24.討伐部隊
翌朝、討伐に参加するメンバー向けの説明会がハンターギルドの会議室で行われた。
今回参加するのは帝国軍から派遣された三十人、地元のハンターから十名、聖ソルティス教会から派遣された十名とおまけのルカとレミッサを合わせた総勢五十二人が今回の戦力だ。これを五つの班に分けて討伐に当たることになる。
「――出発は一時間後とする。では解散」
軍の指揮官が集まったメンバーに声を掛ける。この指揮官が定期討伐のとりまとめを担当する。
「ほら、終わったよ」
「うぅーん?」
案の定ルカに寄り掛かって寝ていたレミッサを起こし、ルカたちも会議室を出る。
ギルドの建物を出て準備を整え集合場所である広場へと向かうと馬車が並んでいた。
その中からルカとレミッサが参加する第五班に割り当てられた馬車へと向かう。
各班は、まず始めに全員で森の開けた場所へ移動し拠点を構築する。その後、班ごとに決められた場所へ向かい魔物の討伐に当たることになっている。
ルカは馬車から少し離れて雑談をしていた、ハンターと思しき男女二人に声を掛けた。
「おはようございます。よろしくお願いします」
「おう、よろしく」
「よろしく」
男性の方は、細身の体に革鎧を纏い、頑強な弓を肩に掛け矢筒を腰に着けている。女性の方はやや筋肉質な体で、一部に金属が使われた鎧にロングソードを腰に下げている。
男性ハンターが話しかけてくる。
「話は聞いてるぜ、勇者様なんだってな」
「はい、でもまだ修行中なので若手のハンターと変わりませんよ。故郷に魔物はほとんど出なかったのですが、クマくらいなら単独でも倒せます」
「ヒュー、そうか、そっちの神官の姉ちゃんは?」
「私は従軍神官の経験もありますよー。魔法も使えます、ドカーンって吹っ飛ばします」
「おー、それは頼もしい」
会話を聞いていた女性ハンターがルカに質問する。
「故郷はどこなんだい?」
「フェルティラ王国のフォルティスの街です。砦村って言った方が有名かもしれませんね」
「砦村か。また、あの砦村出身者が世界を救うってか」
「??」
「確かに先代勇者は百年前に魔族を北方に追い返したよ。だがあのとき最も多くの人類を守ったのは数々の頑強な砦、城壁を作ったクストスだね。当時砦村はまだなかったから出身というのはちょっと違うが、戦禍に晒された北方の人たちはみんな感謝してんだ。未だに現役な城壁も多いからね」
●○●○●
――――話はおよそ百年前、先代勇者の時代。
当時はフォルティスの街という名前も無かった辺境の開拓村。
後に有名な砦や城、街の城壁を多く残した建築家クストスは誕生した。彼は大工見習いから始まり、建築の世界にのめり込んだ。
運や才能があったのだろう、ひょんな事から城壁を造る建築事務所で働くことになったクストスは、斬新なアイディアを武器に頑強な城壁を設計し、一躍、名建築家に躍り出た。
時は魔族が北方から大規模に侵攻繰り返していた時代。
魔族の支配地域に近い北方の国は侵攻を許してしまった。その結果、国内各地で戦禍が発生し、多くの犠牲者や難民を生んだ。
そんな時代にクストスは、人々の命を守る避難場所として、侵攻を食い止める防波堤として城壁を造り続けた。それにより、後に炎の勇者が誕生して魔族を北方へ押し返すまでの時間稼ぎに貢献したのだった。
しかし、クストスの話は美談では終わらなかった。
炎の勇者による反攻作戦の末期、クストスの故郷の開拓地は突如、魔物の大軍に襲われた。
開拓村のあるフェルティラ王国は大陸の南方に位置し、魔族の支配地域とは標高の高い山々が連なる山脈で断絶されている。そのため本来は魔族との戦争には無縁の場所であった。
しかし、その山脈を越え魔物の大軍は押し寄せ、クストスの故郷である開拓村は蹂躙された。
この襲撃により、クストスの成功を心より喜んでいた両親は、父は死に母は辛くも生き残ったが心身消失状態になってしまった。また、仲の良い友人たちも多くを失った。
本当に大切なものを守れなかった彼は引退。晩年、村の生き残りと共に復興に尽力した。
その復興の中で彼は莫大な私財を投じ、住人を守る城壁を造ったのであった。
当時彼の持つ経験とあらゆる技術の粋を集めたその城壁は、後に城壁の最高傑作として彼の悲話と共に語り継がれ、砦村の由来となった。
次回更新は2/22予定です。
【あとがき】
砦村のバックグラウンドを少し入れました。
世界で最も人類を救ったが、本当に大切な人たちを救えなかった偉人クストスの話。




