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勇者の手紙  作者: NoKKcca
第二章
19/71

17.閑話 ハイリスの手紙

500PV突破ありがとうございます!

 ――――時はルカが勇者と判明してから二ヶ月後まで遡る。


「おはようございます聖下。本日のご予定ですが――」


 執務室で教皇の秘書官が今日の予定を報告する。

 ここは聖ソルティス教の総本山である聖ソルティス神国、皇都のルーシス大聖堂に隣接する教皇庁である。


「――それとこちら、聖下宛のお手紙が届いておりました」

「手紙?」


 もちろん手紙など膨大な数が毎日届く、それらを確認し優先順位などを決めるのも秘書官の役割である。こうして差し出すということは教皇庁宛てではなく個人宛の手紙なのだろう。

 しかし、それはそれで珍しい、教皇宛にもご機嫌伺いやパーティーへの招待状など大量に届くが、通常屋敷に直接届く。教皇庁に届くのは業務に関係するもののみだ。しかも高位神官に限られる。


「はい、些か珍しくはありますが、送り主が最近勇者発見の報を送ってきたフォルティスの町の神官でありましたので、念のためお持ち致しました。毒など危険が無いことは確認済みです」


 この秘書官は実に優秀で、様々な情報から適切に必要な情報を取捨選択してくれる。

 教皇庁のトップでもある教皇宛に手紙を送ってくる者は、一般庶民の陳情か、礼儀知らずの他国の貴族と相場は決まっている。

 その場合、陳情は陳情としてまとめられ関連部署に報告され、貴族の手紙はトゲが立たぬように代返され結果だけが報告される。

 そんな中、送り主の情報と勇者発見の情報を紐付け、優先度が高いと判断して直接持ってきたのである。


    ●○●○●


 ――――教皇の執務室。


 執務室の椅子に腰掛けさっそく手紙を開封する。

 便箋は二枚入っていた。

 一枚目の冒頭には『勇者案件 第一級機密事項』などと赤字で書かれていた。


──────────────────

勇者案件 第一級機密事項


 私のような地方の教会を収める一神官に過ぎない身分でありながら、聖下へ直接書簡を送らせて頂くことの無礼をお許しください。

 先に伝鳥便で教皇庁にご報告致しました、当教会で発見された勇者につきまして内密にご相談がありご連絡した次第でございます。


 もし聖下以外の補佐を担当する方が代わりに本書簡を開封されているようでありましたら、勇者に関する第一級機密事項を含む内容であることから、聖下に直接お渡し頂きますようよろしくお願い致します。


フェルティラ王国 フォルティス教会

神官長 ハイリス


──────────────────


 まず一枚目に目を通した。


「何を適当なことを書いているやら」


 教皇はぼそっとつぶやく。


 確かに教会内部には機密に分類される内容は存在するが、勇者に関する内容がそれに該当するかどうかなど、地方の神官である彼が知るわけがない。

 相変わらずもっともらしい適当なことを考えるのが上手いなと懐かしみつつ二枚目の便箋に目を向ける。


──────────────────

ホリスへ


 おう、元気に伏魔殿で権謀術数(けんぼうじゅっすう)に勤しんでるか?

 悪い、お前ん家分からなかったから、教皇庁に送るわ。

 神官学校以来か? いや高位神官に命ぜられたとき一緒に飲んだか。おまえが教皇になるなんてな、聞いて驚いたわ。

 さて本題だが、うちの教会で勇者が見つかった。俺の友人の息子でな、小さい頃から面倒見たりしてたんだよ。

 死ぬかもしれないと引き留めたんだが、意思が堅くてな翻意させられなくて報告せざる負えなかった。だけど見す見す友人の息子を死地に送る訳にはいかない。だからお前さんを頼ることにした。

 勇者パーティーの神官に優秀なやつを付けてくれ。家柄とかじゃなくて実力がピカイチな奴な。お前さんなら信頼できるし、教皇のご指名なら他の狸どもも横槍入れれんだろ?

 俺はさすがにもう歳だから旅には付いていけない。王国で諸々の用事済ませたら神国に行くよう勇者様に言っとくからよろしく。


 大親友 ハイリス


 P.S.

 神学校時代、苦手な神聖術手伝ったよな? 当時好きだった神官見習いのAさんに家柄上告白できないからって、名前を伏せて手紙渡してやったよな? 「自分に酔っててキモい」って伝言返ってきて、凹んでるの慰めてやったよな? 今回ので借しチャラってことで。

──────────────────


 執務室の椅子に深く腰掛け、先ほどの手紙を読み進める教皇の様子を

少し離れたところで見守る秘書官。

 教皇は昔を懐かしむような表情になったり、眉間を揉みほぐしたりと珍しく表情を何度も変えながら手紙を読み終えると、一つ大きな溜息をついた。


「はぁーーっ」

「如何しましたか?」


 教皇が溜息を付くなど珍しいが、そのことをおくびにも出さず淡々と尋ねる。


「いや、体したことではない。彼とは神学校時代の友人でな。昔を少し思い出した」

「ご学友でしたか。優秀なお方なのでありましょう? そんな方が何故こんな地方の教会に?」


 秘書官の質問に少し苦虫を潰したような表情で教皇が答える。


「フェルティラ王国の神官学校で優秀者に選ばれ、我が国に選抜留学で来ていたときに知り合ったのだが、高位神官の家柄という訳でもなく、純粋に神術の実力で上がってきた奴でな。実力で言えば神国でもトップクラスの実力だった。だが地位とか名誉とか全く興味を持ってない奴でな、だから気軽に付き合えて仲良くなったんだが。結局、卒業した後は、元々の目的だった彼の祖父が治めていた教会を継いでるよ」

「そうでしたか。しかしもったいない、聖下にそれほどまで言わしめる者が在野にいるなんて」

「まあ、彼奴は実力は高いが政治には向いてないからな、中央は合わんだろう」

(それにあいつはぶっ飛んでるから、下手に目立つと異端審問に吊し上げられそうだし・・・・・・)


 そう言うと教皇は手紙に書かれていた友人の頼みを反芻し少し考える。

(勇者のお供にふさわしい神官か、派閥の影響もない良い人材はいただろうか? 勇者様が到着するまで半年はあるか? 極秘裏に選定を進めんとな……下手に知られると権力馬鹿どもがが、甘やかして実力もない娘を差し込んでくるだろう…………)


 教皇の悩みは尽きない――――


 魔王がいつ現れたのか記録は定かではない。

 しかし、記録に残る最初の勇者が現れたのは二百年以上前になる。

 当時、魔族と人類の戦いは激しいものであり、人類側は生存域の半分

を失っている状況であったと記録されている。

 そんな絶望下で現れた水の勇者は、多くの魔族を打ち倒した。人類は勇者を中心に一致団結、魔族の支配地域に分け入り支配域の多くを奪還することに成功する。

 そしておよそ百年前に現れた先代に当たる炎の勇者は、停滞していた魔族との戦線を押し上げ、勇者パーティーは史上初めて魔王の居城に乗り込んだ。しかし確認されているのはそこまでである。その後、魔物が撤退していったことから、魔王に深手を負わせたと考えられているが勇者パーティーはとうとう帰ってこなかった。

 その後、百年余り、散発的な衝突や被害は発生しているが均衡状態が続いている。

 そんな中での新しい勇者発見の報、つまり神は勇者を必要とするような困難が迫っていると告げていると考えられる。教皇は起こりうる最悪の事態を想定し各国との協議を考える。

お読み頂きありがとうございました。

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