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勇者の手紙  作者: NoKKcca
第二章
18/71

16.国境の町で

 ――――大通りを進み一本横道に逸れる。


 「ここか……」


 国境の街にあるギルドにやってきたルカ。

 護衛依頼の達成報告と聖ソルティス神国までの情報を得るためだ。

 ルカは入り口の前で、肌身離さず持っていた身分証を取り出し、少し溜息をついた。ただの紙であるが精神衛生上とても重い代物だ。


 ――――時は王都出発前に遡る。


「こちらがアルフォンス王名義で発行されております通行証です。またこちらが聖ソラルス教会のホルス教皇とアルフォンス王の署名が入っております、ルカ様を勇者と証明する身分証になっています。どちらも全世界で有効です。くれぐれも紛失されることのありませんように」


 笑顔だけれど目が全く笑っていない表情で、王城から来た文官のお偉いさんはルカに渡しながらそう言った。

 少し説明すると、証書の発行者から分かるようにフェルティラ王国が後ろ盾になっている最高位のものだ。万が一紛失した場合、王国の文官たちは自分たちの仕事を停止してでも至急各国へ赴き、紛失した事実の説明と、不正利用への注意喚起を行う共に謝罪行脚(しゃざいあんぎゃ)しなければならない。

 それは一ヶ月にも二ヶ月にもなるだろう、念押ししたくなるのはもっともだ。

 ルカはそんな一幕を思い出しながらギルドのドアを開けた。


 カランカラン――――


 ハンターギルドの窓口の配置は概ねどこも同じである。

 出入り口から依頼の受託/委託の受付、完了報告の受付、そして素材の買い取りの受付である。完了報告の受付でそのまま報酬も支払われる

 そして各種受付のカウンターと反対側の壁には、募集中の依頼票が掲示板に貼られている。

 朝の時間帯、掲示板前は混み合うが、到着したのが昼過ぎなこともあり、ギルド内は比較的空いていた。

 ギルド内を軽く見回したルカは、完了報告の受付に足を進めた。


「すみません、依頼完了手続きお願いします」

「はいはーい」


 出てきたのは気のいいおばちゃんだった。

 ベテランなのだろう、ルカから完了のサインが入った書類を受け取ると慣れた手つきで手続きをしてくれた。

 程なくして報酬を乗せたトレイを持って受付に戻ってきた。


「はい、今回の報酬。金額確認してね。お疲れ様」

「ありがとうございます」


 ルカは金額を確認すると財布に報酬をしまった。


「あと、聖ソルティス神国までの道で何か危険な魔物が出たとか情報ありますか? 実は僕、今代の勇者に選ばれまして、神国の皇都まで行かないといけないんです」


 ルカはそう言いながら、身分証を受け付けのおばさんに見せた。


「あらあら、勇者様だったの? こんなかわいい顔して。偉いわね」


 何だか親戚の子どもを褒めているような声色でおばさんは言う。


「ごめんなさいね。私、受付担当だから……あっ、副ギルド長ちょっと来てください」

「なんだい?」


 奧から中年の男性が出てきた。副ギルド長らしい。


「この子、勇者様なんですって。これから聖ソルティス神国行くんで、何か途中で危険な魔物が出たとか情報が知りたいらしいの」

「ほう、君が勇者なのか」


 副ギルド長はルカの身分証を一瞥(いちべつ)するとルカに向き直って言った。


「ギルドの連絡網で情報は来ていた。今代の勇者が見つかった。勇者がギルドを訪れた際には情報提供に協力するようにと」

「ありがとうございます。神国の皇都へ行かないといけないんですが、何か情報はありますか?」

「いや、今のところ強力な魔物が出てきたなど情報は入ってきてないよ」


 フェルティラ王国の北方とは言え、大陸で言えばまだまだ南方である。強力な魔物が出てくる北方の魔族領に近いエリアからは大分離れている。


「そうですか、ありがとうございます。神国へはまた護衛依頼を受けて行こうと思っているのですが、国境を越える護衛依頼ってあります?」

「あるんだが、丁度今朝出発してしまってな……次は一週間後だ。それなら神国側の街まで行って、そっちのギルドで皇都行きの護衛依頼を受けた方がいいかもしれん」


 国境の街とは言え、大きな商店であれば身元がはっきりしている専属の護衛を雇っているので、国境を越える依頼というのはそれほど多くないようだ。

 それよりは国境を越え、神国側のギルドで国内を移動する護衛依頼として探した方が数があるとの見解であった。


「分かりました。そうします。ありがとうございました」

「他に必要な情報があれば、遠慮無く相談してくれ」

「頑張ってね」


 副ギルド長と受付のおばちゃんに見送られギルドを後にしたルカ。


「さて、今日の宿を決めないと。明日は旅の準備かな。あっ、あと、国境を越える前に姫様に手紙を書かなきゃ」


 日差しは大分傾きつつある。少し足早にルカは宿がある商業エリアに向けて歩き出した。

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