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勇者の手紙  作者: NoKKcca
第二章
25/71

23.定期討伐へ

 ――――ルーシス大聖堂に滞在し始めてから一ヶ月。


「彼女はレミッサ。勇者様のパーティメンバーとして教会から紹介させて頂きます。神聖術だけじゃなく魔法の腕も立ちますよ」

「初めまして勇者様。レミッサと申しますー」


 一人の女性神官がぺこりと頭を下げた。

 ホリス教皇からの紹介で勇者パーティの一員として推薦された。

 ルカとしてもこれからの旅に回復役がいてくれるのは心強い、一先ずは、参加が決まった魔物の定期討伐を共にし、お互い理解を深めることになった。


「よろしくお願いします。光の勇者に選ばれましたルカです。勇者様って呼ばれるのは慣れないので名前で呼んでください」

「分かりましたー。ルカさん」


 ルカのレミッサに対する第一印象はふんわりとしたお姉さんだった。少し年上で身長は女性の中では高く、ルカよりも高い。神官服を身に纏い、すらっとした見た目で、背中まで伸びた白に近い金髪が頭に着けたヴェールから覗いてキラキラしている。

 ルカも年頃の男だ。美人な女性神官がパーティメンバーになってくれると聞き、心の中で喜ぶと共にちょっと照れていた。


    ●○●○●


「それでは出発しましょう」

「はいー」


 ルカとレミッサは教会が準備した神官部隊の馬車の一台に乗り込む。

 討伐を行う瘴気溜りのある森はアルミス帝国内にある。そこまでは大体一ヶ月程度の旅程だ。

 ホリス教皇が気を利かせたのだろうか、この馬車はルカとレミッサ以外には荷物しか載っておらず、他人を気にする必要は無かった。

 いきなりの二人きりで、それはそれで気まずいルカである。沈黙に耐えかねルカがレミッサに話を振る。


「レミッサさんはかなりの腕前とホリス教皇からお聞きしましたが、神聖術も魔法も使えるのですか?」

「うーん、そうですねー。回復の神術については生きてさえいれば、腕でも脚でもくっつけちゃいますよー。あと魔法は火の魔法が得意です」

「それは頼もしいですね……」


 ”くっつけられる”というのだからくっつける場面に出くわしたことがあるのだろう。戦場の経験は段違いだなとルカは想像して少しゾッとしながら思った。


「ルカさんは元々何してたんですかー?」

「僕は田舎でハンターをやってました。といってもギルドもないような田舎だったので、直接頼まれて野生動物を狩ったり、森に入って採取したりとかしてました。なので動物と魔獣相手は比較的慣れてるんですが、魔物はこの旅に出るまで戦ったことが無くて……」

「そうなんですねー。魔物というと、スライム、小鬼《ゴブリン》、大鬼オーク、犬人《コボルト》とかが有名ですかね。加えて虫系だと蜘蛛人(アラウネ)とか爬虫類系だと蜥蜴人(リザードマン)でしょうか? あと私たち神官が対峙することが多い死霊系ですと、幽霊(ゴースト)生きる武装(リビングアーマー)とかがいますね。ちなみに死人(ゾンビ)は元が人なので魔獣ですー」

「その中だとスライムと小鬼(ゴブリン)しか出会ったことないですね」

「魔族領の近くだと色んな魔物がゴロゴロいますから、その内出会えますよー」


 別に出会いたい訳ではないけどもと思いながら相づちを打つルカ。


 ――――しばらくして。


 「――――が――なんですよ……」


 こっくりこっくり――――


 レミッサの口調がふわふわしてきたなと思っていたところ、こっくりこっくりと船を漕ぎだした。

 ルカとレミッサは馬車の左側に取り付けられた座席に進行方向奧側にルカ、手前にレミッサという形で隣り合わせに座っている。ちなみに正面には荷物が積まれている。


 こっくりこっくり――トスッ――


 しばらく船を漕いでいたレミッサだったが、最終的にルカに寄っかかる形で本格的に寝に入った。

 奇しくもレミッサと密着する体勢になったルカは、ちょっと嬉しく思いつつ荷物に入れてあったブランケットを掛けてあげた。


    ●○●○●


 ――――出発から五日目の朝。


 昨日は久しぶりに野営ではなく町に宿泊する事ができた。

 野営では、レミッサは女性神官のテントに泊まりバラバラであったが、今日の宿の部屋は隣同士だった。そのため、まだ起きていない様子のレミッサをルカは起こすため部屋のドアをノックした。


