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死後(デッドイン)  作者: 糞袋
第三章・悪人
46/113

月って、何か素敵

窓を開けたら山の向こうに綺麗な月が出ていたので、テンション上がってまたまた投稿しました。

 黒翼を羽ばたかせ、空を駆ける金色のバイク集団と並走するドキルク。

 バイク集団の一人である黒髪のドレッドヘアーの男がそれに気付き、声を上げた。

「ヤバイぞ!なんか傘持った眼鏡が空翔んでやがる!」

 それを聞き、青髪ロン毛が黒髪ドレッドに対してがなる。

「んだとぉ!?よし、コヴィン!テメェの心象で撹乱させろ!」

「分かった!」

 黒髪ドレッドの名はコヴィンと言うらしい。コヴィンは自分の名を呼んだ青髪ロン毛に勢い良く返事をした後、叫ぶ。


「行くぜ!『偽者(フェイク)』!」


 すると、コヴィンを始めとするバイク集団が、一人につき四体くらいにバイクごと"分身"した。

 地上からその様子を見上げ、呆気に取られるダイゴ。しかし、マリオとドキルクは依然として驚いた素振りすら見せない。

「ぎゃはは!どーだ犬っころ共!こいつが俺の心象『偽者』!能力は見ての通り『好きな人間の分身を好きなだけ作れる』っつースゲェもんだ!ちなみに分身に攻撃しても意味無いぜ!何故なら攻撃がすり抜けちまうからな!!」

 勝ち誇った顔でベラベラと自分の心象の説明をするコヴィンに、しかしドキルクは言う。

「ご丁寧に心象の説明どうも。それなら勝てそうだ」

 その台詞に、コヴィンが眉間に皺を寄せて返した。

「あぁ!?寝言は寝て言え蝙蝠野郎!」

「寝るにはまだ太陽が眩しすぎんだろ!脳味噌腐ってんのかこの阿呆!!」

 ドキルクが凄まじい剣幕で捲し立てる。お前そんなに太陽が嫌いか。

「な、何でそんなにブチ切れてんだよ?おっかねー!故に俺達は逃げる!!テメェらバイクのスピード上げろ!!」

 青髪ロン毛がそう叫ぶと同時に、バイク集団のスピードが更に上がった。

 どんどん遠ざかるバイク集団を見上げながら、ダイゴは思う。

(た、只でさえ分身のせいでどれが本体か分かんねぇのに、その上スピードまで上がりやがった・・・!チキショウ、どうすりゃ良いんだ!?)

 

 そして、ダイゴが解決策を見つける為に、頭を回転させようとした時だった。


 ドキルクが飛行速度を上げてバイク集団に追い付き、そして、


「ぎゃっ!?」

「おぶえっ!?」

「ぎひぃっ!?」

「そむりえっ!?」

「なぽりたんっ!?」

 

 といった色とりどりの悲鳴と共に、バイク集団全員が地上に叩き落とされたのだ。


「な、何スか!?何が起こったんスか!!?」

 状況が飲み込めず、ただただオロオロする他ないといった様子の禿げ雑魚(ダイゴ)に、マリオが助け船を出す。


「今の瞬間、ドキルクちゃんは羽の羽ばたきを強めることで加速して転生者達に追い付いた後、あの傘でもってあいつらの本体を一人残らず叩き落としたのよ」

 その説明に対し、ダイゴは更に驚いた様子で言った。

「あ、あんな一瞬で全員の本体を正確に見分けて叩き落としたんスか!?い、一体どうやって!?」




「あんな一瞬で本物見破りやがって!!一体どんな手品を使ったんだよ!!」

 コヴィンが腰を擦りながら立ち上がって、忌々しげにドキルクに問う。既に分身やバイクは消えており、今ドキルクの目の前に居るのはビニール袋やリュックサック以外には何も持っていない本体五人だけであった。


 そんな五人に対し、ドキルクは涼しい顔で言う。

「別に大したことはしてないぜ?ただ、ちょちょいと"超音波"を使っただけだ」

「「「「「「超音波?」」」」」」

 転生者五人+ザコハゲがすっとんきょうな声を上げた。そんな六人に対し、ドキルクはやれやれといった様子で言った。

「・・・"反響定位"って知ってるか?蝙蝠とかが超音波を放って周囲の物体に当てて跳ね返させることで、周囲の状況を把握するっていうアレなんだがな。・・・早い話、俺はさっきそれをしたんだよ。自分の声帯の一部を、蝙蝠のそれに変化させることでな」

