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勇者の手紙  作者: NoKKcca
第三章
31/71

29.エルフの里

 ――――エルフの里へ繋がる道の道中。


 エルフの里へはこの町から徒歩で一週間はかかるという。その旅程の半分は森の中なので実際はもっと掛かるかも知れない。

 エルフが全力を出せば森の中をもっと早く通過でき、アイシャは実際およそ半分の三日間で町まで辿り着いたと言った。


「――――でね。とてもきれいな場所なの。全部終わったら案内してあげる。って聞いてる?」

「聞いてる聞いてる」


 それほど大きい町では無かったため、ギルドは二頭しか馬を用意できなかったが、ありがたくお借りして三人は一路エルフの里へ向かっている。今は、ルカが一人、アイシャとレミッサが二人乗りをしている。

 一先ず援軍を得られてホッとしたのかアイシャは、早足で馬を併走させながら色々とエルフの里のことを話し始めた。

 エルフはもっと達観した様子で、こんなにおしゃべりだとは思ってもみなかったルカは、やや驚きつつも相づちを打っている。アイシャがまだ若いエルフだからだろうか。

 ちなみにレミッサは既にアイシャにしがみ付きながらお昼寝中だ。


    ●○●○●


 アイシャのエルフの里の自慢話を聞きながら馬を走らせていると村が見えてきた。


「今日はここで一泊しましょう。この先まで行ってしまうと野宿になってしまうし、馬も休ませないと」


 アイシャが馬を並足にしながらルカに言う。

 アイシャは早さを優先しほとんど荷物を持っておらず、行きは最低限の休息だけで町まで来た。ルカたちも補給を兼ねて町に来たばかりだったため、出発前に少し補充したがあまり物資は持っていない。そのため、途中の村を上手く使って行く必要がある。


    ●○●○●


 村の村長に事情を話し、納屋の一角に泊めてもらうことになった三人。

「それじゃあ、明日朝一出発で」

「分かった」

「私は少しお仕事してきまーす」


 レミッサが倉庫を出て行く。


「えっ? ちょっと!?」

「行かせてあげて? 普段教会も無い小さい村だと回復の神聖術が使える人が居ないから、怪我とか病気の人を治してあげてるんだよ」

「へー、ちゃんと神官してるのね」


 レミッサはこうして、毎回、寒村や町の貧困地域があると立ち寄って病気や怪我を治す。本人曰く目の前で苦しんでいる命を放っておけないからだとか。

 報酬は格安で現物も可能としているため、小銭の他、菓子やら何やらをいつももらってくる。

 これはルカがこっそりレミッサを尊敬していることの一つである。

 ちなみに、ルカが世間から美人に分類される彼女一人じゃ危ないのでは? と付いて行ったこともあった。しかし、暴漢に襲われそうになった時、聖杖でぶん殴って回復する(なかったことにする)ところを目の当たりにして大丈夫そうだと思い、以降は時間があったら手伝う程度の関与に留めている。


「いつも眠そうなだけじゃないんだよ? 神聖術や魔法を沢山使うと眠くなるんだってさ」

「へぇー」


 一応フォローしておくルカであった。が、神聖術や魔法を使っていない時も眠そうなので違いは分からない。


    ●○●○●


「おーきーろー!! あーーーもう!!」


 アイシャがレミッサを起こしている。

 三人は昨夜、村長の好意で保管してあった藁にシーツを引いてベッド代わりに眠らせてもらった。

 翌朝、女性陣二人とは少し離れたところで寝ていたルカが目を覚ますと、先ほどの声が聞こえた。

 ルカも一応男なので、レミッサを起こすときは光を使ったり、毛布を引っぺがしたりと間接的に起こしている。しかし、アイシャは女性同士なので直接的に揺さぶって起こしている。最近耐性が付いたのかルカが起こしたのでは、中々起きなくなってきたレミッサを代わりに起こしてくれているアイシャにはルカも大助かりだ。


「おやほうございますー」

「はぁはぁ」

「アイシャ、本当にありがとう」


 ポワポワと寝ぼけ眼で起きてきたレミッサと、一仕事終えた様子のアイシャ。

 ルカはアイシャに感謝した。そして、これからはアイシャに任せようと密かに思った。


    ●○●○●


 ――――町を出発して四日を過ぎた頃。


 三人はエルフの里に辿り着いた。

 馬のおかげで森の手前までは、徒歩の半分の時間で到着することができた。しかし、森の中は足下も悪く、慣れないルカとレミッサを連れた状態ではあまり急ぐことはできなかった。

 三人が着いた町の方面の門は固く閉ざされ、その巨木を取り込んだ砦のような様相は、人族の建築とは異なり自然と一体化しているのが特徴的で、ある種の迫力を醸し出している。


「おーい、誰かいないの? アイシャよ。援軍を連れてきたの」


 アイシャが門に向かって呼びかけると、門の上から武装したエルフの男性二人が顔を覗かせた。


「アイシャ! 戻ったか! 今開ける」


 ガシュ――――


 (かんぬき)が外される音がした後、門の片側がゆっくりと人一人通れる隙間の分開いた。


「お帰りアイシャ。どうだった? 援軍は? 二人だけか?」

「落ち着いて、大丈夫よ。町のハンターギルドには援軍をお願いしたわ。集めるのに少し時間は掛かるかも知れないけど、随時ハンターを送ってくれるって。あと、領軍の方にも話を付けてもらえるって。この二人は先遣としてきてもらったの。一人は勇者様よ!」


