お前の相棒デーベソ
今回の話は文字数が少ないですが、許して下さい。これでも反省してます。
「っ・・・!!」
鎖越しに己の腹部に響くありえないレベルの圧力に、マイティは呻き声すら削り取られる。そして、無言のまま彼の体はコンクリートに叩きつけられた。鈍い大音が響き、地面がひび割れる。と同時に、マイティは己の後頭部を地面にしこたま打ち付けた。
「っ」
瞬間、彼の視界がぐにゃりと歪む。その歪みは瞬く間にひどくなり、真っ黒のスクリーンとなって彼の目を塞いだ。
「死んだか」
闇に脳が漬かったような状態のマイティの耳が、遠くにそんな声を聞き取った。
(いや、遠くじゃねぇな)
刹那、マイティはそんな思考の瞬きと共に覚醒した。目に光が灯り、眼前に橙色の空が広がる。それと同期して、彼の胸が大きく上下した。どうやら今の今まで呼吸が止まっていたらしい。酸素がマイティの全身に回って、彼の意識や身体機能を回復させた。
「お、生きてたか」
酸素が脳に行き渡ることで鮮明になったマイティの視界の外から、ざらついた声が聞こえた。どうやら、マイティの胸が上下するのを見て、彼の生存に気付いたようだ。
「・・・腹に鎖巻いてなきゃ、即死だったよ」
ふら付きながらそんな言葉を吐いて、マイティは立ち上がる。鈍い鈍痛が彼の頭蓋骨を内側から突き刺していたが、マイティはそれを意にも介さない。何故なら、その程度の事に気を取られていたのでは、一拍子後にも殺されるかもしれないからだ。だから、マイティは頭痛と共に込み上げる吐き気を呑みこみながら、それでも平然と言った。
「どうした、殺し損ねてムカついてんのか」
マイティの口から出たのは挑発であった。それにゴッツが乗ってくれば、それにカウンターを合わせようと、マイティは企んでいた。しかし、流石に分かりやす過ぎたのか、ゴッツはそんなマイティの挑発に対して岩棘だらけの顔を軋ませて笑うだけで、怒り狂って殴りかかって来るようなことはしなかった。
「いやぁ、素直に嬉しいぜ。10年間で、よくここまで強くなったもんだ。感心するぜお前の生命力。まるでゴキブリだ」
しかし、手を出さないだけであって、しっかりと腹が立ったらしい。ゴッツは依然としてざらついた声で、マイティをゴキブリ呼ばわりした。だが、その言葉に対し、マイティは口元を歪めた。
「テメェにそんな風に褒められる日が来るとはな。嬉しさのあまり、テメェの首を鎖で刎ね飛ばしそうになるぐらい光栄だぜ」
その顔に浮かんだのは、意地の悪い笑みであった。そんな笑顔を浮かべてそう返すマイティに、ゴッツは急に笑みを消した。瞬時にマイティは攻撃を予感して身構える。
「さて、無駄話はここいらで終いだ。もうそろそろマジで殺す。・・・だが、最後に一つだけテメェに聞きたいことが有る」
しかし、ゴッツは手を出してくるようなことはせず、落ち着き払った様子でそんなことを言った。
「何だ」
そんなゴッツに対して、ゆっくりとファイティングポーズを取りながら、マイティは問う。その瞳は、目前の岩の怪物を、真っ直ぐに睨み付けていた。隙あらば、ゴッツがマイティに問うている最中に攻撃を仕掛けてしまおうという魂胆である。だが、ゴッツの体からは痛いほどの殺気が溢れるばかりで、針の先程の隙もありはしなかった。それほど堅牢な殺気の鎧を纏いながら、ゴッツは続けた。
「テメェの相棒、今何してる」
その問いに対し、マイティはファイティングポーズを崩さずに返した。
「・・・あの日、一緒になってテメェを獄牢にぶち込んだショウタロウは、俺の正式な相棒じゃねぇぞ」
マイティの返答に対し、ゴッツは薄笑いを口端に浮かべて首を横に小さく振った。
「ちげぇちげぇ。そっちじゃねぇよ。俺が言ってんのは、テメェの女の相棒の方だ」
その言葉に対し、マイティは表情をピクリとも動かすこと無く、こう答えた。
「・・・ナックルは今、テメェんとこのマドルと戦ってる最中だよ」
そのマイティの言葉に対し、ゴッツは少し目を開いた。しかし、すぐに目を完全に閉じない程度に薄めると、唐突にくつくつと声を噛み殺すような笑いを漏らした。
「何が可笑しい」
無表情のままマイティが凄めば、ゴッツは笑いを喉奥に押し込んで言った。
「いやぁ、別に。まぁ、テメェがそういう反応をするんなら、俺からもこれ以上は言わねぇさ。・・・じゃあ、少しばかり話題を変えるぜ。テメェの相棒の女、ナックルっつったか」
そこで言葉を切ると、ゴッツは最初に見せたような哄笑を顔面に浮かび上がらせて、言った。
「死ぬぜ」
ちなみにナックルはデベソじゃありません。




