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勇者の手紙  作者: NoKKcca
第二章
21/71

19.聖ソルティス神国

 ――――フェルティラ王国、王城エレオノーラ私室。


「…………」


 ルカから届いた手紙を手に沈黙しているエレオノーラ。


「…………うーん?」


 たっぷりの沈黙から戻ってきたエレオノーラは首を傾けた。

 ルカが王都を出発して二週間ほど経った頃、ルカから手紙が届いた。

 侍女がら渡された手紙を早速開封し目を通していたのだった。


「中身が無い……」


 もちろん白紙が入っていた訳ではない。

 その一枚の便箋に書かれていた文章は内容がほぼ無かったのだ。

 時候の挨拶、姫を褒め称える言葉、先日のお礼、……、結びの言葉。

 ルカの知る目一杯のマナーと美辞麗句(びじれいく)を盛り込んだその手紙を端的にまとめると『順調に旅を続けています』程度のことしか書いてなかったのだ。


「うーん」


 これにはエレオノーラも困惑を隠せない。

 これが貴族からの手紙であれば、一見大した内容が無いように見えて、色々な暗喩が(ちりば)められているのが普通だ。それを読み取るのも貴族の(たしな)みであるが、ルカの手紙はストレートに何も書かれてなかった。

 各地の情報収集という意味ではあまり期待していなかったが、単純に楽しみにはしていたのでこれには彼女もがっかりだ。


「これ……」

「私が読んでもよろしいのでしょうか?」

「大丈夫よ」


 エレオノーラが手紙を持ってきてそのまま控えていた侍女に手紙を渡す。

 侍女は「失礼します」と言い手紙を読んだ。


「……これは……、とても教科書に忠実な目上の人物に向けた手紙ですね。……肝心の中身がほぼ無いですが」

「そうなのよ……」


 悩ましげな様子のエレオノーラ。


「勇者様は聖ソルティス神国の皇都に居るのよねー? ちょっと伝言を届けてもらえないかしら? 挨拶も何もいらないから、もっと友達に書くような手紙にしてって」

「畏まりました、その旨の手紙を届けさせます」

「よろしくね」


 恭しく頭を下げた侍女は、部屋を後にした。


    ●○●○●


 ――――フェルティラ王国、国境の街を後にして二週間後。


 ルカは聖ソルティス神国の皇都へたどり着いた。

 今は皇都を囲う城壁の外で入場の列に、護衛として一緒に来た商人の荷馬車に腰掛けている。


「次の人」

「ほい」

「はい」


 商人の親父さんに続いて通行証を衛兵に提示する。


「――っ! 勇者様ようこそ聖ソルティス神国、皇都へ」

「へっ、勇者?」


 親父さんが衛兵の言葉に驚いている。


「勇者様、聖下が首を長くしてお待ちです。ルーシス大聖堂の隣にある教皇庁へご登庁ください。大聖堂は大通りを真っ直ぐ行って頂き、一街区にあります」

「分かりました、伺います」


 通行証を返してもらい、入場ゲートを後にする。

 ゲートを出たところで商人の親父さんが興奮した様子でルカに話しかけてきた


「お前さん、勇者様だったのか!」

「ええ、実はそうなんです。フェルティラ王国の勇者ルカです」

「でもなんで護衛なんて受けてるんだ? 国から支援あるんじゃないか? 騎士みたいなもんだろ?」

「僕自身は軍人じゃないんです。自由にしていい代わりに支援はほとんど無いんですよ」

「ケチ臭いなー」

「無理矢理前線に送られないだけいいですけどね」

「それはちげぇねぇ、ガッハッハ」


 商人の親父さんは豪快に笑いながらルカの肩を叩いた。


「ほれ、それじゃ依頼はここまででいいぞ。早く教皇様んとこ行ってやんな」

「ありがとうございました」

「おう、皇都にはオレの店があるから暇だったら来いよ! じゃあな」


 ブンブンと手を振り、商人の親父さんは荷馬車を発車させた。

 商人の親父さんと分かれたルカは、ハンターギルドで依頼達成の処理を終わらせると、ルーシス大聖堂に向かった。


    ●○●○●


「ここがルーシス大聖堂……歴史を感じる……。王都の大聖堂も大きかったけど、ここは別格だ……」


 見上げるルカの視線の先にルーシス大聖堂がある。

 ルーシス大聖堂は三本の尖塔を持ち、その高さは世界一を誇る。

 大聖堂の裏手の方では創建当時は五本の尖塔があったらしく、現在も残り二本の復元工事がされている様子が見える。

 参拝客に混じり大聖堂の中に入る。


「おぉ……」


 内部は荘厳な彫刻の数々が訪れた人々を迎え、やや薄暗い聖堂内をステンドグラスから差し込む光が優しく照らしている。

 そして一番奥には、日差しのスポットライトを浴びた主神と女神の像が鎮座している。王都大聖堂にあるものの1.5倍はあるだろうか? 世界最古の主神と女神の像であり、始まりの像である。

 流石は世界最古で最大勢力を誇る聖ソルティス教の信仰の中心地である。


「おっと。ぼーっとしてないで教皇庁の方に行かないと」


 しばらく皇都には滞在するだろう、観光は後にしてルカは大聖堂の隣にある教皇庁へ向かう。その背中を主神と女神の像が優しく見送った。

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