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死後(デッドイン)  作者: 糞袋
第四章・断罪
90/113

アイェェ!?ニンジャ!!?

 ニンジャナンデ!!?

 ナックルはマドルを追って、街の中を走っていた。悲鳴やら逃げ惑う人々の様子やらが遠くまで届いてくれたおかげか、すでに向こう500mまでは一般人の避難は完了しているようであった。

(とはいえ、ファミレスとかの店の建物自体は避難しようが無い!!だから、出来るだけドンパチせずに逮捕したい!)

 大規模なテロならばともかく、こんな矮小な事件で街に被害が出れば、多かれ少なかれ(というよりかなりの確率で)獄犬、ひいては獄番の評判が落ちてしまうだろう。そうなれば、今後の獄犬としての活動がやりにくくなるかもしれない。それだけは避けたいナックルは、故に足を速めてマドルの後を追う。しかし、マドルはそんなナックルの心境など知ったことかとばかりに己の上着に手を突っ込むと、中から小型のダイナマイトを(それは何故か服から出した時点で着火済みであった)出した。そして、走りながらその小型ダイナマイトをナックルの方へ後ろ手で投げて転がすなどして、その追跡を妨げた。そのせいで、ナックルはマドルとの距離を大して縮めることも出来ないまま走り続けていた。

(くそ、早く追いつかないと!このままじゃいつか街に被害が出るぞ!)

 自分の方に転がってくるダイナマイトの導火線を、鋭いフットワークで踏み消しながら、ナックルは焦っていた。

 しかし、ナックルの胸の中で焦燥が湧いて出てから一秒と経たぬうちに、何を思ったのかいきなりマドルが跳躍した。そして、彼は空中にて上着に手を突っ込みながら体を捻り、ナックルの方に全身を向けた。それから、何の躊躇いも無く彼女目掛けて上着から出したダイナマイトを投げつけた。

「無駄だっ!」

 しかし、ナックルはそのダイナマイトの炎を、鋭い右ストレートによって導火線ごと穿ち抜いた。大した動体視力であるが、しかしそれを前にしてもマドルは眉ひとつ動かさなかった。マドルは無表情のまま、ナックルの方を向いた状態で地面に着地し、その場に停止した。

「・・・逃走は諦めたのか、ガキ」

 マドルが停止したのを見て、ナックルは直ぐに彼に殴りかかることはせず、一先ず立ち止まった。様子見である。

「勘違いしないでくれる?俺は兄貴の邪魔にならないようにお前を此処に誘き寄せただけで、別に逃げてたわけじゃないよ」

 観察するように自分を見つめてくるナックルに対し、マドルは冷めた口調でそう言った。

「兄貴?・・・あぁ、ゴッツの事か。・・・そうかい。まぁ、アタシとしても都合が良かったよ。これで、マイティの戦闘に巻き込まれること無く、存分に戦えるってもんだ」

 マドルの言葉に対し、ナックルは指をポキポキと鳴らしながらそう答えた。

「マイティの戦闘?笑わせないでよ。兄貴が今からマイティに対してやるのは戦闘じゃなくて一方的な殺戮。今頃、マイティの奴は目も当てられないような状態になって地面に転がってるんじゃない?」

