脳内ファンタジー。あるいはドリーマー。
結構格好良いサブタイトルじゃありませんかコレ?
「初撃は受けてやるよ!!オラ!打ってこい!!」
マイティが掌をクイクイッと引き、ダイゴを挑発する。
「お、オッス!!」
ダイゴは一瞬尻込みするも、マイティの顔面を全力で殴り抜いた。
しかし、
「・・・おい、遠慮してんじゃ無ぇよ」
マイティは右頬に拳をめり込ませながらも、微動だにしない。
(く、首の力だけで、受け止められた・・・!?・・・分かっちゃいたが、ここまで力の差があんのかよ・・・・・・)
ダイゴは改めて相手の力の強大さを実感し、冷汗を掻きながら激しく動揺する。
そんなダイゴに、マイティが言った。
「折角の地獄だ。心象使え心象。あんだろ?テメェにも心象がよ」
マイティの台詞を聞き、離れた場所でニゾウとヒクソンが会話する。
「そういえば、ニゾウ殿は今朝の部隊長の集まりに出ておられませんでしたが、ダイゴの心象については既にご存じですかな!!!!?」
「まあ、昨日色々あってね〜。とはいえ、知ってるのは効果だけで名前は知らないけどね〜」
地獄以外で獄番内にて心象を使うことは禁止されているので、"昨日アッシュとダイゴが組手をしており、その際にダイゴが心象を使った"、とは言えないニゾウであった。
ヒクソンが言う。
「成る程、では僭越ながら我輩がダイゴの心象について少々説明させて頂きます!!!!ダイゴの心象は『強力』!!!!効果は身体強化ですぞ!!!!!!!!」
「なーるほど、それがテメェの心象か・・・」
ヒクソンのバカでかい声が、マイティの耳に届いた。そのまま続ける。
「『身体強化』・・・ショウタロウの『脚力強化』の範囲が広がったようなもんか・・・。・・・心象認識による力の伸び代は『蹴脚』に劣るな・・・」
「え、そうなんスか!?」
ダイゴが初めて聞くその事実に驚愕する。
マイティが答える。
「強化系の心象ってのはな、テメェの様な『汎用型』よりもショウタロウみてぇな『一点集中型』の方が力の伸び代が高いんだよ。ま、その分応用が効かねぇから、一概にどっちが優れてるとは言えねぇがな」
「へー・・・」
突然の心象講習に聞き入るダイゴ。意外と戦闘状態で脳ミソがラリってるマイティでも、そんな話は出来るらしい。
「さて、じゃあ『マイティ先生の?でも分かる心象講座』も終わったし、早く心象使えよ」
マイティがダイゴを急かす。
「う、うす」
ダイゴは慌てて心象認識を開始する。
(強い俺強い俺強い俺強い俺!!!!)
ダイゴの雰囲気が変わった。
「・・・なあダイゴ。それがテメェの全力か?」
「・・・やっぱり、力が伸びて無いっスか?」
おずおずと聞くダイゴに、マイティが首を縦に振る。
「ああ。少し雰囲気が変わった感じはあるが、身体能力の向上は僅かしか見られねぇ。・・・なあダイゴ、テメェもしかしてビビってんのか?」
「え、ビビってるのって、心象に反映されるんスか!?」
「当たり前だろ。縮み上がってたら良い魂気なんて生成できるわけが無ぇじゃねぇか。・・・で、ビビってんのか?」
「うぐ・・・はい。正直・・・」
伏し目がちにダイゴは頷いた。
そんなダイゴに、マイティが問う。
「・・・テメェ、今までに心象使って、一度でもスゲー力の伸びを感じたことはあったか?」
「・・・オス」
ダイゴがゼインと戦った時の事をマイティに話す。すると、マイティは言った。
「・・・成る程、つまりテメェは火事場の馬鹿力よろしく、死にそうになってから心象が上手く作用したんだな」
「そういうことに、なるっスかねぇ?」
ダイゴは首を傾げながらも、そう溢す。
すると、マイティが言った。
「・・・じゃあ話が早いな」
「え?どういうことっスか?」
「つまりテメェは追い詰められた方が力が出やすいんだろ?だったらよ」
マイティはそこまで言うと、両掌から黒い鎖をシュルリと出した。
「テメェを満身創痍にすりゃあ、テメェの本当の全力が見れる訳だ」
「ええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!??????」
ダイゴは、これまでに無い強烈な生命の危機感に、只々悲鳴をあげる事しか出来なかった。
マイティがダイゴにジリジリとにじり寄ってくる。ダイゴは慌てて叫んだ。
「ストップ!!タンマ!!!ザ・ワールド!!!!ちょっと待って欲しいっス!!」
「問答無用!!安心しろ!!ちょいと骨を数十本折るだけだ!!」
「すすす数十本!?安心要素0なんスけど!!?むしろ不安が加速したんスけど!!!?」
「人間には215本も骨があるんだ!!200本ぐらい何だよ!!!」
「いやそういう問題じゃって桁が増えてるッフウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!?」
そんなアイルビーバックな会話を交わしながらも、二人の距離は縮まっていく。
「待って待って待って止めて止めて止めてギブギブギブギブ!!!!!!!!」
最早半狂乱で許しを乞うダイゴ。
しかし、そんなダイゴに対して、マイティによって無情にも黒い鎖は降りかぶられる。
ダイゴは思わず目を瞑った。
(もう駄目だ!お仕舞いだぁ!!)