 その言葉に、ダイゴはまだチンプンカンプンという様子だった。しかし、そんなダイゴを尻目に、転生者の一人である赤茶色のざんぎり頭をした男が納得したように言う。

「な、成る程・・・。だから実体を持たない分身には当たって跳ね返るという事が無いから、本体がどれか見分けるのも簡単だったって訳か・・・」

 この男、見た目に反してダイゴよりは理解力は高いらしい。

 ドキルクはその言葉に頷いた後、

「その通り。さて、じゃあ種明かしもしたことだし、テメェら全員お縄の時間だぜ」

 と言うと、閉じた傘を剣のように構えた。

 そんなドキルクに、青髪ロン毛が吠える。

「チイッ!!良い気になんなよ犬っころ!!テメェなんざこのプスーカ様にかかりゃ一瞬でお陀仏だ!!」

 そう言うと、青髪ロン毛改めプスーカは自らの心象を認識した。


「心象認識『鉄釘(スパイク)』!」


 瞬間、プスーカの右掌から、長さ90cm程の巨大な釘が出現する。プスーカはそれをレイピアのように持つと、いきなりドキルクに向かって突き出した。

「おっと」

 ドキルクは難なくそれを避ける。

 だが、そんなドキルクに対しプスーカは

「ふん!初撃は避けたか!だが、これならどうだ!!」

 と言うと、凄まじい速さで釘を連続で突き出しまくった。

「ぜりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!!!!!!!!!!!!!」

 釘が日の光を反射した事による鈍色の光が、繰り返しドキルクの体とプスーカの手元の間を行き来する。

 しかし、それでもドキルクの体には当たらない。全ての突きを掠りもせずに避ける、避ける。

 そんなドキルクに、プスーカは頭に血が上ったのか、釘の持ち方をレイピアのそれから剣のそれに変え、釘を左斜め下から力任せに斬り上げた。

 その際、少し屈んだ状態で斬り上げた為か、釘先がコンクリートの地面に当たったが、それをまるでプリンの様にスッ、と軽く斬り裂いてしまった。


 唸る風切り音。迫る釘先。吊り上がるプスーカの口角。


 釘先とドキルクの体との距離が詰まっていく。


 10センチ、5センチ、3センチ、0セン―――


 ガキインッ!!


 しかし、釘先はドキルクに避けられることも、ましてやドキルクを切り裂くことも無く、




 ドキルクの"閉じた黒い蝙蝠傘"に受け止められた。



 プスーカは目を見開いて言う。

「嘘だろ!?こ、この釘は心象だぞ!!?それなのに、鋼だってコンクリだって簡単に切り裂くこの釘をそれなのにっ、"傘"で防ぎやがっただとぉ!!?」

「・・・俺の傘は特別製でな。『ドキルク-prs』って名前で、日光だろうが雨だろうが銃弾だろうが心象だろうが皆皆防げちまうくらい丈夫な代物なんだよ」

 ドキルクは不敵に笑いながらそう言うと、「今度は此方の番だ」とばかりに傘を横に薙ぎ、プスーカの釘を"へし折った"。

「何・・・だと・・・」

 起こった事象に呆気に取られるプスーカ。

 


 そんなプスーカめがけ、ドキルクは傘をバットの様に思い切り振り抜く。


「おじやっ!!!」


 そんな断末魔と共に30m程ブッ飛ぶプスーカに、ドキルクは傘を振りっぱなしの状態で言った。


「安心しろよ。峰打ちだ」


 最早何も言うまい。



「プスーカ!!クソッ!蝙蝠眼鏡てめぇ、よくもプスーカを!!!」

 仲間をKOされ、コヴィンが激昂する。

 だが、そんなコヴィンをざんぎり頭が諌めた。

「落ち着けコヴィン。怒ったところでどうにもならん」

「ジャ、ジャギィ・・・。すまねぇ」

 ざんぎり頭改めジャギィの言葉に、コヴィンは我に帰り、詫びる。

 ジャギィは頷き、そしてコヴィンに言った。

「分かれば良い。・・・では、逆転と行こうか。コヴィン、頼むぞ」

「合点だ」

 コヴィンがそう了解したのを確認すると、ジャギィはドキルク達の方を向き、そして目を閉じて呟く。


「心象認識『変械(トランスフォーメーション)』」


 瞬間、ジャギィの体が青く発光した。ダイゴが思わず光を右手で阻む。

「うおっ!?眩しっ!!」


 半秒後に光が止んだのを察したダイゴは、右手を眼前からどけて驚愕した。

「!?ざ、ざんぎり頭が居ねぇ!!?」

 

