Trigger No.007 セイムシンクロのエール
我は、傍観者なのだ。
コンニチまで、我には名前はなかった。主人は、"猫ちゃん・お前さん・ねえねえ"とまあ、その日の気分なのか、無責任な呼称を投げつけていたが、我はそれをすべて、聞き流し承諾してきたのさ。
名前など、実体のない記号にすぎない。
主人が珍しく板を置き、ラジオを聴いていた時の事だ。スピーカーから流れてきた、その歌詞の中に、『・・・さよなら シャルル…』
その音が空気を溶かした瞬間、ドキッとすることが起きた。
我は耳をぴくっと動かして、耳を立てた。主人は何か閃いたかのように、「前」を向き、数秒静止した。
狭い部屋の中で、我と主人の視線が、衝突する感じで、理屈や魂の周波数が重なる瞬間。
我ら(人間と猫)はこれを"セイムシンクロ"(意味ある偶然)と呼ぶらしい。
「おっ・・・おまえさん、今言葉に反応したのかい・・・?」
主人はやさしく呟く。
ただの偶然と言いたいところだろうけど、胸の奥に響く残響は否定出来ぬ。
「シャルル・・・・、うーん、いいねぇ、お前、今からシャルルだ」
別れの歌詞の言葉を、出会いの名前にするとは・・・なかなかじゃのう。
だけど、悪くないぞ、【シャルル】高貴な感じがする。
『さて、命名の儀も、無事終わり、これからは大いに、堂々と呼びたまえ』
すてきな名前、さぞ気に入ったぞ。
新しい名前で空気までリセットしたような気分だ。
傍観者は今日から、シャルルと言う名の主役になった・・・のかもしれない。




