思い出した罪
――あ。
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声が出なかった。
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目の前に。
倒れている少年。
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血。
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泣き叫ぶ澪。
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震えている零。
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そして。
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その中心にいる。
幼い自分。
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笑っていた。
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「……僕が。」
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現在の悠の唇が震える。
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「やった。」
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記憶が。
途切れない。
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あの日。
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黒瀬に追い詰められ。
能力を暴走させた。
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最初は。
ただ逃げたかった。
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澪を助けたかった。
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それだけだった。
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けれど。
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感情が。
止まらなかった。
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恐怖。
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怒り。
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憎しみ。
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全部が。
一つになった。
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そして。
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能力が。
周囲を飲み込んだ。
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「……やめて。」
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澪が。
小さく呟く。
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でも。
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もう止まらない。
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記憶の中。
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幼い悠が。
倒れた少年を見ている。
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その少年は。
鳳園で一緒に暮らしていた。
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名前は。
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「……蓮。」
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悠の口から。
名前が零れる。
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如月が。
息を呑んだ。
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「思い出したか。」
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「うん。」
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「全部?」
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「……少しずつ。」
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悠は。
自分の手を見る。
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今は。
何も付いていない。
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それでも。
あの日の感触だけは。
消えない。
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「僕が。」
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「蓮を。」
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言葉が。
続かない。
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澪が。
首を横に振る。
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「違う。」
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「違わない。」
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「悠くん。」
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「僕の能力で。」
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「蓮を傷つけた。」
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「……うん。」
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澪は。
泣きながら頷いた。
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「でも。」
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「殺してない。」
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悠の目が。
大きく開く。
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「……え?」
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「蓮くんは。」
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「生きてる。」
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時間が。
止まったように感じた。
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「嘘。」
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「本当。」
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「じゃあ。」
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悠が。
周囲を見渡す。
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「どうして。」
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「僕は。」
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「殺したと思ってたんだ。」
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黒瀬が。
静かに笑った。
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「そう思わせた。」
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「……。」
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「君の記憶を操作する際。」
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「最も強かった恐怖を。」
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「そのまま残した。」
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「だから。」
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「君は。」
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「自分が彼を殺したと思い込んだ。」
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悠の身体が。
震える。
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「じゃあ。」
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「十二年間。」
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「僕が苦しんでたのは。」
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「全部。」
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「……君を制御するためだ。」
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黒瀬の言葉に。
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悠は。
ゆっくり顔を上げる。
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「……ふざけるな。」
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声が。
低い。
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「僕が。」
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「どれだけ。」
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「自分を嫌いになったと思ってる。」
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黒瀬は。
何も答えない。
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「毎日。」
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「普通に笑って。」
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「普通に話して。」
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「普通に生きて。」
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「その裏で。」
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涙が。
一滴。
落ちる。
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「ずっと。」
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「僕は。」
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「自分が人を殺したと思ってた。」
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「なのに。」
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「それすら。」
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「お前たちが作ったものだったのか。」
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能力が。
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再び。
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周囲を震わせる。
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けれど。
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今度は。
暴走していない。
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悠自身が。
力を握っている。
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「……澪。」
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「うん。」
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「どうして。」
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「僕に言わなかった。」
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澪は。
しばらく黙って。
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「怖かったから。」
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「何が?」
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「悠くんが。」
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「全部思い出したら。」
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「また。」
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「自分を壊すと思った。」
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「……。」
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「だから。」
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「私たちで決めた。」
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零が。
静かに続ける。
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「お前には。」
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「普通に生きてほしかった。」
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「普通に笑って。」
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「普通に友達を作って。」
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「普通に。」
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「高校生をやってほしかった。」
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悠は。
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朝倉を見る。
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そして。
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小さく笑った。
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「……そっか。」
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「悠?」
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「じゃあ。」
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「今まで。」
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「ちゃんと普通に。」
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「生きられてたのかな。」
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澪は。
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「うん。」
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と答えた。
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「ちゃんと。」
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「笑えてたよ。」
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悠は。
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目を閉じる。
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そして。
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ゆっくり息を吐いた。
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「……よかった。」
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その瞬間。
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背後から。
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声がした。
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「――悠。」
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聞き覚えのある声。
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三人が振り返る。
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倒れていた朝倉が。
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ゆっくりと。
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身体を起こしていた。
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「……大丈夫?」
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悠が駆け寄る。
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「うん。」
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朝倉は。
少しだけ笑う。
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「でも。」
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「一つだけ。」
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「聞いていい?」
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「何?」
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「さっき。」
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「誰かの名前。」
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「呼んでたよね。」
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悠の表情が。
一瞬だけ固まる。
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「……蓮。」
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「誰?」
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悠は。
答えようとして。
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やめた。
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まだ。
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全部は。
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話せない。
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けれど。
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今度は。
笑って誤魔化さなかった。
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「そのうち。」
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「ちゃんと話す。」
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朝倉は。
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「うん。」
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と頷いた。
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その直後。
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実験室の奥で。
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カチッ。
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何かのスイッチが入った。
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黒瀬が。
初めて。
明らかに動揺した。
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「……まずい。」
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悠が振り返る。
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「何が?」
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黒瀬は。
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答えない。
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ただ。
壁の奥から。
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警告音が鳴り響いた。
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そして。
スピーカーから。
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『最終段階・第二フェーズを開始します』
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無機質な声が。
実験室に響いた。
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黒瀬の顔から。
血の気が引いた。
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「……誰が。」
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「まだ。」
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「実験を続けているんだ……?」