 ジャギィが先程居た場所。そこには、ジャギィの姿は無く、代わりに"赤茶色をしたマガジンの装着されていないアサルトライフル"を持ったコヴィンの姿が有った。


 目の前の光景に呆気に取られているダイゴを無視し、コヴィンは背負っていたリュックサックからバナナの様な形をした黒いマガジンを取り出して、その赤茶色のアサルトライフルに装着する。

 それを見て、ドキルクは背中の羽を折り畳みながら、ダイゴに言った。

「・・・ダイゴ、俺の後ろに隠れろ」

「へ?そりゃまた何で」

「早くしろ!!」

「オォォッス!!!!」

 ドキルクに怒鳴られ、ダイゴは慌てふためきながら、言われた通りにドキルクの後ろに隠れる。

 コヴィンがアサルトライフルをドキルク達に向け、乱射したのはその直後だった。


 弾丸が自分に着弾する前に、ドキルクは『ドキルク-prs』を前方に向けて開く。prsは盾となり、吹き荒れる弾丸の嵐から、ドキルクとその背後に居るダイゴを守っている。

 prsが弾丸を弾く音がひっきりなしに聞こえる中で、ドキルクは舌打ちした。

「チッ!普通の弾丸と比べて、傘越しに腕に伝わる衝撃が段違いにデカイ!!これが心象の効果か!?」

「心象!?この弾丸がっスか!?」

 ダイゴがそう問うと、ドキルクが声を大きくしながら答える。

「違ぇよ!!心象は"弾丸"じゃねぇ!!あの"錆みてぇな色した銃本体"だ!!」

 ダイゴは弾丸の衝撃をドキルク越しに感じながら、おっかなびっくりといった様子で問う。

「あのマシンガンが!?で、でも一体誰の心象なんスかあれ!?」

「おそらくはさっきのざんぎり頭の心象だ!!今あの野郎が居ないのを見るに、どうやらあの銃はざんぎり頭が変身したもんらしい!!」

 ドキルクの言葉に対し、ダイゴが叫ぶ。

「ん、んな馬鹿な!!?幾らなんでも突飛過ぎるっス!!」

 しかし、ドキルクはそんなダイゴに怒鳴った。

「それが心象だ!それが死界だ!!俺達が全身浸かってる世界はなダイゴ!お伽噺より奇々怪々なんだよ!!」

「た、確かに・・・」

 その言葉に、ダイゴは納得したように頷く。しかし、直後にあることを思い出して慌ててドキルクに言った。

「て、てかドキルクさん!!!!?マリオさんが!!!!マリオさんがまだ傘の外に!!!!!!このままじゃマリオさんがぁ!!!!!!!!」

「慌てんな!マリオさんなら大丈夫だ!!傘の外を横目で見てみろ!」

 ドキルクにそう言われ、ダイゴは蜂の巣になるマリオを想像し、絶望で涙目になりながらも、横目でマリオの居た方向を見る。





「オーホホホ!!!!痒い痒い!!こんな小粒じゃ全然感じないわよ!!!」





 そこには、弾丸の雨あられの中を高笑いしながら仁王立ちするマリオの姿が在った。その逞しい肉体は、弾丸に穿たれるどころか、逆に弾丸を跳ね返していた。しかも、跳弾してダイゴ達に当たらないよう絶妙な位置取りをしながら、である。


 その様子にポカンとなるダイゴに、ドキルクは言う。


「・・・ちなみに、現在マリオさんは絶賛心象不使用中だ」

「え!?じゃ、じゃあ今弾丸を跳ね返してるのは・・・」

「小細工無しの、純粋な筋肉だ」

「何でだろう凄ぇ納得!!」

 当たり前の様に真顔でそう言うドキルクに、ダイゴは心からシャウトした。


  そんなやり取りをしていると、突然弾丸の嵐が止んだ。

「?弾が飛んでこなくなったっスね」

 そんなことを呟くダイゴに、ドキルクが言う。

「弾切れかどうかも分からないこの状況じゃ、まだ安心出来ねぇ。もう少し様子見るぞ」

「ウス」


 二人がそんな会話をする中、コヴィンは焦っていた。

(弾切れか・・・いや、そんなことはどうでも良い。リュックの中にはまだたんまり弾はあるしな・・・。問題は、その弾丸じゃあいつらにダメージを与えることが出来ねぇってことだ・・・)

