Trigger No.004 置き去りのエンプティ
我は、傍観者なのだ。いつか名前を貰えると信じている。
主人は、光る四角の板を広げ、一心不乱に指先を動かしている。どうやら「仕事」と言う名の時間を費やしているようだ。
我は存じておる。その板の右下側面で小さな赤いランプが電気の要求をしていることを。
我は本棚の上から、カウントダウンを開始した。
「あぁ、あと少し、これだけだ、ここだけだあー」とつぶやいた。
あと数秒なのに、主人の意思とは逆方向へ時は進んでいく。
「さん・にぃ・いち」クルクルクル スー パン・・・と画面が幕を下ろし黒くなった。
「えっ・・・、あれ、嘘・・・」充電してなかったんだ・・・。
ありゃー、やっちまったか、今の保存してないけどなぁ。
あたまを抱え込み、顔面喪失。
やれやれ、下書きでもありゃ、打ち込みだけでもよかろうに。
デジタルならではのデメリットじゃ。便利なのか不便利なのか、と質問してやりたい。
主人はしばらく動けずパソコンならぬフリーズの感染だ。
やがて、ゆっくり顔を上げ、
「おまえはいいよな、にゃんこ、充電なんて縁がないからさ」
主人の絶望とは大げさだけど、傍観を続けた。
そんなことより、我の飯はまだなのかい?と皿を覗いた。
主人の手をなめて、合図を送ってみた。
「おおお~なんだ、なんだっ」
我は皿を鼻で動かした。
「ごめん、ごはんか、はい、どうぞ」
こっちも一息つくとするかぁー。




