人の一生は重き荷を・・・何だっけ
銀魂の三巻か二巻辺りにこんな言葉が出ていたような気がします。徳川田なんちゃらっていうおっさんが言った言葉らしいです。
アッシュに対する認識が少しだけ変化したダイゴに、ニゾウが尋ねる。
「ところでダイ坊〜。ダイ坊はもう獄番の中を見て回ったか〜い?」
「え? いや、全く」
ダイゴがそう答えると、ニゾウはにんまりとして言った。
「そうか〜、じゃあ今日は儂と一緒に獄番内の施設の探検でもしよ〜」
「あー、良いっスね!」
ダイゴが目を輝かせる。どうやら昨日から獄番の細部が気になっていたようだ。
しかし、そんな時ダイゴがあることに思い至る。
「あ、でも俺やニゾウさんが居なくなったら人員が足りなくなるんじゃ・・・」
「心配すんな。ニゾウさんが居ないのはいつものことだし、お前なんざ端から人員として勘定してねぇよ」
「うぐぅ!! へへ、来たぜグサリと」
アッシュの言葉により心に傷を負うダイゴ。しかし、
「何か台詞回しがウザいキモい舌噛み切って死ね」
「あぅん」
何故かアッシュの罵声を受けて頬を赤らめるダイゴ。キモい。
「じゃあアシュ嬢の許可も出たから早速探検に行こうかダイ坊〜」
「オス!」
ダイゴはそう言うと、ニゾウに着いていく形で待機室を後にした。
二人が居なくなると、再び待機室を沈黙が包んだ。
そんな中、徐にマリオが口を開く。
「……ねぇ、アッシュ」
「……んだよゴリラ」
その口ぶりから、マリオの神妙な様子を感じ取り、アッシュは少し声のトーンを下げた。
「……あんた、昨日ダイゴちゃんに何か言った?」
「……別に? ただ出来の悪い後輩に犬のいろはを教えてやっただけだぜ?」
「……そう」
そう言うと、マリオは口をつぐんだ。
「……ケッ。……テメェの方があのハゲよか余程マシだぜ。テメェはこの世界が『絵空事』で出来てねぇことを良く知ってるからな」
「……お褒めに預かりどうも。全く嬉しくないわ」
マリオの言葉に、アッシュは舌打ちをする。
「……チッ、やっぱりゴリラだな。全く学習してねぇ」
「芯が通ってるだけよ。あとゴリラ言うな」
マリオは溜め息とツッコミ混じりに言った。
ダイゴは待機室から出ると、ニゾウに付いて獄犬の赤い廊下を歩き始めた。
コツリ、コツリと、ニゾウの錫杖が床を突く音が響く。
そんな音を聞きながら、ダイゴはニゾウに問う。
「そういやぁ、探検するっつっても、まず最初に何処行くんスか?」
ダイゴは獄番内の施設に何があるのかすら知らなかった。その為、先ずは行く施設の名前から知ろうとしたのだ。
その質問にニゾウが答える。
「先ずは『爪船』に行くとしようか〜。ダイ坊は昨日の内に『病床』には行ってるしね〜。で、爪船の後は『獄牢』だね〜」
「分かりました!」
ダイゴの返事を最後に、少しばかり二人の間に沈黙が訪れた。急のしじまに身を委ねながら、ふとダイゴは今朝のマリオの言葉を思い出した。
(……何でマリオさんはあの時、“支えてもらおうとして頂戴”なんて言ったんだ? 言葉の意味は分かるが、行動の真意が分からねえ)
「何か分からないことでもあったのかい~」
(ファッ!?)「ファッ!?」
心の中の声と口から出る声が同化するダイゴ。慌てて彼は問う。
「な、何で分かったんスか!? まさか、ニゾウさんも『理解』のような心象を!?」
ニゾウは涼しげに言った。
「違うよ〜。儂の心象はもっとちんけな物さ〜」
「またまたー、惚けちゃってぇ!」
ダイゴは笑って返す。
「本当さ〜。……あ、そろそろ渡り廊下だね〜」
ニゾウがそう言うのと、ダイゴの視界に渡り廊下が目に入ったのはほぼ同時だった。
紫色の渡り廊下を抜けてダイゴの視界に広がったのは、上下左右の壁や天井を塗り潰す『青』だった。昨日の段階で耳には挟んでいたが、実際に見てみるとその衝撃はやはり凄まじい。百聞は一見に如かずとはこのことだと考えながら、ダイゴは呟く。
「すげぇ……何つーか、落ち着くッス」
「そうかい〜? 儂には良くわからないがね〜」
ニゾウが笑う。
「この青にも何か意味があったりするんスか? 例えば、『幸せの青い鳥』だとか」
「う〜ん。あまり良くは解らないけど、噂によると『理性』を示すらしいよ〜。ま、噂だけどね〜」
廊下を歩きながら、ニゾウが言う。
「へー。何かクール」
そんなことを言いながら、瞳を澄んだ青の中に浸す。心が洗われるようだった。
ダイゴに、ニゾウが錫杖を突きながら言った。
「……その幸せの青い鳥ってのは何だ〜い?」
「え? 知らないんスか? 結構有名な話だと思うんスけど……」
驚くダイゴだったが、直ぐに説明を始める。
「幸せの青い鳥ってのは、ある二人の兄妹が夢の中で幸福の象徴である青い鳥を探して冒険をするっつー話っス! でも、二人が青い鳥を見つけたのは冒険の夢の中じゃなかったんスよ。さて、青い鳥は何処に居たでしょう?」
「これは難問だね〜。降参だよ〜答えを教えて〜」
「それは、現実の家の中っス。実は、幸せの青い鳥ってのは、兄妹が昔から飼ってた鳥のことだったんスよ!」
「……成る程〜、つまり幸せってのは、自分の近くにあるもんだってことだね〜?」
「その通り! さっすがニゾウさん! 理解力が俺とは段違いっス!」
「あはは〜。照れるね〜」
ニゾウは頭を掻いてはにかんだ後、
「でも、儂にはその青い鳥はどうやっても見つけられないかな〜」
と言った。
「え? 何でっスか?」
ダイゴが不思議そうに問う。
ニゾウは困った様に笑って、言った。
「……青色がどんな色なのか、解らないんだよ〜」
その言葉に、ダイゴは驚愕する。
「えぇ!? ど、どういう事っスか!!?」
閉じているのかと思う程に、細められている目を更に細めて、彼は笑った。
「儂、生まれつき盲目なんだ〜」
記憶が曖昧なのは風邪のせいです。文章が曖昧なのは自分のせいです。精進します。




