腹が『張るほど多く喰う』的な?
腹八分目が長生きに繋がるらしいですね。これから心がけます。
※
地獄にて。
「コヒュー・・・コヒュー・・・」
ダイゴは再び床に大の字になって倒れていた。しかし、現在のダイゴは先程とは違い、全身に大粒の汗を掻いており、疲労による苦しそうな呼吸をしている。
だがしかし、ダイゴはその状態で、
「・・・ぐへ、ぐへへ・・・」
と、いつもの下衆な笑いを漏らした。その様子は誠に不気味である。
ダイゴは下衆笑いを漏らしながら呟いた。
「・・・やっと・・・手に入れたぜ・・・」
「何を?」
「ファッ!?」
呟きに対する唐突な返答に、思わずそんな滑稽な反応をするダイゴ。そのままガバッと上半身を起こすと、視界にマリオの姿が入った。
「朝方ぶりね。ダイゴちゃん」
「あ、マリオさん!」
見知ったその姿に安心したのか、ダイゴの表情が驚いたアホ面から元のアホ面に戻る。
そんなダイゴに、マリオは問うた。
「話は戻るけど、何を手に入れたの?その滝のような汗に関係はあるのかしら?」
ダイゴは、待ってましたとばかりに目を輝かせて言った。
「ぐへへへ、よくぞ聞いてくれたッスね!実は俺、必殺技を手に入れたんスよ!」
若干食い気味なダイゴに、マリオは笑って返す。
「あら、良いじゃない!ちょっと見せてくれない・・・と言いたいところだけど、ダイゴちゃん疲れてるだろうし、それは昼御飯の後にしましょうか」
「い、いや!流石に二日連続で奢ってもらうのは申し訳ないっス!」
家に泊まっておきながら何をほざいているんだこのハゲは。しかし、そんな今更な言葉とは裏腹に、ダイゴの腹からグウウウゥゥゥ!!!!という爆音が鳴り響いた。
「・・・おぅふ・・・」
ダイゴは決まりが悪い表情を浮かべながら、利かん坊な腹を恨む。
マリオは、そんなダイゴの様子に吹き出した。
「ぶふっ!!あはは!ダイゴちゃんは本当に面白い子ね!なんだか見てて安心するわ!!」
「え?そ、そうっスか?ぐへへ、照れるっス・・・」
そう言いながらダイゴは頬を赤らめ頭を掻いた。無論、その様子は気持ち悪い。
しかし、そんな気持ち悪いの権化と化しているダイゴに、マリオは笑って言った。
「本当に、ダイゴちゃんは今の私にとって清涼剤よ・・・。はぁ、アッシュもダイゴちゃんみたいにならないかしら・・・」
(俺みたいなアッシュさんか・・・。・・・おっし!全く想像できねぇ!)
そんなことを考えているダイゴにマリオが言う。
「だから私がダイゴちゃんに奢るのは、ダイゴちゃんが私の心に安らぎを与えてくれてるお礼ってことで良いじゃない!さ、食べに行きましょう!」
「そ、そうっスか?じゃ、じゃあまたまたお言葉に甘えて・・・」
こうして、マリオの言葉もあり、ダイゴは自らの空腹に屈したのであった。
※
地獄から退室し、獄番からも出たダイゴとマリオの二人は、ゲイバーMARIのある繁華街ほどでは無いが、そこそこ都会的である街中を歩いていた。
「マリオさん。今回の昼飯も死者の家っスか?」
歩いている道が、昨日行った死者の家の方向へ続いていた為、ダイゴはそんなことをマリオに問う。
しかし、マリオは首を横に振って答えた。
「いや、今日は違う店にしようと思っているのよ」
「違う店?」
「ええ。その店はメニューが豊富で味も良く、その上料金も安くってね。それに加えて獄番からも近いから、良く職員の子達がお昼時に行ってるのよ」
「へー!スッゲー良い条件の店っスね!!」
マリオの言葉を聞き、ダイゴはそう言いながら期待に胸を膨らませる。
そんな会話をしながら、二人は道を行く。
死者の家を過ぎ、件の繁華街に入り、朝や夜とはまた違った活気に包まれたその街をしばらく進んだ後、マリオが歩を止めた。
「ここよ」
そう言ってマリオが指差す先には、赤い看板の大きな店が建っていた。看板には『喰多張』という文字が、黒い太字で彫られている。
「ここがその飲食店っスかー。何つーか、『立派』って感じっスね!」
もっとマシな表現は無かったのかと感じさせる表現方法をもって、ダイゴはその店を賞賛した。
そんなダイゴに、しかしマリオは笑って言う。
「そうでしょう!ここが獄番職員御用達の飲食店、『飯屋・喰多張』よ!」
「す、スッゲェ店名・・・」
現世なら規制がかかりそうな店名に、ダイゴは少しばかり気圧されるも、マリオに付いていく形で店に入っていった。
我ながら良い店名だと思います。