 マドルが口元に冷たい薄笑いを浮かべて言った。

「言っとくが、マイティはそんなに軟な男じゃあない。お前の言う兄貴とやらの方こそ、今頃ノックアウトされてるんじゃないか」

 しかし、ナックルは自信たっぷりに腕組をしてそう返した。その顔はどこか得意げだ。

「何言ってんの?兄貴がマイティなんかに負ける訳ないじゃん。何せ、兄貴はコンクリートの地面くらいなら欠伸をしながらでも叩き割れる程に強いから」

 ナックルの言葉に顔をしかめたマドルは、少し口調を強くしてそう言った。どうやら、彼はゴッツの強さをかなり信頼しているらしい。

「それぐらいならマイティだって出来るさ。それどころか、マイティは割ったコンクリートを握りつぶして、砂に変えれる」

 しかし、ナックルも負けてはいない。依然として得意げな表情を崩すこと無く、余裕を感じさせる口調でそんなことを言った。

 それが気に食わなかったのだろう。マドルは更に顔をしかめて、更に口調を強くしながら、こう言った。

「兄貴だってコンクリートを砂にすることは出来るさ!それに加えて、兄貴はその砂で芸術的なセンス溢れる砂絵を描くことだって出来る!」

「いや、砂絵は今関係ないだろ」

 そんなマドルの叫びに対して、ナックルは少々戸惑った様子でそう返した。この女、割とまともである。

「ふん、口ではそんなことを言ってるが、内心では兄貴の完璧さに恐れ戦いてるんだろ。だから今、そんなことを言って論戦の流れを切ったんだろ」

「何言ってんだお前」

 勝ち誇った顔でそう述べるマドルの姿に、呆れた表情でそう呟くナックル。しかし、何かを思い出したかのように「あっ!」という声を漏らして目を見開くと、すぐに真剣な表情になって言った。

「いかん危ない危ない危ない。こんな意味の無い言い合いをしてる場合じゃなかった。おいガキ!とっとと大人しくお縄につけ!!・・・そうすれば、釈放DPも少なくて済むぞ」

 ナックルの言葉を受けて、マドルも勝ち誇った表情を直ぐに消して、こう返した。

「・・・嫌だね。だって、俺があんたを殺し、兄貴がマイティを殺すことで、この復讐劇は終わりだから。だから、捕まった後の事を考える必要なんて、どこにも無い」

 マドルの瞳は真剣だった。今の言葉が、嘘や虚勢でないことが、ナックルにはすぐに分かった。

「・・・そうか。じゃあ、アタシも本気でお前を捕まえるよ。言っとくけど、お前が子どもだからって言って、容赦はしないからな」

 だからこそ、一瞬後の彼女の目は、今までの快活な光が宿ったものでは無く、寒気を覚えるような冷徹さを秘めたものに変わったのである。

 そんなナックルの氷の様な眼光を前に、少しだけ驚いたようにマドルは言った。

「・・・へぇ、あんたそういう冷たい目も出来るんだ」

「アタシはマイティとは違って、殴り合いになると冷めるタイプなんだよ」

 そんな言葉を放つと同時に、ナックルがマドル目掛けて踏み込む。そして、その勢いを殺すこと無く、ナックルはマドル目掛けて体重の乗った右の拳を突き出した。

 しかし、その拳がマドルの体に到達する前に、彼女と彼との間に何やら煙草の様な形をしたものが飛んで入った。その煙草の様なものの先端には、これまた火が点いていた。

「・・・の割には、猪みたいに突っ込み過ぎじゃない?」

 そう呟くマドルの口は吊り上がり、目は閉じられていた。


 次の瞬間、煙草の様なものが音と共に強烈な光を放った。


「うぐっ!?」

 爆光をもろに両目に受けた為に、ナックルの視界は一瞬闇に包まれた。と同時に彼女の体も強張った。

「隙だらけだよ」

 体の自由と視界を失ったナックルの耳が、遠くからマドルのそんな言葉を聞き取る。と同時にナックルの耳は、ジジジ、という何かの燃える音が近付いてくるのを聞き取った。

(っ!ダイナマ)

 ナックルのその思考の続きは、爆音と爆風によって絶たれた。


「・・・死んだかな」

 己の投げたダイナマイトの爆発によって巻き上がる粉塵を見ながら、マドルは呟いた。

「・・・な訳ないか。さっき投げたダイナマイトは小型で低性能の奴だから比較的威力は少ないだろうし。でも、もしこれで死んでたら拍子抜けだな。殺害までに使用した閃光粉の紙巻が一本じゃ、ポケットの中がストックでだぶついて仕方ないよ」

 先程の光は、閃光粉に火が付いて化学反応を起こしたことにより発生したものであったらしい。そのせいか、光が発生した場所にはキナ臭さが漂っていた。

 その閃光粉によるものとダイナマイトによるもの、二つのきな臭さが充満する現場には、しかし肉の焦げる臭いはしていなかった。

「・・・ってことは、やっぱり生きてるよな」

「その通り」

 マドルが己の嗅覚を頼りにそういう結論を出した瞬間、巻き起こっている粉塵をぶち抜いて、ナックルが彼の眼前に飛び出した。至近距離で小型とはいえダイナマイトが爆発したのにも関わらず、その体には目立った外傷は見られない。体の機能もちゃんと取り戻しているようで、飛び出す勢いそのままにナックルは左のジョルトブローを放った。

「知ってた」

 しかし、マドルはナックルの拳がめり込む前に、両腕で防御を完了させていた。一瞬早くナックルの生存に感づいたことが、彼のギリギリでの防御を可能にしたのだ。可能にはしたのだが。

 ドゴン!

