表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の手紙  作者: NoKKcca
第六章
62/71

60.vs.魔王②

 ――――退廃的な雰囲気の礼拝堂に爆炎が上がる。


「んーっ! はい!」


 先制を取ったのはレミッサの魔法だ。

 魔王が腰掛けていた主神の像ごと吹き飛ばす勢いで、彼女の大雑把で高威力な爆炎魔法が叩き付けられた。


 ドーーン!

 ガシャガシャガシャ――――


 残っていたステンドグラスも吹き飛びぽっかりと壁に穴が開いた。そこから吹き込む海風が室内に立ちこめた砂埃を吹き飛ばす。


「ふっ。人類にしてはやるではないか」


 魔王の姿を探すと礼拝堂の上の方から声が降ってきた。

 充満していた埃が晴れる。魔王の姿は上空にあった。黒いコウモリのような翼を背中から生やし滞空している。


「アイシャ!」

「任せて!」


(まと)え、打ち据えろ! 雷の矢】


 アイシャが雷を付与した金属の矢を魔王に向けて放った。


 シュッ!

 バキッ――――


 魔王は瘴気を纏い黒くなった手刀で矢を叩き折った。

 その時――――


 バチバチバチ!


 雷の魔法が発動し魔王を雷撃が打ち据えた。


 シューっと煙を上げる魔王。ダメージはあまり入っていないようだ。


「今度はこちらからいくぞ!」


【貫け、千の漆黒の羽】


 シャッ、シャッ、シャッ、シャッ――――


「!!」


【守れ、聖なる領域】


 上空を覆い尽くすかのよに放たれた、漆黒の羽が高速で降り注ぐ。ルカは慌てて光の膜により防御する勇者魔法を発動し耐える。


「なんだよあいつ。我に力はないとか言ってなかったか?」


 バルドが愚痴る。

 あんなに広範囲の攻撃はバルドの大楯では、全員を守れない。


 ガツーン!


「くそっ」


 漆黒の羽の雨に紛れ魔王が上空から突撃してきた。

 バルドが盾を合わせ受け止める。金属同士がぶつかったような鈍い音がしてバルドが魔王諸共後ろに吹き飛んだ。


【放つ、聖なる斬撃】

「ハッッ!!」


 背中を見せた魔王にルカが斬撃を浴びせる。

 光の斬撃は当たっても魔の物にしか効果はない、申し訳ないがバルドに当たるのも(いと)わず連続して切りつける。


【纏え、貫け、炎の矢】


 それに合わせるようにアイシャが矢をつがえ炎を(まと)わせ放つ。その矢は寸分の狂いもなく翼の付け根に刺さり爆発した。


「くっ!」


 魔王から苦悶の声が上がる。

 さらに攻撃は続く。


「バルドさーん。逃げてくださいねー。えいっ!」

「ちょっ! 待っ――――」


 バチバチバチバチ――――


 レミッサの聖杖がバチバチと音を立てると、魔王に向けて雷撃が飛んだ。

 バルドは盾を魔王に打つけて大きく距離を取った。


「オレ! 金属鎧だから! 一緒に痺れちゃうから!」


 ギリギリ範囲内から転がり出て叫ぶ。


「ぐぉおおー」


 先ほどよりも強い苦悶の声が上がる。効果があるようだ。

 魔王は一度大きく翼を羽ばたかせると上空に飛び上がった。

 飛び上がると全身を瘴気の(もや)が覆った。傷を負っていた場所に瘴気が集まり、じわじわと傷が治っていく。


「回復するのか……」


 ルカが魔王を見上げながら唖然とする。

 戦ってみた印象としては、以前戦った魔人ウンブラよりは攻撃力は低く思えた。その代わり多才で回復までされてしまっては切りがない。しかも感じる瘴気の濃度は一番だ。


    ●○●○●


 ――――戦闘開始から一時間。


 戦いは硬直状態に入っていた。

 ダメージは与えられるが致命傷を与えられず、回復を許してしまう。

 一方で魔王の攻撃は、範囲攻撃が多いものの一発一発の威力は然程(さほど)なく、こちらも致命傷のような怪我は負っていない。


「くそっ、このままじゃじり貧だ」


 バルドが嘆く。


「私の矢も少なくなってきたわ」

「魔力がちょっと厳しいですー」


 アイシャとレミッサも状況の不利を告げる。

 お互い致命傷はなく戦闘継続は可能だが、身一つで戦える魔王に対してこちらは武器や魔力の損耗がある。


「バルド! 三分引きつけられる?」

「おう! 厳しいお願いだな? だがやってやるよ」

「レミッサ、アイシャ援護をお願い」


 ヤツは瘴気を使って攻撃も回復も行っている。それを大きく削れれば? そう考えたルカは最上級の勇者魔法の発動に入った。

 最上級は隙が大きいため、これまで魔物や魔獣に対してのみ使用してきたが、瘴気を消し去る一点においてはこれしかない。これでダメなら一時撤退だ。


 バルドが引きつけ、レミッサとアイシャが攻撃を加え続ける。回復の暇を与えない攻撃で釘付けにする。

 きっかり三分。ルカの詠唱が完了する。


【浄化す。魔を滅ぼす聖なる領域】


 ピカーーーーー。


「ぐあぁぁ……」


 今までに聞いたことのない魔王の叫び声と共に、黒い翼が掻き消え地面に落下した。

 ルカは剣を杖にしゃがみ込み動けない。


「うぉーーーー!」


 バルドがその隙を逃さないように突っ込み、剣を胸に突き立てた。


 パキッ――――


 何かが割れるような音がした。


「……我は滅ぶのか……」


 静かな魔王の声がした。溶けゆく自らの体を見ながら。


「勝ったのか……?」


 ルカが荒い息を整えながら立ち上がる。


「お前たちの勝ちだ。我が消えれば配下の魔物や魔獣への命令は消えるだろう……さらばだ勇者」


 そう言って、数百年に及ぶ人類と戦争をしてきた魔王は静かに消滅した。

次回更新は6/28予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