 アイシャがグイッとルカを二人のエルフの前に押し出す。


「初めまして、先日勇者に選ばれましたルカです」

「これは頼もしい。ささっ、皆、入ってくれ。族長もアイシャの帰りを待ってる」

「お爺様はどこに居るの?」

「作戦本部に居るよ」

「分かったわ、ありがと。ルカ、レミッサ行くわよ」


 門番の二人に軽く会釈をしてアイシャの後に続く。

 エルフの里にエルフ族以外の種族が入るのは中々無いことだ。排他的という訳では無く、ただ単に行き来がしづらい森の中に里があるためだ。

 何故このような不便な場所に里を築いているかと言えば、里の中心にある世界樹と呼ばれる大樹を守っているからである。

 世界樹は瘴気を吸収し魔力の基となる魔素を放出していると言われている。この効果により世界は瘴気に充たされることがなくバランスが取られているという伝承だ。

 エルフは全ての種族の中で最も魔力保有量が多く、魔法の才能に優れている。そのため、空気中の魔素が最も濃く存在する世界樹の側は暮らしやすいらしい。


    ●○●○●


 門を抜けるとアイシャは真っ直ぐ世界樹の側に建てられた建物に向かって足早に進む。ルカとレミッサも後に続く。

 建物の前には二人の兵士が扉の前に立っていたが、アイシャの姿を見ると直ぐに横に避け道を開けた。

 そのまま、入り口の扉を開け中に入ると、一段上がった床の上に車座になって地図を指さし話をしている年嵩のエルフたちがいた。

 エルフは若い姿を保ったまま長い時間を過ごす。集まっていたエルフはルカから見ても年嵩である。エルフの中でも相当な(とき)を生きている者たちと窺えた。


「お爺様。今戻りました」


 アイシャがその中で最も年長と思われる老人に軽く頭を下げる。


「良く戻った、アイシャ。ご苦労様」


 お爺様と呼ばれた老人は重苦しく頷くと、アイシャを労った。


「して、どうじゃった?」


 続けて最も気がかりなことであろう。今回の援軍要請についてアイシャに尋ねた。

 アイシャは襟を正すと、集まっていた者たちに向け報告する。


「はい、ご報告致します。結論から申し上げまして、援軍は引き受けてくれることになりました」

「「「おおっ。助かった」」」

「ですが、お爺様が危惧していました通り、我々が結んだ盟約時と組織が変わっており即時に動くことは難しいとのことです。しかし、至急ハンターたちに依頼を出し、随時送ってくれるとのこと。また、領主にも話を付けてくださるそうで、領軍の投入も見込めます」

「うぅむ……あの盟約は百年前の物だったからの……人族にとっては長い(とき)か……しかたない」


 一瞬弛緩(しかん)した雰囲気になったが直ぐに援軍が到着しないことが分かり、再び重苦しい雰囲気に包まれる。


「して、そちらのお二人は?」

「はい、こちらは勇者ルカと神官レミッサです。偶々町に立ち寄っており、事態を聞いて先遣として一緒に来てくれました」


 アイシャは一歩横にずれ二人を前に通す。


「ルカ、レミッサ、こちらは私の祖父でエルフ族を束ねる族長だ」

「今代の勇者に選ばれましたルカです」

「神官のレミッサですー」

「百年ぶりか……これも神の思し召し……」


 族長は目を細めている。表情が分かりづらいが喜んでいるようだ。


「それで、早速ですが現状はどうなっているのでしょうか? 押し止めているのですか?」


 ルカが見る限り会議の場は落ち着いており、喫緊(きっきん)の脅威があるようには見えなかった。


「いや、先ほど第一の城壁が破られた……」

「えっ、それはまずいのでは」

「第二の防壁に下がり押し止めているが、後が無い状況じゃ……」


 割と危険な状況だった。


「お爺様たちくらいの年齢になると達観しすぎて、分かりづらいのよね。滅びもまた(とき)の定めとか言って、諦めんな! っての!」


 アイシャがあきれたように、後半は少しイライラした様子で横から口を挟む。

 アイシャは性格故か、まだ若いエルフだからかは分からないが、喜怒哀楽がはっきりしている。その彼女に対して、族長たちは淡々とし過ぎていて危機感などが感じ取りづらい。


「それじゃあ早く前線に行きましょう! 勇者魔法を使えば少しは時間稼ぎになるかもしれません。レミッサはどうする?」

「そうですねー、まずはけが人を治しちゃいましょうか。エルフさんたち魔法が得意ですからねー、私一人が攻撃に参加するより良いんじゃ無いでしょーか?」

「確かにそうだね。そしたらレミッサは救護所に」


 急いでこれからの方針を決める。

 ルカは前線、レミッサは後方の救護所に向かうことになった。


「そしたらあたしが案内するわ」


 アイシャが案内を買って出る。


「それじゃ、直ぐ行こう! それでは失礼致します」

「ご武運を」


 族長は重苦しく頷く。

 建物を出た三人は急いで前線方面に向かう。

 ルカは走りながらアイシャに話しかける。


「アイシャ! 武器は?」


 腰に付けていた弓を見せる。


「あたしは弓と魔法! 矢は前線に行けばあるから大丈夫」


 その後、途中でレミッサを救護所に送り、ルカとアイシャは前線となっている第二城壁へ辿り着いた。

次回更新は3/12予定です。

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