 重い音を響かせながら、マドルの右腕にナックルの左拳が激突する。その衝撃はかなりのもので、マドルは防御したのにも関わらず、次の瞬間吹っ飛ばされていた。

「うわぁっ!?」

 宙を舞い、コンクリートの上に転がるマドル。落下の衝撃で、一瞬呼吸が消える。が、しかしそのままでは追撃を受けて永久に呼吸が止まってしまうかもしれなかったために、マドルは直ぐに立ち上がった。

「ガードが軽いな。やっぱりガキの体じゃあ格闘は難しいかマドル」

 マドルを殴り飛ばした張本人であるナックルは、ジョルトブローを炸裂させた地点に立ち、そんな言葉を放った。その姿からは余裕が感じられた。

「・・・華奢な体躯の癖に相変わらず重いパンチを打つあんたには言われたくないよ」

 目前のナックルを睨めつけながら、マドルは言った。

「身体能力なら鍛え方次第でどうにでもなんのが死界だからな。・・・ってか、お前遂にやってくれたな。今の爆発で下のコンクリートが少し傷ついたじゃねえか。空中での爆発だったから良かったもの、もし直に地面に接した状態で爆発してたら、アタシがマイティに後で拳骨貰うようなことになっちゃうだろ」

 ナックルはそう言いながら、左腕を前に、右腕を後ろに構えたファイティングポーズを取った。

「・・・そんなことより、どうやってさっきの爆発から逃れたの。光による硬直時間が短かった?」

 ナックルの台詞を無視して、マドルは問うた。しかし、ナックルは答えない。それを見て、マドルは聞くだけ無駄だと思ったのか、ナックルに向かって何やら金色に光るものを投げた。

(また閃光粉とか言うスタングレネードもどきか?)

 先程、粉塵の中からマドルの呟きを聞いていたナックルはそう考えて身構える。しかし、ちらりとマドルの方を見れば、彼は目を瞑っていない。

(ってことは、さっきみたいな発光系の武器では無いってことか?ってことは、さっきみたいなダイナマイトか)

 そう思いながら、ナックルはその金色に光るものの落下地点を予測し、そこから離れようとした。


 パンッ


 しかし、ナックルが足を動かし始めるのと同時に、そんな軽い炸裂音が彼女の耳に届いた。その音と共に、ナックルは己の肩に熱を感じた。

(抉られた・・・)

 瞬間、ナックルは思った。今までの獄犬として蓄えてきた経験が、そんな刹那の予感を割り出したのである。その予感は的中しており、次の瞬間には彼女の肩の熱は激痛へと変わっていた。

(何が起こった)

 金色を避けようとしたその瞬間、ナックルはほんの僅かな間だが、その避ける対象から目を離していた。その僅かな視界外の出来事によって、ナックルは彼女の肩肉を微量ながら失ってしまった。しかし、それでもナックルは動揺してはいなかった。熱を帯びる肩に触れて、出血具合を見ることもせずに、彼女は先程の金色の正体について思考を始めた。

(さっきの破裂音と共に、アタシは肩を削られた。恐らく、金色とあの破裂音とアタシの肩が削られたという事実は、密接な関係にあるだろう)

 高速でそう考える中で、ナックルは10mほど先の地面に、何やら金色に光るものが転がっているのを見つけた。

(さっきの金色のやつか。でも、さっきと何か形状が違うな)

 金色の物体が宙を舞っている瞬間、ナックルはその物体の形状を視認していた。先端部分が尖っている小さな円柱。それが、ナックルがその物体の形状に対して抱いた物質的な印象であった。しかし、今地面に転がっている金色の物体の形状と、その印象はまるでは違っていた。今地面に転がっている金色の物体は、先程よりも短い円柱であり、その片側には湯呑の様な口があった。それにナックルが気付いた瞬間、彼女の鼻が微かなきな臭さを感じた。と、同時に、ナックルはある推測を立てた。ナックルが肩を抉られてからこれまで、僅か数秒の出来事である。

