合流/再演/共闘
当然のように外は突然の警報によりパニックに見舞われていた。
飛び交う怒声、悲鳴、哄笑。
今まさに、日本社会は――全世界は混沌に還ろうとしている。
見上げれば、一応目視できるほどに隕石が接近しているとわかる状態で平静を保てという方がどうかしているのだけれど。
そんな中、あたしは華恋さんと連絡を取ろうと通話を試みるけれどやっぱり全くと言って良いほどに繋がらない。
「しゃあねえか、あそこに行くぞ」
「あそこって、もしかして――」
「ああ、あんたと俺たちが関わり合うきっかけになった公園だよ」
それから、あたしたちは特に急ぐ訳でもなく、目的の公園へと歩いた。
お互い黙りこくったまま黙々と歩く。
これから、愁さんはやっぱり華恋さんに殺されるつもりなのだろうか?
多分、そうなんだろう。
いままで、そうしてきたように今回もしっかり殺されることで、この世界の介錯をするつもりなんだ。
それは、なんて悲しいことだろう。
多分、愁さんは――
「あんた、セフィロスの真似事までするようになったのね。出鱈目すぎて呆れかえっちゃうわよ、本当に」
そんな考え事をしているうちに目的の公園へと到着してしまった。
華恋さんと香月さんが二人してあたしたちを出迎えてくれる。
「……よう、やることはわかってんだろ。こいつを止めるには、俺を殺すしかねえってことがさ。こいよ、今度こそ終わらせてやるからよ」
獰猛な笑みを浮かべて華恋さんを挑発する愁さん。
そうやって、悪役を演じることで自分なりに世界を救おうとした愁さんと彼を殺すことで世界が救われると本気で信じていた華恋さん。
どちらにも、悪意はなくお互いに『正義』しかないはずなのにどうしようもなく噛み合わない。
それが、どうしようもなく物悲しかった。
けれど――
「ねえ、あんたさ、こうなることが分かってたからいままで私にワザと殺されてたんでしょう?」
華恋さんが突然に核心に触れた。
「……どうして、そう思うんだよ」
瞬時に獰猛な笑みを引っ込めて訊ねる愁さん。
「メアリちゃんの話を聞いてから私もちょっと考えていたのよ。あんないいタイミングでメアリちゃんを拉致ったあんたの反応があの話をより真実だと確信させてくれたから。まあ、結局のところこの状況になるまでわからなかったけれど、こうなったら、ああ、なるほどね、ってね」
そう言って空を指さす華恋さん。
「つまり、あんたの目的はこの世界の安楽死。あんたなら唯一この状況をなんとかできるんでしょうけれど、それをしたら、どっちにしろこの世界は終わる」
あんたの能力はこの世界にとっては猛毒だもんね、と笑い、
「けれど、この状況になったのなら、もうどうだっていいでしょう。ねえ、最後に正義の味方になってみない?」
上に向けていた手を愁さんに差し伸べた。
愁さんは答えない。
華恋さんは続ける。
「私とあんたでこの世界を救うのよ。それが、仮初だとしても、最後くらいはヒーローで終わりたいでしょう?」
特大級の溜息の後、
「ま、最期くらいはこういうのも悪くねえ、か。いいぜ、このどうしようもないバットエンドから救ってやろうじゃねえか」
合わせろよ、華恋、と凛とした表情で呼びかける。
「あんたこそね、バカ兄貴」
華のように美しい少女が悪態をつきながらも満面の笑みを浮かべていた。
「上等だよ、アホ妹。
『この世の全ては始めから存在していなかった。
――因果変換式 ラプラス』
合わせろ、華恋!」
「分かってるわよ、愁!
『私はその変換を一部しか認めない。即ち、破滅の彗星!
――対因果変換式 ノルン』
消え去れ、クソ隕石!」
一瞬の空白が世界を覆い、また復活を遂げる。
空を見上げると破滅をもたらさんとしていた隕石はどこにも存在していなかった。




