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勇者の手紙  作者: NoKKcca
第五章
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58.魔人ウンブラ

第五章は最終話です。

 ――――戦闘開始から三十分。


【放つ、聖なる斬撃】

「ハッッ!!」


 シュッ――――


 ルカの放った白銀の斬撃は、ウンブラから伸びた腕のような影によって防がれた。

 その影の腕は先ほどから何度も切り裂かれており、若干小さくなっているようにも見えるが致命傷には見えない。


「くそっ! 本体に当たらない!」


 ルカが悪態をつく。

 バルドが攻撃を引きつけ、ルカ、アイシャ、レミッサが攻撃を加える。 しかし、ウンブラは人型をしていても魔人である。影の腕は複数あり、ルカの斬撃もアイシャの矢もレミッサの魔法も、その(ことごと)くが防がれていた。


 ガラガラガシャーン!


「ぐあぁっ!」


 バルドが吹き飛ぶ。

 ウンブラの右手と左手からの攻撃を剣でいなし盾で防ぐ、だがその次に死角からなぎ払われた影の腕を防ぎきれず真横に吹き飛ばされた。

 吹き飛んだ先にあった壊れたベンチに突っ込み盛大に埃を上げる。


「バルド! くっ!」


 バルドの代わりにルカがウンブラからの攻撃を受ける。ルカは攻撃をいなし、(かわ)し、切り裂いて耐える。何度か直接切り裂いているがダメージが入っている様子は見えない。


「バルドさーん。えいっ!」


 レミッサから回復の神聖術が飛ぶ。

 回復したバルドはシールドバッシュの要領でウンブラに突っ込み、ルカとの間に割って入る。


「どうにかなんねーのかよ?」

「核が、心臓に核があるはずだ。それにダメージを与えられれば」


 肩を並べるバルドにルカが短く言う。

 魔物は普通の生物と造りが違う。体が瘴気から出来ており、手足を吹き飛ばしたところで痛みを感じている素振りを見せないし、時間と共に復活する。

 そんな魔物を倒すには一般的な生物で言うところの胸――――つまり心臓の位置にある魔石を破壊すれば良い。魔人が魔物と同じ造りであると考えると、同様に心臓部の魔石を破壊すれば良いと考えられる。反対に言うとそれしか倒す方法がないとも言える。


「つっても影の腕が邪魔で攻撃が通らんぞ!」


 振るわれた影の腕を剣で弾き飛ばしながら、バルドが吐き捨てるように言う。


「バルド! 一瞬でいい、動きを止めてくれ! アイシャ、レミッサは援護を!」

「無茶言うぜ」


 そう言いつつバルドはしっかりと盾で体を守りつつ、ウンブラに近づいて攻撃を捌く。それに連動してアイシャとレミッサから矢と魔法が飛ぶ。これにより影の腕を含めて手一杯の状態にした。


小癪(こしゃく)な……」


 間髪を入れずに攻撃が続くことに、ウンブラは戦闘が始まってから初めて苛立ちを見せた。


「舐めるなー!!」


 バキッ、ブスッ――――


「ぐあっ」


 バルドが苦悶の声を上げる。

 気合い一閃、ウンブラの右腕が黒い円錐の槍状に変化したと思うと、鋭くバルドに突き込んだ。先端は鋼鉄製の盾を貫きバルドの肩に深々と刺さった。


「バルド!」

「うぉぉぉぉ!!」


 バルドは気合いで痛みを押さえ込み、自身に突き刺さったウンブラの右腕を強引に押さえ込んだ。


「なに!?」

「今だルカ!!」


【切り裂け! 聖なる剣撃】

「せぁああ!」


 ルカは発動を準備していた勇者魔法を発動し、まばゆい光を(まと)った剣をウンブラの胸に突き刺した。


「ぐぉおおおお!」

「うぉぉぉ!」


 ウンブラから叫び声が上がる。初めての明確なダメージにルカは更に魔法の強度を上げる」


 ――――パキッ


 そのとき、剣から何かが割れるような手応えが伝わってきた。


「だぁああ!」

「「うわぁ!」」


 ウンブラの影の腕が振るわれルカとバルドは吹き飛ばされ床に転がった。


「どうだ?」


 何とか転がり立ち上がってウンブラを見ると、彼は自分の腕が先の方から黒い粒子になって溶けているのを静かに見ていた。


「ふっ、見事だ……私が人類に負けるとは……その力、百年前の勇者を越えるか……」


 そう独り言のように言うと完全に溶けて消えた。

 残ったのは赤黒い割れた宝石のような魔石だけだった。


    ●○●○●


「ぎゃーっ! 痛い痛い! むぐー!」

「はい、我慢ですー」


 バルドが叫ぶ。レミッサが慣れた手つきで無造作に取り出した布きれを口に突っ込んで消音する。敵地のど真ん中で騒いでいれば、魔王がやって来てしまうかもしれないからだ。

 そんな涙目のバルドに対して何をしているかといえば治療だ。先ほどウンブラにぶっすりやられた左肩を治療しようとしている。

 回復の神聖術を掛ければきれいさっぱり治るのだが、その際、何か異物が傷口に残っているとそれを取り込んだまま治ってしまう。今回、鎧ごと肩を貫かれてしまったため、金属片が傷口に残っていないかを水で洗い流しながら確認をしているのであった。

 だが、ぽっかりと穴が開いてしまっているところをグイグイ洗い流すものだから激痛なんてものではない。あまりの痛みにバルドは意識を飛ばしかけている。


「はい。大丈夫ですー。えい」


 ようやく洗浄と確認が終わったレミッサは、聖杖を傷口に向け神聖術を発動した。

 あっという間に塞がっていく傷口。ようやく痛みから解放されたバルドは口に突っ込まれた布きれを吐き出し脂汗をかきながら荒い息をしている。


「はぁーはぁー。貫かれたときより痛かった……」


 そう言うとバッタリとかろうじて残っていた古びたベンチに寝転がった。


回復薬(ポーション)の方が痛みなく治せたんじゃねぇのかー?」

「飲むまでの過程は同じですよー。用法用量は良く守りましょー。それに神聖術の方が早く治りますし、リハビリも不要でお得ですよー」


 バルドのぼやきに、むん、と胸を張り自信満々に言うレミッサ。

 怪我の回復には神官の神聖術の他に回復薬(ポーション)というものがある。一般的には軽度の怪我は回復薬(ポーション)、重傷は神聖術といった棲み分けがされているが、治り方が少し違う。回復薬(ポーション)の場合、治るまで少し時間が掛かるため患部の固定や、治った後にリハビリが必要になる場合がある。一方、神聖術で治した場合は直ぐさま怪我をする前の状態で動くことが出来る。そのため戦場では回復の神聖術が使える神官が重宝されるのだ。


「さー、次は魔王です! 頑張っていきましょー」


 普段と変わらぬ様子でレミッサが、おー、と右手を挙げた。

 次はいよいよ魔王との戦いだ。

次回更新は6/21予定です。

これにて第五章は終わりです。次章の六章はいよいよ最終章になります。

ここまでお読み頂きありがとうございます!

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