「何ボーっとしてんだよ」

 そんなナックルの数秒の思考内容など知る由も無く、マドルはそう言いながら金色の物体を今度は親指で空中に弾き上げた。その金色の物体はマドルの親指から1ⅿ程離れた直後、再びパンッという破裂音と共に、ナックル目掛けてこれまた金色の何かを高速で放った。

「やっぱりな」

 しかし、ナックルはそう言いながら迫ってくる金色の物体を、今度は一瞬も目を逸らすこと無く見続けた。そして、金色の物体がその腕のリーチの中に入った瞬間、目にも留まらぬ速さで腰を捻り左手を後ろに下げると、そこから鋭い左アッパーを繰り出した。そのアッパーは向かってくる金色の物体の下っ腹を捉えて、天高く弾き上げた。

「・・・出鱈目な動体視力だな、あんた」

 一連のナックルの動きを前にして、マドルがそう呟いた。そんなマドルに対して、ナックルは表情を変えること無く言った。

「さっき、お前がアタシに放った金色のもんの正体が分かった。ついでに、お前の心象もな」

「・・・へぇ」

 ナックルの言葉に、マドルもまた表情を変えること無く返した。しかし、その瞳には少しばかり動揺が滲んでいるようであった。

 そんなマドルの瞳の揺れをしっかりと見ながら、ナックルは言葉を紡ぎ始めた。

「さっきの金色の奴、あれは金色の筒に金色の銃弾みたいな形したもんをはめ込んだものだろ。それで、金色の筒はコップみたいに片側だけ口が開いてるって形状だな」

 マドルの目の虹彩が僅かに動く。その先には、先程己が親指で弾き上げた金色の物体の残骸が横たわっていた。役割を果たしたその残骸は、確かにコップの様な形をしていた。

 そんなマドルの目の動きもしっかり見ながら、ナックルは続ける。

「んで、金色の筒には口じゃない方の、つまり穴の開いてない尻の部分に火薬が塗ってあって、それが何らかの理由で発火し爆発し、それによって発生した爆風によって、はめ込まれた弾丸が凄い勢いで押し出される。その爆発による音がさっきから金色のもんから発せられてるパンッて音だ。違うか?」

 その言葉を受けて、マドルの虹彩が再び移動する。その先には、金色の残骸の底の部分に残る、黒い跡があった。

 ナックルはマドルの目の動きを、冷めた瞳で観察しながら言葉を続けた。

「・・・で、こっからがお前の心象の話だ。さっき言ったよな。金色のもんの底に塗られた火薬が、何らかの理由で発火したって。・・・そう言えば、お前がさっきから投げてくるもの、例えばダイナマイトだとか、閃光粉だとか、全部火が点くことで効果を発揮するものだよな。その割には、アタシは今の今まで、あんたがマッチだのライターだの使って、それらに直に着火するのを見ていない。全部が全部、何時の間にやら火が点いていたものばかりだ。・・・前置きが長くなったな。まぁつまり、お前の心象の効果は『触れることなく何かに火を点ける』ってもんだろってことだ」

 マドルは少しばかり黙った。それから、口端を吊り上げて言った。

「・・・ご名答。俺の心象は『点火(イグニッション)』。その効果は『無生物に触れること無く火を点けられる』ってものだよ。まぁ、精々ライター程度の着火能力しかないけどね。いきなり山や家を火で包むみたいなことは出来ない、矮小な心象だよ」

 つらつらとそう言ってから、マドルは少し目を見開いてこう付け加えた。

「・・・というか、今まで知らなかったの俺の心象?八年前、あんたが俺を獄牢にぶち込んでから、マイティや看守共には聞かなかったのかよ」

「・・・あぁ。聞く必要性は感じなかったからな。だってそうだろう。八年前のまだお前が更生すると信じ込んでいたあの段階で、またお前と戦うことになるからその対策のためにお前の心象を知っておこうなんて、誰が思うか」

 そう言うナックルの瞳は、冷たさの奥に悲しみを感じさせるような、そんな光を放っていた。

「・・・流石に迂闊過ぎるね。そんなんだから、今から俺に殺されるんだよ」

 そんなナックルに対し、マドルは微塵も悲しみを感じさせない冷たい瞳を向けながら、己の上着の中に両腕を突っ込んだ。そして、そこから六つの金色の物体を掴み出すと、それをナックル目掛けて放った。