「・・・なんてな」
「・・・え・・・・・・?」
しかし、その鎖が降り下ろされる事は無かった。
呆然とするダイゴに、マイティが言う。
「ジョークだジョーク。最初からテメェを満身創痍ににする気なんざ、さらさら無ぇよ。・・・ま、当たるギリギリのところでお前が覚醒する事を少しでも期待して無かったっつーと嘘になるがな」
「そ、そうっスか・・・ホッ・・・」
安堵の溜め息を吐くダイゴ。その目には涙が滲んでいた。
そんなダイゴの姿を少しだけ見た後、マイティが静かに切り出す。
「・・・なあ、ダイゴ」
「ひえ!?な、なんスか!!?」
先程の事もあり、体をビクッと硬直させるダイゴ。
そんなダイゴの様子を見て、マイティは苦笑いして言った。
「そうビビんなって、ちょいと簡単な質問をするだけだ。・・・テメェ、人を殺す覚悟はあるか?」
「え!!?い、いやいやいや!!そんなもん無いっスよ!!!!?」
猛烈な勢いで首を横に振るダイゴ。
そんなダイゴにマイティが続ける。
「・・・ま、そうだよなぁ。それが普通だ。・・・でもな」
「獄犬じゃ、そんなのは通じねぇんだよ」
「っ・・・!」
マイティの静かながらも、迫力のある言葉に息を飲むダイゴ。
マイティはさらに続ける。
「そりゃ確かに、悪人を皆皆ぶっ殺すってのはやり過ぎだ。だがな、悪人を一人も殺さないってのは、やり過ぎ云々の前に、『不可能』なんだよ。少なくとも"こんな仕事"やってる限りな」
「っ・・・・・・・・・・・・」
押し黙ってしまうダイゴ。そんなダイゴに、マイティが言う。
「・・・何、お前が間違ってる訳じゃねぇよ。繰り返し言うが、普通はそうだ。・・・でもな、この仕事は、"重傷必至の組手程度でビビってちゃ"、話にならねぇんだよ」
―お前はこの仕事には向いていない―ダイゴには、マイティの言葉がそう聞こえた。
「・・・言い過ぎたな、済まない。・・・じゃあ、そろそろニゾウさんとヒクソン隊長の組手に移るか」
いつの間にか通常時に戻っていたマイティが謝罪し、隊長二人を呼びにダイゴに背中を向けた。
その時だった。
「マイティさん。待って欲しいっス」
「・・・?どうした」
ダイゴがマイティを呼び止めたのだ。
振り向いたマイティに、ダイゴは続ける。
「・・・確かに、俺には人を殺す覚悟は無いっス」
―獄犬の仕事はな、そんな悪共の喉笛を咬み切ることなんだよ―
「それに、見ての通りかなり弱いっス」
―男たるもの、強くなくちゃいけないよ―
「・・・それでも・・・、だとしても・・・っ」
―ダイゴちゃんなら、どうする?―
「俺は、俺のやり方でこの世界から悪を無くすっス!!」
「・・・殺す覚悟も無いのに、出来るのか?そんな事が」
マイティはダイゴの言葉に、鋭い眼光で返す。
しかし、ダイゴは怯まずに言った。
「出来るっスよ!!この世界の悪人全員、更正させれば良いんス!!!」
マイティはその甘ったるい言葉に、眉間に皺を寄せながら言った。
「・・・寝言は寝て言えよ。そんなガキの駄々みてぇな甘言が、現実に通じる訳ねぇだろ」
「だったらその現実が折れるまで、みっともなく駄々を捏ねるまでっス」
地獄を、沈黙が包んだ。誰も口を開かない。ダイゴも、ニゾウも、ヒクソンも、そして、マイティも。
しかし、数秒後、その沈黙は簡単に破られた。
「・・・クククッ、キヒヒヒッ」
マイティだ。マイティの喉から漏れる笑いが、沈黙を切り裂いたのだ。
「・・・え、えーと、マイティさん?だ、大丈夫っスか?」