 トントントン――――


「レミッサさん、朝ですよー。まだ起きてないですかー?」

「…………はぁい……起きて……すぅ……」

「…………」


 まだ寝てるようだ。

 しかし、いつまでも寝かせておく訳にはいかない。出発時間は迫っている。


 トントントントン――――


「レミッサさん! 出発時刻迫ってますよ! 起きてください!」

「ふぁい、今起きて……」


 更に五分後、扉を叩く音がトントンからドンドンに変わった頃、ようやくレミッサが部屋のドアを開けた。


「おはようございます……」

「急いで急いで! 時間時間! あーっと、朝食は食堂で何か包んでもらうから先に馬車行って!」


 寝ぼけ眼のレミッサの背中を押して馬車の方へ追いやる。

 ふらふらと馬車の方へ歩く後ろ姿を確認すると、ルカは宿の食堂で何か軽く食べられるものを包んでもらうのであった。


 そんな朝のやりとりを繰り返すこと五回目の朝――――


 トントントン――――


「レミッサー朝ですよー。起きてくださーい」

「…………はぁい……起きて……起きる……」

「…………」


 今日も相変わらず起きる気配がない。

 それを確認すると無言でルカは鍵穴に人差し指を当てると、鍵穴から光の魔法を室内に放った。


 シュッ――――ピカー


「ひょわ!」


 室内でレミッサが驚いて飛び起きたであろう声が聞こえた。

 ルカは鍵穴に当てていた指を離し溜息をつく。


「一番よく使う勇者魔法がこれだなんて……」


 ルカが放った魔法は、勇者魔法にある敵の目をくらますためのフラッシュである。毎回あまりにも起きてこないレミッサに痺れを切らしたルカが、宿の貫通式の鍵穴から魔法を入れてみたところ効果抜群だったため、朝の日課になっていたのであった。


 馬車で寝過ごすこと四回、集合中、聖杖に寄りかかって立ったままの居眠り三回。

 美しいしっかり者の神官というルカの第一印象は順調に下がり、最終的には、優秀で美人だけど残念な人というところに落ち着いた。その結果、呼び方も扱いも随分と雑になった。

 ただ、親しみやすくはなったので、一緒に旅をするのに気兼ねなくなったという意味では良かったが。


 ガチャ――――


「ひどいですよ~、ルカさん」


 ブーたれながら出てきたレミッサ、最初の頃に比べたら半分の時間で起きてくるようになった。


「それなら自分で起きてください。そもそも野営ではどうしてるんです?」

「野営はテントを畳まれちゃいますので流石に起きますぅ。ふぁ~あぁ」


 女性神官の野営場所を見たことは無いが、レミッサの知り合いも多いだろう、地面に転がされている様子が目に浮かぶ。それでも中々起きなさそうだが。


「はぁー、朝ご飯食べにいきますよ」

「は~い」


    ●○●○●


 ――――聖ソルティス神国の皇都を出発しておよそ一ヶ月。


「着いた……遠かった……」

「うーん、着きましたねー」


 この一ヶ月間、日中、休憩はあるもののほとんど馬車に揺られていた

 そのため疲れが見えるルカと、その移動時間の半分以上を睡眠に充て、今もまさに起きたてで元気なレミッサ、ケロッとしている。


「レミッサ良くそんなに眠れるね、夜眠れなくならない?」

「馬車の揺れって眠くなりません? それに、夜は夜で眠くなるから大丈夫です! 寝る子は育つというじゃないですか」


 まあ確かに良く寝る子ではあるが、だから身長が伸びたのかな? などとどうでもいいことをルカは考える。疲れで思考が鈍っているようだ。ツッコミを入れる気力もない。


「勇者様。お疲れ様です。旅慣れてないと疲れますよね?」


 その後もレミッサのちょっとズレた話をルカがボーッと聞いていると、向こうから神官服に身を包んだ男性がやってきて声を掛けた。


「カヌスさん、お疲れ様です。流石に一ヶ月ずっと移動し続けてるのは初めてでしたので疲れました」


 彼は、今回の定期討伐に参加する神官たちを束ねる隊長である。

 灰色の短髪で身長はやや高くがっしりとした体躯をしている。神官なので魔法職ではあるが槍術も操る肉体派だ。

 この一ヶ月の中でよくルカに声を掛けてくれたことから親しくなった。

「レミッサを良く見ていてくれて助かりました。朝出発するときに置いてきそうになったことも多々ありまして……到着しても馬車から降りてなかったりな!」


 カヌスは一瞬ギロっと鋭い目つきでレミッサを見るが、レミッサはバツが悪そうにそっぽを向いて口笛を吹いている。


「ええ、まあ。途中から起こし方が分かったので……」


 あれからもルカは目眩ましの魔法でレミッサを起こし続けたのであった。ちょっとしたライトの魔法程度では起きないのだ。


「ともかく今日はゆっくり休んでください。明日、帝国軍と地元から参加するハンターたちと顔合わせをして森に入りますので」


 そういうとカヌスは、軍とギルドマスターとの会議があると告げ去って行った。

次回更新は2/19予定です。

【ざっくり設定集】勇者パーティ 第一弾

 ・ルカ  (勇者):勇者、ごく普通の若者

 ・レミッサ(神官):残念美人、??

And More

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