白衣ってなんか格好良い
でも同じ羽織るものなら個人的には祭りのハッピの方が好きです。
「じゃ〜次は獄牢だね〜。付いてきて〜」
「オッス!」
ダイゴは、ニゾウの後を追う形で、青い廊下を進む。
その道中だった。何者かが、後ろからニゾウを呼び止めたのである。
「あら? ニゾウさん?」
男の声だ。
「ん〜? どうしたんだ〜い? キン坊〜」
ニゾウはそう言ってから、その声の主に振り返る。ダイゴもそっちを見た。
そこには、くたびれたクリーム色のズボンと黒い襟シャツを着て、その上から白衣を羽織った、黒髪に、白髪が少し混じった男が居た。
身長は180センチで、体格は痩せ型。髪型はボサボサの短髪で、顎には無精髭が蓄えられていた。その少しばかり身だしなみに無頓着な印象を醸し出している容姿とは裏腹に、その身に纏われている青白い衣はシミ一つない清潔な物であった。胸ポケットには黒いペンが引っ掛けられており、脇ポケットには何かが入っているらしく、その部位が小さく長方形型に盛り上がっていた。
男はニゾウに対して、笑って言う。
「いや、別に用事はないんですがね。ちょいと近くの坊主頭の少年が気になって」
見知らぬ人間が自分の勤め先の中を歩いているのだから、気になるのも当然であろう。
ダイゴは急いで男に自己紹介をした。
「ダイゴっス! 昨日から獄犬の研修生やってるっス! 宜しくお願いしますっス!」
結構な大声でそう言ったダイゴに、男は目を細めて笑う。
「お、元気が良いねぇ。んじゃあ俺も自己紹介をば。俺は、キンツって言うんだ。爪船で武器作ってる。まあ、宜しく頼むよ」
「え、武器!? な、なんか物騒っスね……」
ダイゴはその男、キンツが言った武器と言う言葉に対してそんな反応を示した。
キンツが再び笑う。
「かかか!! そりゃあ一理あるね。んでも、武器イコール人殺しって訳じゃあ無いから、そう警戒しなさんな」
「で、でも武器は人を傷付ける為にありますし……」
ダイゴ、少しばかりの反論をする。
「でも、そうする事で人を守るのもまた事実。それに、心象みたいに抑止力にもなるしね」
「た、確かに……」
ダイゴ、一瞬で折れる。お前はそれで良いのか。
「んじゃあ、俺ちょいと研究室に用事があるんで行きますね」
「分かったよ〜。じゃ〜ね〜キン坊〜」
相変わらずのニゾウの呼び方に、少し苦笑しながら、キンツは研究室に向かっていった。
それを気配で確認してから、ニゾウは再び歩き始めた。ダイゴもその後を付いて歩く。
「……爪船って武器も開発してるんスねぇ……。何かの道具を作ってるってのは、サレムさんに教えてもらってたから知ってましたけど……」
歩きながら、ダイゴが呟く。
「意外だったかい〜?」
ニゾウが笑いながらその呟きを拾った。
「いや、まあ多少は……」
ダイゴは頬を掻きながら言葉を濁す。
そんなダイゴに、ニゾウは言った。
「……ダイ坊は武器をどう思ってるんだ〜い?」
「え!? ……えっと、怖い物?」
小学生並みの回答をするダイゴ。
「そうかい〜」
それを聞いて、ニゾウは少し考える素振りを見せた後、
「……一つ例え話をするよ〜」
と話を切り出した。
「一人の男が〜、少年に向かって銃を向けている〜。さ〜、少年を助ける為に儂らはどうすれば良い〜?」
「え? えーっと……」
ダイゴは無い知恵を絞って考えるが、所詮無い知恵。答えは出ない。
ニゾウの話は続く。
「銃の製造元を襲撃するか〜い?銃と言う概念を作った奴を責めるか〜い?それとも銃を持ってる奴を今まで野放しにしてきた警察や政府を糾弾するか〜い?」
少し考えた後、ダイゴは答えた。
「……その、銃を持ってる奴を止めるっス」
ニゾウは、その答えに満足そうに頷くと、再び問いを投げ掛ける。
「そうだろ〜? しかし銃を持ってる奴に素手で立ち向かえるか〜い?」
「き、鍛えれば何とか!」
この脳筋野郎。
「鍛練の間に少年は撃ち殺されるだろうね〜」
「ごもっとも!」
この馬鹿野郎。
「だろ〜? じゃあどうすれば良い〜?」
ニゾウは問いを続ける。その様は、見ようによっては誘導尋問に思える。
「……こっちも、……武器を……持つ」
ダイゴは、ニゾウの誘導に乗っかる。
「ご名答〜。つまりそういう事だよ〜、爪船が武器を作る理由は〜」
ニゾウは笑顔のまま、『爪船の武器開発』という、いつ始まったんだか分からない主題の証明を終了した。
「……そうこう言ってるうちに着いたよ〜」
ニゾウはそう言って立ち止まった。どうやら、問答をしているうちに、緑色の渡り廊下を過ぎていたらしい。
ダイゴ達の目の前には、黄色一色の空間が広がっていた。
その色合いに目をチカチカさせているダイゴの方を振り返り、ニゾウは言った。
「ここが『その時、過程や結果はどうあれ、銃を持ち、引き金に指を掛けていた人間』を収容している地獄の牢屋」
ニゾウの話を聞いている最中、ダイゴは視界の端にちらりと捉えた。
黄色い囚人服を着た、顔にタトゥーを入れた男が、黒い手錠を掛けられた状態で、黒い制服を着た少年に、黄色い扉の中へ連行される光景を。
「獄牢だよ〜」
僕は胸ポケットには物は入れない主義です。ズボンのポケットにも出来れば入れたくありませんが、基本的に毎日そこに学生証とかが入った定期入れとかを入れています。




