表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
佐藤と吉田  作者: 澪標零
叫びたがり、佐藤。
12/16

12話 佐藤が悩む

 いい加減髪を切ってもいいのではないか、とは思うが、切れない。タカユキが気に入っていたこの黒髪を、染めようかとも思ったけど、そんな勇気はなくて。タカユキが≪似合うよ≫と、言ってくれたこの長さのまま、ずっといる。髪が風になびくたびに、うっとうしいなあと思うのだけれど。でも切ってしまう勇気は、やっぱりない。私はタカユキに、縛られているのだ。

「この好きと、吉田さんへの好きは、イコールなんだろうか、遠田さん」

同じアパートの真下の部屋に住んでいる、≪遠田栞≫に助けを求めた。しおりの≪り≫をとって、≪りーさん≫と呼ばれているが。私は≪遠田≫という名字が気に入ってしまったので、≪遠田さん≫と呼んでいる。

「絶対イコールでしょ。……え、普通に付き合っちゃえばいいじゃん。両想いなんだし」

この見た目キャバ嬢女は……。考え方に芯は通っているし、人としては問題ないけど。たまに男慣れしているのが目に見えてわかってしまって、なんだか怖くなる。

「タカユキは別に、彼氏じゃなかったんだけどな」

今もずっと縛られているのだと知ったら、タカユキはどう思うのだろう。私のことを嫌いになるだろうか。

「その≪タカユキ≫ってやつはそいつだし、吉田さんは吉田さんじゃん」

遠田さんがまっとうなことしか言わない。その通りだ、タカユキはタカユキであって、吉田さんは吉田さんだ。

「……タカユキのことを、ちゃんとお話ししてから、だし。里咲のことも、聞かなきゃ、だよな」

そうだ、里咲。里咲は、どうして吉田さんと離れたりなんかしたんだろう。吉田さんは優しいから、まさか里咲から振るなんてことは、ないだろう。

「私……かな」

里咲に、私は嫌われたのだろうか。別に、里咲と特別な縁があったわけではないけど。一方的に嫌われてしまうのは、いい気分ではない。嫌われたとして、生活に全く支障はないけれど。

「里咲に限ってそんな頭悪いことしないよ」

遠田さんはガハハと笑って、ポテトチップスをむさぼった。せっかくの明るい茶髪が、プリンになっている。そろそろ染め直すことをお勧めしなくてはならないな。

「……ま、何事も、私がどうするか、だもんな」

聞こう。里咲とのことを。聞かなければならない。そして吉田さんには、タカユキのことを知る権利がある。

「明日タスクの後聞けばいいじゃん。吉田さん地域タスクだから火曜日じゃん」

なんと都合のいいことか。芸術学科屈指の面倒な科目≪タスク≫を、有効利用できるとは。

「……だな。それしかないか」

色恋の絡んだ事案に、こんなに積極的になることが、果たしてこの先、あるだろうか。吉田さんが、私の中でこんなに大きな存在になっているなんて。気づかなかったなあ。なんて。息を吐いた虚空が、私をさげすんでいるかのようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