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魔王の噂


魔王が領土を広げ始めたという噂が近隣の街々を震撼させたのは、長い冬が過ぎ、春の声が聞こえ始めた頃の事だ。



一足早く雪解けを迎えた岩山が、みるみる緑に覆われていった。

周辺の荒野も様変わりして、荒れ果て、痩せ切っていた裸の土地は、今や濃い緑と愛らしい赤い小花で一杯の花畑だ。

その知らせをもたらした隊商によると、巨大な鎌を携えた魔王が奇妙な石塔に立ち、新たな領土を睥睨していたのだという。

だが、程なく魔王は、美しい花園を無残に破壊してしまった。

かの魔王にも花を愛でる心があるのかと思い始めていた人々は、その知らせに、身を震わせた。


勇者ジローマルは、あの魔王は無害だ、と言った。


だが、現にこうして支配地を広げつつあるではないか。

川の流れさえ変えて、思うまま大地を弄る魔力の猛威には、脅威を覚えずにはいられない。


やはり、その存在自体、もはや捨て置く事はできない。


ついに領主は、首都の大神殿に、高位の聖女派遣を要請する決意を固めた。

それは暗に、後には引けない魔王との戦いを意味していたのであるが。

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