【どうしたコヴィン。弾の補給はしないのか】

 コヴィンがそんなことを考えていると、アサルトライフルからジャギィの声が聞こえてきた。しかし、ジャギィはアサルトライフルが喋ったことには別段驚くことなく、その声に返答する。

「アサルトライフルじゃあアイツらにゃダメージを与えることは無理っぽいぜ。ピンクアフロなんか生身で弾丸を弾きやがった」

【成る程・・・。ならば、普通の弾丸を俺の心象で強化したところで、意味は無いようだな・・・】

 どうやらジャギィの心象の効果は、『自分が武器に変形し、その武器に入れた弾丸の威力を上げる』というものらしい。アサルトライフル(ジャギィ)は、少し間を置いた後、言葉を続けた。

【・・・コヴィン。これはもう"アレ"しか逆転の術は無いみたいだぞ】

「だ、だがよ・・・、"アレ"をするにはプスーカの心象が必要不可欠だぜ?プスーカがダウンしちまってるこの状況で、どうやって"アレ"をするんだ・・・?」

【・・・この作戦の直前に、お前に俺の"変若水(をちみづ)"を預けただろ?それをプスーカに使ってやってくれ】

 アサルトジャギィの声がそう言うと、コヴィンは目を見開き、言った。

「っ!?お前、良いのかよ!!?貴重な"変若水"を自分で使わなくてよぉ!!」

 しかし、アサジャギの声は静かに答える。

【構わない。俺達全員が捕まることに比べれば、安い出費だ。そうだろ?】

「っ!!・・・チッ、全くお前って奴は!・・・後でプスーカに何か奢ってもらえよ!!良いな!!」

 そう言うと、コヴィンは自分のリュックサックから、"栓のされた、水色の液体が入った透明な小瓶"を取り出し、遠くで伸びているプスーカの所まで走った。


「プスーカ!変若水だ!飲め!!」

 目的地にたどり着いたコヴィンは、直ぐに手に持っている小瓶の栓を開け、中身をプスーカの口に流し込む。

 すると、流し込んで三秒と経たずに、咳き込みながらプスーカが目を覚ました。

「ゲホッ、ゴホッ!あれ、ここは・・・」

「寝惚けてる時間は無いぜプスーカ!早く立て!!」

 コヴィンの言葉に、直ぐにプスーカは自分の置かれた状況を思い出す。そして、コヴィンの方を向き、言った。

「コヴィン・・・ジャギィ・・・。・・・ジャギィがそうなってるってことは、"アレ"をするんだな?」

 コヴィンは頷き、アサジャギをプスーカに渡す。

【準備は出来たな?じゃあ、変形するぞ】

 アサジャギはそう言うと、再び光を放つ。


 半秒経ち光が止むと、そこにはアサルトライフルの代わりに、何やら赤茶色をした長方形の大砲が存在していた。大砲には取手が付いており、コヴィンはそれを逆手に持っている。よく見れば、その取手にはスイッチのような物が付いていた。

 ジャギィの声が聞こえる。

【プスーカ。"パイルバンカー"の使用経験はあるな?】

「あるも何も、パイルバンカーなんて俺達ぐらいしか使わないんじゃねぇか?死界広しと言えどよ」

 プスーカは苦笑いしながらそう言うと、掌から再び『釘』を出し、大砲に釘の耳の方から入れた。大砲の口径はプスーカの釘の耳と同じくらい大きさだったらしく、釘は筒にすっぽり入った。その状態で、プスーカは"パイルバンカー(ジャギィ)"をドキルク達の傘の方に向けて言う。

「・・・"心象"を阻むぐらい固い傘もよぉ・・・、"心象で強化された心象"相手じゃ、ちょいと分が悪いんじゃねぇかぁ!!?」

 



