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再会/真相/独白

コロナになんか罹るもんじゃないですね。マジできつかった。

 いきなりの展開に動悸が激しくなる。

「どうも、お久しぶりですぅ」

 あたしはなるべく平静を装い目前の男と対峙する。

「ところで、この間はよくもやってくれましたねぇ」

「ああ、災難だったな。お互い」

 なんの悪びれた様子もない男をあたしは思いっきり睨みつける。

「あなたのおかげであたしは存在喪失しちゃったんですけれど、どうしてくれるんですか」

 はあ、と間の抜けた声が返ってくる。

「いやいや、俺はあの時、あの夜の因果をちょろっと弄っただけで、それ以外は何もしてねえよ。ていうか、存在喪失って何?」

 あたしはことの顛末を彼に語って聞かせる。

 はあん、と一人だけ分かったようなような顔をする彼。

「なんですかぁ? 何かわかったのなら何とか言ったらどうなんですかぁ」

「別に。何もわからねえってことだけがはっきりとわかっただけさ。つうか、おめえよ、その口調やめろよ。イラついて堪らねえ」

 はいはい、失礼しました。

 イエローカードを貰ったところで、煽りタイムはこれにて終了。

 うん、調子が戻ってきた。

「で、どうなんです。何か申し開きがあるのなら聞きますよ」

「その前に、お互い自己紹介といこうか。俺は霧島愁(きりしましゅう)。フリーターをやってる」

 視線であたしに自己紹介を促す愁さん。

 霧島。

 やっぱり、彼は――

 でも、今は少しだけ措くことにしよう。

「いまは存在喪失しているので、本名はわかりませんが、あたしは霧島メアリ(仮)です。多分、学生、です」

 ふうん、とあんまり興味がなさそうに相槌を打ち、

「霧島、か。それに、メアリ、ねえ。確かにあんた白人とのハーフっぽいもんな。あと、5年もしたらとんでもない美人になりそうだ。その金髪はやっぱ地毛なのか?」

 すげえ、綺麗だな、といきなりの不意打ちを食らわしてくるお兄さんに再びあたしの心拍は急上昇を始めた。

 顔が真っ赤になるのを自覚しながらも、地毛です、と答えるのが精いっぱいだった。

 もう、何なんだよ!

 その、愁さんだって、よく見たら、カッコいいし、そんなこと言われたら、あたしだって意識しちゃうじゃん。

「ま、それは、どうでもいいとして――」

「どうでもよくない! あたしばっかりこんなに意識しちゃなんてバカみたいじゃないですか! この馬鹿!」

 えぇ、と困惑気味の愁さん。

 あ、ちょっとスカッとした。

「とりあえず、それは置くとしてあんたに起きているその存在喪失についての俺なりの解釈と俺の目的について話してやろうじゃないか。あんただってもう十分当事者みたいなもんだしな。それぐらいは知っておくべきだろう。

 まず、考えられるあんたのその状況だが、1つ、あの()()が俺の能力を解除したときのシワ寄せがあんたの存在喪失として現れた。2つ、これは、俺からしてもどうかと思うような説だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その、2つしか思いつかない。まあ、これはあくまで俺の見解であって真相ではない。結局のところ事態が解決できないのであれば、あとはあんたがどう納得できるかでしかないんだからな。あんた好みの『真実』ってやつを見つけてくれ」

 やっぱり、あったよ、血縁関係。

 見た目も似てると思ってたんだ。

 目元とかが特に。

 いつ、突っ込めばいいものか。

 そんなことより、結局、あたしはどこの誰でもない誰か、ってことか。

 まあ、現在進行形で困っている訳ではないからもうどうでもいいけれど。

 これからは、霧島メアリ(真)として生きていくのも悪くはない。

「続けるぞ。次に俺の目的だが、あんた、1999年のノストラダムスの大予言って知ってるか?」

 うん、話が変な方向にぶっ飛んだぞ。

 ていうか、生まれる前の話だしボンヤリとしか分からないけれど、前世紀最大のデマみたいな話だったような気がする。

「まあ、詳しくは知らんよな、そりゃ。簡単な話さ。デカい隕石が落ちてきて地球が滅亡するって話だよ」

 何、それ、なんてFF7?

 そんな、突っ込みを入れると、

「なんで、FF7は知ってるのにノストラダムスの大予言は知らねえんだよ。

 まあ、いいさ。

 話を戻すぞ。

 結局、隕石は地球に落ちてくることはなくこの話は単純な与太話として扱われた。だがな、()()()()()()2()0()()()()()()()()()()()()()()2()0()1()9()()()()()()()()()()()()()()()()()

 2019年? あれ、それって――

「今年じゃないですか! でも、テレビの放送もそんな政府広告もネットだってそんな話題は上がってこないですよ」

 愁さんは白痴でも見るような視線をこちらに向け、

「あのさ、こんなヤバいこと、誰が言えるんだよ。情報統制がされてるに決まってるだろ。まあ、ネットをあさればソースになる情報位はいくらでも見つかるさ。まあ、簡単には上がってこないようにはなってるけどな」

 肩をすくめながらそんなことを言い、スマートフォンを投げて寄越す。あたしはそれを慌てて受け取り画面に表示されたネットの情報を確認する。

 ……うわあ、結構マジな論文だ。

 なんて、ことだろう。

 どう転んだってあたしたちは滅ぶしかないじゃないか。

 動揺するあたしに畳みかけるように、

「……つまるところ、俺の目的はただ一つ。そんな悲惨な運命を辿った末の最期から全人類を疑似的に救うこと。別の言い方をすれば、安楽死させることさ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 あたしは、何の言葉も紡ぐことができなかった。

 この人は、たった一人でそんな運命を背負おうとしていたのか。

「それには、俺はあともう一回、()()()に殺される必要がある。あと、一回で俺は人類を救えるんだ」

「……ねえ、それってあなた一人が背負わないといけないことなんですか?」

「だから、こうして、あんたには話している」

 え?

 どういうこと?

「だって、傍観者なんだろ、あんた。なら、いいじゃないか。黙って事の成り行きを眺めててくれよ」

 ああ、そういうこと。

 本当にずるいな、この人。

 でも――

「諦めるのは、ちょっと早いんじゃないですか? あなたの因果変換能力で隕石が落ちてこないことにすれば――」

「それを、やっても結果は同じだよ。つまり、俺の能力ってやつはこの世界にとっちゃ猛毒でさ、使えば使うほどその修正力に負荷が掛かり限界が来たら修正力が働かずに真っ白に消滅してしまう、ってのが実際のところなのさ。本来ならばこんなヤバい能力は俺だって使いたくなかったが、あんたも知ってるとおりにもうどうしようもない。だからさ――」

 隕石が落ちてくる前にカタをつけなきゃならんのさ、と寂しそうな表情を浮かべる愁さんにあたしはこれ以上何も掛ける言葉がなかった。

 

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