が止まると言うしょぼいスキルのせいでほとんど顧みられなかった彼。と言うかその間にコソ泥でもするのかと長男から散々言われたせいで父母からの評判も悪く、文字通りの追放状態だった。


 だがほぼ徒手空拳で冒険者と言う名の死んでも顧みられる必要のない存在となったカイジローは、たちまちその存在感を高めた。


「10秒待って」とか言うが、斬り合いで10秒は生死を分けるには十分だった。

 その力で次々とクエストを達成しランクを上げ、それなりに名を売るようにもなった。スキルのおかげ様だろと言われてもそうだけどと開き直る姿はいっそすがすがしく、本人もそれなりに金を持つ事が出来るようになった。


 そして何度も使い続ける内に、カイジローはこのスキルの真の力に気付いたのだ。


(この10秒ってのは、時間を止めたんじゃない……)


 10秒の間にいろいろ何とかしようとしていたからなかなか気付かなかったが、よく見てみると極めてゆっくりではあるが止まっているはずの対象が動いていた。


 そう、正確に言えば10秒の間だけ対象の速度を100倍にすると言う物だった。

 対象の速度が100倍になり、その結果それ以外の速度が100分の1になる。その余りにも大きな差から、止まっているように見えただけ。 

 そしてそのスキルの対象が自分以外にも使える事に気付いた時に出会ったのが、コンガネだった。



「まさかこんなにも速く、そしてうまく行くなんて……」



 コンガネ以外の全てを10秒止め、その間にコンガネが金属の塊を作り、さらに10秒待てを行使し、死角に向けてカイジローが叩き付ける。

 そのコンボで、二人は成果を上げまくった。

 もちろん時間が止まっている間に相手を破砕する事も多々あったし、10秒が切れたとしても避けたり守ったりする暇はない。

 さすがに邪竜は簡単ではなかったが二人してそのスキルを使いまくる事によりついに邪竜の体力も尽き、咆哮を上げ金属の山に埋もれながら永遠の眠りに就いた。




 そして二人の協力の力は、カイジローにもコンガネにも力を与えていた。


 100倍は1000倍になり、金属も発展した。

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