「・・・アイツら、何か仕掛けてくるみてぇだな・・・」

 ドキルクは傘を構えながら言う。ダイゴはそんなドキルクに、慌てながら言った。

「いや、そんな落ち着いてる場合じゃ無いっスよ!!何かさっきの青髪ロン毛も復活してるみてぇだし!!」

「大丈夫だ。こっちにはマリオさんが居る」

「何でだろう!凄ぇ説得力!!」

 再びシャウトするダイゴを他所に、ドキルクは隣に居るマリオに呼びかける。

「じゃあマリオさん。お願いします」

「任せなさい!!」

 マリオは威勢良く返事をすると、ドキルクの傘の前に、と同時にパイルバンカーの射線上に立ち塞がった。




「何だぁ?ピンクアフロ野郎が傘の前に立ちやがったぞ?」

 プスーカが訝しげに呟く。

「よっぽど自分のタフネスに自信があるみてぇだな」

 コヴィンが続けて呟く。

【あるいはこの俺(パイルバンカー)が、旧来のパイルバンカーと同じようにリーチが絶望的に短いと思っているのかもな】

 パイルジャギィが呼応して呟く。

 しかし、プスーカは威勢良く言った。

「まあ立ち塞がった理由が何だろうと関係ねぇ!!どちらにせよ、あのアフロごと蝙蝠眼鏡が貫かれる未来は変わらねぇからな!!」

【それもそうだな。ではプスーカ、砲火(う)て】

 その言葉を聞き、プスーカは待ってましたとばかりに、パジャギの取手のスイッチを押す。


 瞬間、ドオンッという凄まじい轟音と共に、巨釘が鈍光の尾を靡かせながら、高速で砲口から射出された。


 マリオを穿たんと高速で迫る釘先。しかしマリオは怯むことなく、仁王立ちのまま、威風堂々と自らの心象を叫ぶ。



「心象認識『鋼鉄(スチール)』!!」



 それと同時に、鉄釘がマリオの体に深々と突き刺さる"筈だった"。


 その時、不思議な事が起こった。


 鎧の類は何一つ纏っていないマリオの体から、ギイィッン・・・、という甲高い金属音が鳴り響いたのである。


「・・・おいおい・・・・・・、冗談・・・キツいぜ・・・」

 プスーカは、顔を引き吊らせながらそう漏らす。何故なら、


「あら、もう終わり?拍子抜けね」


 マリオの体に当たった鉄釘が"曲がって"いたからだ。


 ドキルクの後ろに居るため、マリオの姿を見ることが出来ないダイゴが言う。

「な、何かデッカイ金属音がしたっスけど、マリオさん大丈夫っスかね・・・」

「心配無いさ。今の音を聞くに、どうやら敵の攻撃をマリオさんが心象で受け止めたみたいだしな」

 そう言うドキルクに、ダイゴは問う。

「・・・ちなみに、マリオさんの心象って何なんスか?」

「ああ、マリオさんの心象は『鋼鉄(スチール)』って言ってな。自分の体を文字通り"鋼質化"して、防御力を高めるって効果だ。ちなみに服に隠れてて見えないが、恐らく今のマリオさんの胸板は鈍色の鋼と化していると思われ」

