↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壊れた僕は、今日も笑う。  作者: ニィギンヤ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/81

笑わない力

 機械が。


 悲鳴を上げている。


⸻


 ギギギギ……。


⸻


 壁が揺れる。


 床に亀裂が走る。


⸻


 それでも。


 悠は動かなかった。


⸻


 涙を流したまま。


 黒瀬を見ている。


⸻


「……これは。」


⸻


 黒瀬が呟く。


⸻


「今までとは違う。」


⸻


 当然だった。


⸻


 今までの悠は。


 怒りを隠していた。


 恐怖を隠していた。


 悲しみを隠していた。


⸻


 笑うことで。


 全部を押し込めていた。


⸻


 けれど。


 今は違う。


⸻


「怖い。」


⸻


 悠が言う。


⸻


「苦しい。」


⸻


「嫌だ。」


⸻


「逃げたい。」


⸻


 一つずつ。


 自分の感情を口にする。


⸻


 そのたびに。


 周囲の空間が歪んでいく。


⸻


「でも。」


⸻


 悠は。


 朝倉を見る。


⸻


「それでも。」


⸻


「助けたい。」


⸻


 ドンッ!!


⸻


 衝撃。


⸻


 床が一瞬で砕けた。


⸻


「なっ……!」


⸻


 黒瀬が後退する。


⸻


 悠の周囲に。


 透明な壁のようなものが生まれていた。


⸻


 それは。


 悠自身を守るように。


 澪と朝倉を守るように。


 広がっていく。


⸻


「防御……?」


⸻


 黒瀬が呟く。


⸻


「違う。」


⸻


 如月が。


 壁の向こうから答える。


⸻


「こいつの能力は。」


⸻


「そんな単純なものじゃない。」


⸻


 悠を見る。


⸻


「昔から。」


⸻


「そうだった。」


⸻


「悠は。」


⸻


「自分が傷つくことで。」


⸻


「周りを守ってた。」


⸻


 悠は。


 ゆっくり首を振る。


⸻


「違うよ。」


⸻


「今は。」


⸻


「僕だけが傷つく必要なんてない。」


⸻


 その瞬間。


⸻


 透明な壁が。


 一気に広がった。


⸻


 黒瀬を。


 機械を。


 実験室そのものを。


⸻


 押し返す。


⸻


「ぐっ……!」


⸻


 黒瀬の身体が。


 壁へ叩き付けられる。


⸻


 機械が倒れる。


⸻


 朝倉を照らしていた照明も消えた。


⸻


「朝倉さん!」


⸻


 悠が駆け寄る。


⸻


 その身体を起こす。


⸻


「……ん。」


⸻


 小さく。


 朝倉が呻いた。


⸻


「神……代……君?」


⸻


「うん。」


⸻


「ここ……。」


⸻


「もう大丈夫。」


⸻


 その言葉を口にした瞬間。


⸻


 悠は気付いた。


⸻


 自分が。


 笑っていない。


⸻


「……。」


⸻


 それなのに。


 怖くなかった。


⸻


 むしろ。


 少しだけ。


 楽だった。


⸻


「神代君。」


⸻


 朝倉が。


 ぼんやりと悠を見る。


⸻


「泣いてる?」


⸻


「……うん。」


⸻


「珍しい。」


⸻


 朝倉は。


 少しだけ笑った。


⸻


「なんか。」


⸻


「そっちの方が。」


⸻


「安心する。」


⸻


「……え?」


⸻


「いつもの神代君。」


⸻


「笑ってるけど。」


⸻


「たまに。」


⸻


「すごく遠くにいるみたいだから。」


⸻


 悠は。


 何も言えなかった。


⸻


 ◇


⸻


 その時。


⸻


「悠!」


⸻


 澪の叫び。


⸻


 振り返る。


⸻


 黒瀬が。


 ゆっくり立ち上がっていた。


⸻


 白衣は破れ。


 額から血が流れている。


⸻


 それでも。


 笑っている。


⸻


「素晴らしい。」


⸻


「……。」


⸻


「ようやく。」


⸻


「本来の力が出た。」


⸻


 悠の目が。


 冷たくなる。


⸻


「僕の力を。」


⸻


「勝手に決めないで。」


⸻


 黒瀬は。


 一瞬黙った。


⸻


「……そうか。」


⸻


「そういう目を。」


⸻


 黒瀬が。


 懐から何かを取り出す。


⸻


 小さな黒い端末。


⸻


「なら。」


⸻


「次は。」


⸻


 ピッ。


⸻


 建物の奥で。


 いくつものロックが解除される音。


⸻


 ガチャン。


⸻


 ガチャン。


⸻


 ガチャン。


⸻


 澪の顔が。


 青ざめる。


⸻


「黒瀬。」


⸻


「何をするつもり?」


⸻


「決まっているだろう。」


⸻


 黒瀬は。


 静かに笑った。


⸻


「実験体を。」


⸻


「一人。」


⸻


 そして。


 廊下の奥から。


⸻


 重い足音が響いた。


⸻


 ドン。


⸻


 ドン。


⸻


 ドン。


⸻


 悠が。


 そちらを見る。


⸻


 暗闇の中から。


 一人の少年が姿を現した。


⸻


 年齢は。


 悠と同じくらい。


⸻


 無表情。


⸻


 首元には。


⸻


 銀色の鈴。


⸻


 悠の顔から。


 血の気が引いた。


⸻


「……零?」


⸻


 如月が。


 息を呑む。


⸻


「違う。」


⸻


 少年が。


 ゆっくり顔を上げる。


⸻


 その瞳は。


 悠を見ていた。


⸻


「僕は。」


⸻


「零じゃない。」


⸻


 一拍。


⸻


「君だよ。」


⸻


 悠は。


 言葉を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。