突然のことに、ダイゴが心配そうにマイティに問う。
マイティはそれに笑いながら答えた。
「ククク・・・いやぁ、悪ィ悪ィ。あまりにもぶっ飛んだ世迷い言に、思わず笑っちまった」
「うぐっ・・・スンマセン・・・・・・」
ダイゴはシュンとなりながら謝罪する。
「・・・ここまで言われて、尚折れねぇとはな。・・・テメェよぉ。その甘ったれた理想、曇らせんじゃねぇぞ」
「・・・え?」
ダイゴは、マイティの言葉に目を丸くした。
「・・・地に足つけて、物事を合理的に考えて、現実に順応して、んでもって理想に足を掬われて這いつくばってる奴を指差して笑うことなんて、高二病患者にだって出来る。・・・だが、這いつくばってでも理想を追い続けんのは、血迷った奴にしか出来ねぇ。・・・そして、個々の理想の形はどうであれ、"ここ"にはそんなクレイジーな奴しか居ねぇ」
そこでマイティは言葉を一度止め、ダイゴを真っ直ぐに見据える。
ダイゴは少し動揺しながらも、その瞳から目を逸らすことなく、見据え返した。
そんなダイゴに、マイティは少し笑って言った。
「お前、この仕事に向いてるよ」
「・・・!!ウスッ!!!!ありがとうございますっス!!!!」
先輩の御墨付きに、ダイゴは今度は嬉しさで瞳を潤ませながら頭を下げた。
その様子に、マイティも満足そうに頷き、言う。
「・・・さて、じゃあ今度こそニゾウさん達に変わるか」
マイティが再び背を向けようとする。
「・・・マイティさん!」
しかし、それは再びダイゴに止められた。
「え?な、何だ?」
再び振り返って問うマイティに、ダイゴはニカッと笑って言う。
「組手、しましょうっス!!」
「えぇ!?いや、でもお前」
マイティが少し戸惑うが、ダイゴは続けた。
「大丈夫っス!!もう、ビビって無いっスから!!!」
「・・・っへへ。どうしたんだ?急に勇みやがって」
「・・・俺の理想は、かなり高いっス。それこそ、手を伸ばしても届かねぇぐらい・・・。・・・でも!だったら背伸びするまでっス!!それでも届かなきゃ跳び跳ねるまでっス!!無い知恵絞って理想へ突っ走ってやる!!その為の一歩が今だ!!!」
ダイゴは、決意と共に叫んだ。
「これが俺の全力っス!!おおおおおおおお!!!!!!!!」
イメージすんのは、現実を踏破するくれぇ強い俺!!!!
「・・・ケケッ。こりゃあ儲けもんだ。理想への覚悟を聞けただけじゃなく、その覚悟の強さを心象を通して見れるんだからよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
マイティは心底嬉しそうに、雰囲気がガラリと変わったダイゴに叫んだ。
「どぉらああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
そんなマイティに向かってダイゴは気合いを発しながら突っ込む。その突進は、ダイゴが今までやってきたどの突進よりも鋭かった。
「・・・おーいダイゴー。大丈夫かー。・・・参ったな、心象は使わずに向かえ撃ったんだが・・・」
三秒後、そこには鮮やかな右ブローのカウンターを顔面にモロに喰らって伸びているダイゴと、それを見下ろすマイティの姿があった。
「・・・ま、今後の成長に期待だな・・・」
鼻血を出しながら白目を剥くダイゴの姿に、マイティはポツリと溢した。
前書きで訳分かんないこと書いてすいませんでした。




