↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壊れた僕は、今日も笑う。  作者: ニィギンヤ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/81

憎悪の形

 写真が。


 一枚。


 また一枚。


⸻


 宙へ浮かんでいく。


⸻


 悠の周囲を。


 ゆっくりと回り始めた。


⸻


「悠!」


⸻


 如月が叫ぶ。


⸻


「力を止めろ!」


⸻


「止めてる。」


⸻


「……何?」


⸻


 悠は。


 自分の手を見る。


⸻


「これ。」


⸻


「僕がやってるんじゃない。」


⸻


 写真が。


 突然。


 壁へ突き刺さった。


⸻


 バンッ!!


⸻


 その衝撃で。


 部屋全体が揺れる。


⸻


 澪が。


 悠へ近付く。


⸻


「悠くん。」


⸻


「こっち見て。」


⸻


 悠は。


 澪を見る。


⸻


「……何?」


⸻


「私を見て。」


⸻


「うん。」


⸻


 澪は。


 ゆっくり。


 悠の手を握った。


⸻


「大丈夫。」


⸻


 その瞬間。


⸻


 写真が。


 床へ落ちる。


⸻


 能力が。


 少しだけ弱まった。


⸻


「……。」


⸻


 悠は。


 自分でも驚いていた。


⸻


「澪。」


⸻


「何?」


⸻


「なんで。」


⸻


「僕に触ると。」


⸻


「力が弱くなる?」


⸻


 澪は。


 少しだけ笑う。


⸻


「昔から。」


⸻


「そうだったから。」


⸻


「……昔から?」


⸻


「うん。」


⸻


 澪は。


 悠の手を離さない。


⸻


「悠くんが。」


⸻


「怒ってる時。」


⸻


「怖がってる時。」


⸻


「私が手を握ると。」


⸻


「少しだけ。」


⸻


「落ち着いた。」


⸻


 悠は。


 何も言えなかった。


⸻


 そんな記憶。


 自分にはない。


⸻


 でも。


⸻


 不思議と。


 手の温度だけは。


⸻


 知っている気がした。


⸻


 ◇


⸻


「……まだ終わってない。」


⸻


 黒瀬の声。


⸻


 三人が振り返る。


⸻


 いつの間にか。


 部屋の入口に。


 黒瀬が立っていた。


⸻


「むしろ。」


⸻


「ここからだ。」


⸻


 黒瀬が。


 リモコンのような機械を取り出す。


⸻


 カチッ。


⸻


 壁の奥から。


 低い機械音。


⸻


 ウィィィン……。


⸻


 床が開く。


⸻


「何だ……?」


⸻


 地下から。


 白い光が漏れてくる。


⸻


 黒瀬が。


 悠を見つめる。


⸻


「君の記憶は。」


⸻


「完全には消えていない。」


⸻


「だから。」


⸻


「もう一度。」


⸻


「同じ条件を作ればいい。」


⸻


「……同じ条件?」


⸻


 黒瀬は。


 淡々と答える。


⸻


「十二年前。」


⸻


「君が能力を最大まで引き出した時と。」


⸻


「同じ条件だ。」


⸻


 悠の表情が。


 固まる。


⸻


「やめて。」


⸻


 澪が。


 黒瀬を睨む。


⸻


「もう。」


⸻


「この子を壊さないで。」


⸻


「壊した?」


⸻


 黒瀬は。


 首を傾げる。


⸻


「私は。」


⸻


「彼の可能性を引き出しただけだ。」


⸻


「ふざけないで!」


⸻


 澪が叫ぶ。


⸻


 悠は。


 そんな澪を見つめる。


⸻


「澪。」


⸻


「……何?」


⸻


「十二年前。」


⸻


「僕が。」


⸻


「一番怖かったことって。」


⸻


 澪は。


 答えない。


⸻


 目を逸らす。


⸻


「……澪?」


⸻


「言えない。」


⸻


「どうして。」


⸻


「それを言ったら。」


⸻


「悠くんは。」


⸻


「全部思い出すから。」


⸻


 悠は。


 静かに息を吐いた。


⸻


「だったら。」


⸻


「僕が聞く。」


⸻


 澪の目が。


 揺れる。


⸻


「教えて。」


⸻


「僕は。」


⸻


「何を。」


⸻


「怖がってた?」


⸻


 長い沈黙。


⸻


 やがて。


⸻


 澪が。


 小さく口を開く。


⸻


「……私。」


⸻


「え?」


⸻


「悠くんが。」


⸻


「一番怖かったのは。」


⸻


「私が死ぬこと。」


⸻


 悠の瞳が。


 大きく揺れた。


⸻


 その瞬間。


⸻


 地下から。


⸻


 何かが。


 ゆっくりと。


 上がってきた。


⸻


 鉄製の台。


⸻


 そこに。


⸻


 一台の古い機械。


⸻


 そして。


 その隣には。


⸻


 朝倉が。


⸻


 眠ったまま。


 横たわっていた。


⸻


「……朝倉さん。」


⸻


 悠の声が。


 低くなる。


⸻


 黒瀬が。


 淡々と言う。


⸻


「さて。」


⸻


「十二年前の続きを。」


⸻


「始めようか。」


⸻


 悠の周囲で。


 空気が。


 再び歪み始めた。


⸻


 けれど。


⸻


 今度は。


⸻


 怒りだけではなかった。


⸻


 恐怖。


 悲しみ。


 罪悪感。


⸻


 そして。


⸻


 自分でも名前を付けられない。


⸻


 真っ黒な感情。


⸻


 それら全部が。


⸻


 一つに。


⸻


 重なっていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。