戻ってきた零
ドォン!!
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建物が大きく揺れた。
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天井から。
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細かな埃が降ってくる。
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「……何をした。」
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黒瀬が低く呟く。
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澪は答えない。
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ただ。
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悠の前へ一歩出た。
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「黒瀬。」
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「もう終わりにしよう。」
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「何を?」
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「十二年前の続きを。」
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黒瀬は鼻で笑う。
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「終わると思うか?」
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「君たちが。」
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「ここへ戻ってきた時点で。」
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再び。
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轟音。
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今度は。
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建物の外。
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何かが崩れた。
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「澪。」
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悠が声を掛ける。
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「朝倉さんは?」
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「地下。」
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「眠らせてある。」
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「案内する。」
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二人が走り出す。
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「待て。」
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黒瀬が手を上げる。
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その瞬間。
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廊下の奥から。
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黒い影が飛び込んできた。
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「悠!」
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聞き慣れた声。
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「零!」
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如月だった。
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制服は埃まみれ。
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頬には小さな傷。
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それでも。
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いつもの無表情だった。
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「無茶するな。」
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「お前に言われたくない。」
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「……それもそうだな。」
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ほんの一瞬。
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二人の間に。
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昔と同じ空気が流れた。
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三人でいた頃のような。
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懐かしい空気。
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だが。
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それを壊すように。
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「感動の再会は。」
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「後にしてもらおうか。」
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黒瀬が。
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手を伸ばした。
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空気が歪む。
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次の瞬間。
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廊下の壁が。
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内側から弾け飛んだ。
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「っ!」
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悠が身構える。
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飛んできた瓦礫が。
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悠の目の前で。
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止まった。
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「……。」
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宙に浮いている。
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悠自身が。
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無意識に。
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能力を使っていた。
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如月が目を見開く。
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「悠。」
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「今の……。」
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「分からない。」
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悠は。
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浮かんだ瓦礫を見る。
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「でも。」
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「守らなきゃって思った。」
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その瞬間。
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瓦礫が。
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一斉に黒瀬へ飛んでいく。
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黒瀬は片手を上げる。
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すべての瓦礫が。
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空中で止まった。
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「……まだ。」
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「その程度か。」
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黒瀬が指を鳴らす。
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瓦礫が。
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一斉に落下する。
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如月が叫ぶ。
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「逃げろ!」
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三人が散る。
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ドォン!!
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床が砕ける。
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「くそ……!」
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悠は立ち上がる。
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手を見る。
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震えている。
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怖い。
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怖いのに。
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何故か。
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頭の奥では。
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別の感情が。
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膨れ上がっていた。
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怒り。
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憎しみ。
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そして。
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殺したいという。
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真っ黒な感情。
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「……。」
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悠は。
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それを顔に出さない。
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いつものように。
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笑おうとする。
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口角を上げる。
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「大丈夫。」
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「まだ。」
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「平気だから。」
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澪の顔が。
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青ざめる。
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「……その顔。」
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「やめて。」
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「え?」
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「その笑い方。」
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「お願いだから。」
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澪の声が震える。
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如月も。
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悠を見つめていた。
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「悠。」
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「お前。」
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「今。」
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「何を考えてる。」
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「……何も。」
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笑う。
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いつもの笑顔。
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だけど。
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胸の奥では。
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どす黒い何かが。
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ゆっくりと。
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目を覚ましていた。
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そして。
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その感情に呼応するように。
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悠の周囲の空気が。
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大きく歪んだ。