(シュプレンゲン)(クーゲル)


 マドルの唇が動き、そんな単語の羅列を紡いだ。瞬間、てんでバラバラの方向に飛んでいた六つの金色の物体の先端が、てんでバラバラなタイミングでそれぞれナックルに向く度に、パンッという小さな爆発音と共に金色の弾丸が彼女目掛けて放たれた。

「なめるなよ、ガキ」

 しかし、ナックルは高速で飛来してくる弾群を、俊敏なフットワークで避けた。

「そっちこそ」

 だが、避けた先にはマドルの投げた小型のダイナマイトが迫ってきていた。どうやら先程の六つの弾丸達は、ナックルの避ける場所を限定するための囮だったようだ。

 ダイナマイトが迫る中、ナックルはマドルがしゃがんで先程と同じ金色の物体を三つ、それぞれ別々の向きにして地面に置いているのを見た。

(このダイナマイトの導火線を殴り消しながら、あの金色の軌道から外れないと駄目みたいだな)

 そんなことを考えて、ナックルは一先ず左フックでそのダイナマイトの火を消そうと、体を捻った。それにより、ナックルの視点が変わった。


 その変わった視点の中に、先程まではダイナマイトによって死角になっていた部分が入り込んだ。そこには、ダイナマイトと同じスピードで飛来する閃光粉の紙巻があった。 


(しまった)

 即座にそう思い、瞼を閉じようとするナックル。しかし、彼女の眼球がまだ空気に触れている最中に、爆光は炸裂した。瞬間、彼女は闇の中に囚われた。

「今度は避けきれないだろ」

 そう言うように笑う彼の目はしっかりと閉じられていた。しかし、しゃがんでいた為に、ナックルからはマドルの閉じられた目は見えてはいなかった。

 ナックルは、まんまとマドルの罠に嵌ったのである。



「死ぬ?ナックルがか」

 ゴッツの言葉に対し、マイティが問う。

「あぁ、そうだ」

 ゴッツは笑って返答した後、こう続けた。

「マドルは身体能力も心象もショボイが、あれで中々上手く戦いやがる。そのことは、テメェもよく知ってるだろうが」

 そう言うゴッツの顔には、岩棘で若干分かりにくくなっているが、確かな自信が秘められているようであった。マドルが必ずナックルを殺すという、そんな自信が。


「それでも、ナックルが勝つさ」


 しかし、そんな自信に満ち満ちているゴッツに対し、マイティはあっさりと、しかしきっぱりとそう言い切った。

「・・・あぁ?」

 マイティの返答に対し、ゴッツはざらついた声でそう言った。その声には、若干の苛立ちも混じってるようだった。

「・・・確かにアイツは普段はちゃらんぽらんの姦しナッポーだ。それは認める。・・・だが、それでもアイツは俺が八年間鍛え続けてきた後輩だ。・・・だから、俺は自信を持って言える」

 だが、その声に対しても眉一つ動かすこと無く淡々と、しかし言葉の節々に強い自信を滲ませながら、マイティは小さく吠えた。


「アイツは、強い」




(・・・おかしいな。そろそろ爆発が起こる筈なのに)

 ナックルが光で体を強張らせているのだから、ダイナマイトは無事に爆発するに違いない。しかし、一向に爆音は響かない。その矛盾に対し、マドルは目を瞑りながら疑問を抱いた。

(・・・何が起こってるんだ?)

 そう思い、マドルは恐る恐る目を開けた。瞬間、彼はその目を一気に見開いた。見開かずにはいられなかった。


「どうした、ガキ」


 何の外傷も負っていないナックルが目前に立っていた。導火線が削り取んでいるダイナマイトが地面に転がっていた。それら二つの事象も、確かに彼を驚愕させる一因ではあった。しかしながら、それ以上にマドルの度胆を抜くものが、彼の眼前に在った。


 彼の目の前には、『無傷のナックル』と、『火の消えたダイナマイト』の他に、


















 『もう一人のナックル』が存在していた。


 ちなみに僕が一番好きなNARUT〇の忍術は、影分身の術です。

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