 ドキルクがそう答えると、ダイゴは首を傾げた。

「・・・鋼質化ってことは、体を鋼鉄にしちまうって事っスよね?んじゃあ、関節とかも固まっちまって、上手く身動き取れなくなるんじゃ・・・」

 だが、その問いにドキルクは軽く言う。

「そこらへんは大丈夫だ。何せマリオの心象は『全身を鋼質化しても、元の柔軟性は失われない』っていう特徴を持っているからな」

 ダイゴはその突飛さに、ぽかーんとして言った。

「・・・何でもありっスね」

「何でもありだ」

 ドキルクは即答した。


 マリオは釘先が当たった胸筋辺りをポリポリ掻きながら続ける。

「じゃあもうそちらの切り札も出ちゃったようだし、そろそろ全員まとめて逮捕しようかしら」

 その言葉を聞き、プスーカ達四人+パイルバンカー(ジャギィ)は冷や汗を掻いた。


 しかし、そんな圧され気味の空気を打ち破るが如く、プスーカが叫ぶ。

「仕方ねぇ!俺とジャギィがここでこいつらを食い止めるから、その間に他の奴等は全力でDP抱えて逃げやがれ!!」

 その言葉を聞き、コヴィンが言った。

「い、いやいや!それだとテメェらが!!」

「ハンッ!俺達を嘗めんじゃねぇよ!!あんな奴等、直ぐに蹴散らしてやらぁ!!だから安心して逃げろ!!」

 だが、その言葉に対し、今まで沈黙を貫いていたボルーピンが口を開く。

「・・・俺もここに残るぜ」

 プスーカはその言葉に目を見開き言った。

「ハ、ハァ!?ボルーピンてめぇ何言って」

「向こうは三人。だったら、こっちも三人で行くべきだぜ。そうだろ」

「てめぇ!俺達だけじゃ不安だってのか!?」

「そうじゃないぜ。寧ろ逆だぜ。お前らが居るから俺もここに残るんだ。・・・誰だって、勝てる勝負しかしたくないもんだぜ。違うか?」

 そう言って、プスーカを真っ直ぐに見据えるボルーピン。

 プスーカはその眼差しを前に、何も言えない。そんなプスーカとボルーピンを見て、コヴィンが溜め息を吐いた。

「・・・全く、どいつもこいつもカッコつけやがって。だったら俺も残っちゃうもんねー!だって俺カッコつけだし!・・・・・・おいスミオ」

「は、はいっ!!」

 赤メッシュの少年、スミオは慌てて返事をする。コヴィンはそんなスミオを見据え、言った。


「・・・頼んだぞ」


「・・・!!はい!!」

 スミオはコヴィンの言わんとしていることを察したのか、そう力強く返事をすると、コヴィン達のビニール袋を背中のリュックサックに入れ、その場から駆け出した。


「あっ!!逃げた!!」

 マリオがスミオが背中を向けたのを見て叫ぶ。その言葉を聞き、ダイゴは

「な、何ですとぉ!!?」

 と言いながら、傘から飛び出した

「あ、おい馬鹿!大人しくしてろ!!」

 そんな事を言いながら、ドキルクは傘を開いたまま立ち上がる。


 しかし、その瞬間、三人に向かって、金色の無人バイクの群れが突っ込んできた。

「ぼぅぶっ!!!」

 ダイゴは反応できず、バイクの一台にはねられる。

「ダイゴっ!くそっ!!」

 そう言いながらドキルクは突っ込んでくるバイクを全て傘で弾き飛ばす。しかし、

「がら空きだぜ!!蝙蝠眼鏡!!」

 そんな叫びと共に、プスーカがドキルクに向かって、パイルバンカーで釘を放ってきた。

「危ないっ!」

 そう叫びながらマリオがドキルクを庇おうと前に立ち塞がる。だが、そんなマリオに対し、ドキルクは叫んだ。

「マリオさん!その釘は偽物です!!」

「えっ!?」

 マリオがそう呟くと同時に、釘がマリオの体を"すり抜ける"。瞬間、マリオは全てを理解した。

「っ!"偽者(フェイク)"!!」

 謀られた、と言った様子で、目の前のプスーカの"幻影"が消えていくのを見ながら呟くマリオの耳に、コヴィンの声が聞こえる。

「ご名答!!蝙蝠眼鏡にゃ見破られるが、テメェにゃどれが本物かなんて、実際に当たらなきゃ分かんねぇだろ!!」

 そう言いながら笑うコヴィンに対し、マリオは、

「・・・そうね。確かに、私には貴方の心象がかなり厄介だわ。だから」

 と言いながら、向かってきた金色のバイクのハンドルを片手で鷲掴みにして、


「貴方から倒す」


 コヴィンに向かって、それをぶん投げた。


「え」

 唐突に高速で飛んできたバイクに、コヴィンは身動きを取ることも無く激突する。

「がはぁ!?」

 コヴィンは、そのまま10m程吹っ飛んだ後、地面にその身を強かに打ち付けて動かなくなった。

 プスーカが叫ぶ。

「コヴィンっ!!」

「安心なさい。死なない程度に手加減はしといたわ」

 マリオがそう言うと、プスーカはマリオの方を睨めつけ、パイルバンカーに釘をセットして、放った。

「だから効かないってのに」

 マリオは一瞬で鋼化し、釘を再びねじ曲げる。そして、近くに居るドキルクに言った。

「ドキルクちゃん!無事!?」

「俺は大丈夫です!」

 ドキルクは何時の間にか空中に移動し、空を駆けながら突っ込んでくるバイクの群れを叩き落としている。

 マリオはその様子に安心した後、ダイゴに呼び掛けた。

「ダイゴちゃん!!大丈夫!?バイクにはねられてたけど!!・・・・・・・・・ダイゴちゃん?」

 ダイゴから返事は無かった。慌てて辺りを見回すマリオ。しかし、何処にもダイゴの姿は見当たらない。




「まさか・・・!ダイゴちゃん、一人であの少年を追いかけて・・・!!」


 マリオは、額に汗を浮かべて言った。














 

 





前に放送された「かぐや姫の物語」と言うアニメを録ったきり、未だに見てません。そろそろ見ようかな、帝のアゴも気になるし。

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