Trigger No.005 円盤の巡回
我は傍観者である。確定している呼び名はまだない。
この平穏な縄張りに新たな"居候"が塔上われた。
主人が"これで掃除の手間が省けるぞ"とルンルンで連れてきたのは、足も手もない、平ぺったい、黒い円盤。黒亀に、一瞬みえた。あっ・・・、お掃除ロボットだった。
何デシベルある?音を立てて床を這う。我は上から見れば横着だ。自分の手足を動かす代わりに円盤に無償で部屋の浄化を託すとは・・・。何事じゃ。
我はいつもと変わらぬ定位置(本棚の上)から、その様子を眺めていた。
円盤はさ、自信満タンに動き回っていたが、やがて脱ぎっぱなしの靴下と言う名の『障害品』に接触すると、プログラムエラーで同じ場所をぐるグルしはじめた。きっと"戻る"という作業を知らぬ、『青い果実』だな。
そのうち、そのぐるぐるから脱出した。
円盤は、椅子の脚のワナに引っかかり、緊急なデシベル音をあげ、停止を余儀なくされた。
主人は慌てて駆け寄り「あっ、ひっかかったのか」と腰を上げて円盤のレスキューをした。
でも、でも、掃除の手間を省く為に買ったはずが、結局見張りが必要ならば、プラスマイナスゼロじゃなかろうか?
我にはどっちゃでもええことなんやけどなぁ~。
やれやれ、もう少し価値ある時間、生成を我は願っておるぞ。我はゆっくり欠伸をした。
「ネコちゃん、ここにいるだけで、空気が、心がおいしくなる気がするよぉ」
救出した円盤を充電台に戻し我を見上げた。
「円盤騒動も無事終わったことじゃ、そろそろ、俺の飯の用意を待っているぜぃ」
円盤の充電音が小さいのに、部屋中に広がる感じがした。
どうだい、傍観はなかなかなものじゃろう?




