招待状
ホームルームが終わる。
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ざわめく教室。
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誰も。
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悠の手にある写真には気付かない。
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『鳳園へ来い。真実を知りたければ。』
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その文字だけが。
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頭から離れなかった。
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「神代。」
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低い声。
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如月だった。
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「その写真。」
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「誰にも見せるな。」
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悠は目を見開く。
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「知ってるの?」
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「……。」
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如月は小さく頷いた。
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「予想してた。」
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「向こうが。」
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「動き始めた。」
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「向こう?」
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「今は聞くな。」
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それだけ言うと。
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如月は教室を出て行った。
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◇
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昼休み。
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購買へ向かう途中。
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悠は廊下の窓から空を見上げた。
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厚い雲。
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今にも雨が降りそうだった。
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「神代君。」
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朝倉が紙パックのジュースを差し出す。
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「今日は私のおごり。」
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「え?」
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「この前。」
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「置いてきちゃったから。」
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屋上で残された。
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あの日のジュース。
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思い出して。
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悠は少し笑う。
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「ありがとう。」
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自然に出た笑顔。
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朝倉も微笑んだ。
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「最近。」
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「ちょっとだけ。」
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「笑い方が変わった。」
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「そうかな。」
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「うん。」
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「前より。」
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「無理してない。」
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その言葉が。
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少しだけ嬉しかった。
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◇
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放課後。
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校門を出ようとした時だった。
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「神代!」
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如月が珍しく。
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走ってきた。
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息を切らしている。
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「来るな!」
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その叫びと同時に。
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キィィィッ!!
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タイヤが悲鳴を上げる。
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一台の黒い車。
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猛スピードで。
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歩道へ突っ込んできた。
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「危ない!!」
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考えるより先に。
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身体が動く。
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朝倉を突き飛ばす。
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如月の腕を掴む。
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二人を引き寄せる。
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ドォン!!
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車は校門へ激突した。
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コンクリートが砕ける。
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煙。
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悲鳴。
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生徒たちが逃げ惑う。
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「朝倉さん!」
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「私は平気!」
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「神代君!」
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悠は返事をしようとして。
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止まる。
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車の運転席。
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誰も乗っていない。
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「……無人?」
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その時。
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後部座席の窓が。
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ゆっくり開いた。
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中には。
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一つの小箱。
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それだけ。
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如月の顔色が変わる。
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「神代!」
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「触るな!!」
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しかし。
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悠は。
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箱の蓋に書かれた文字を見てしまう。
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『悠へ』
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心臓が跳ねる。
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震える手で。
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蓋を開ける。
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中には。
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一つだけ。
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焦げた銀色の鈴。
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チリン……
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風もないのに。
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鈴が鳴った。
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その音を聞いた瞬間。
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頭の奥で。
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忘れていた記憶が。
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一気に溢れ出す。
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『悠!』
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『鈴を鳴らして!』
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『そうすれば見つけられるから!』
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少女の声。
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泣いている。
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炎。
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煙。
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崩れる天井。
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そして。
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小さな首に掛かった。
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銀色の鈴。
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「……澪。」
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その名前を口にした瞬間。
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遠くから。
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誰かの笑い声が聞こえた。
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「ようやく。」
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「思い出したね。」
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悠は振り返る。
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校門の向こう。
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人混みの中に。
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黒いフードの人物が立っていた。
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その人物は。
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ゆっくりと右手を上げる。
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まるで。
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「こっちへ来い」と誘うように。
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次の瞬間。
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人混みが横切り。
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姿は消えていた。
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悠の手には。
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焦げた銀色の鈴だけが。
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静かに残されていた。




