Trigger No.006 削るのは食事ではない
我は、傍観者である。名前は寄与されていない。だから、ランダムに呼び名があるのである。
主人が奇妙なことを開始した。それは儀式なのか?、宗教のはじまりなのか、今の時点では不明である。
天の神なる感謝ならば、我も共鳴させてもらいたいものだぜぇー。
夕飯の時間だというのに、主人は、一粒も口にしない。いつもの食器さえ、現れない。
ただ板に集中に集中で、調理される動画を虚ろな目で見つめている。
ん、ハッハーン、もしや、"ダイエット"と言う名の改造に踏み出したようだ。
しかし、この"ダイエット"とは、【健康的な体型と生活習慣を維持すること】という大切な意味が込められていることを、主人はご存じなのだろうか?
我は知っておるぞ。今、ここで、提唱してやりたいぞよ。
自ら飢餓状態を作り、それを「美徳」と信じるイミテーション。食べれるのに、食べないのは、イレギュラーの贅沢でしかない、と我は思えるぞ。
主人は我の毛並みよりも、不健康そうな顔色で体重計と言う名の「判定台」に乗っては一喜一憂する。
『うーん、あと数グラム・・・、増減に命をかけて、大丈夫なのか、削るべきものは、その脂肪より、板を眺めている刻時間じゃないだろうか』
主人はふらふらしながら、"健康のために"と自身に暗示をかけているが、足元は危ない。
「やれやれ、自分の腹を削るのは勝手だが、思考・集中力が乱れ、我の飯まで、共有しないでおくれよ、そのダイエットとは無関係なのだから」
我はゆっくり欠伸をした。
主人は我をぎゅっと抱え、飢えを癒しで埋めようとしているが、埋められるわけはない。癒しは栄養にはならないのさ。
「・・・ねこちゃん、動きが機敏、俺もお前さんみたいになりたものだ」
自分探しの断食も結構結構、動きが鈍くなる前に、我の飯の請求に応えておくれよ。
"ニャオーオー"と甘えた声で鳴いて見せた。
主人は皿に我の飯を、用意した。




