↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壊れた僕は、今日も笑う。  作者: ニィギンヤ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/80

招待状

 ホームルームが終わる。


⸻


 ざわめく教室。


⸻


 誰も。


⸻


 悠の手にある写真には気付かない。


⸻


『鳳園へ来い。真実を知りたければ。』


⸻


 その文字だけが。


⸻


 頭から離れなかった。


⸻


「神代。」


⸻


 低い声。


⸻


 如月だった。


⸻


「その写真。」


⸻


「誰にも見せるな。」


⸻


 悠は目を見開く。


⸻


「知ってるの?」


⸻


「……。」


⸻


 如月は小さく頷いた。


⸻


「予想してた。」


⸻


「向こうが。」


⸻


「動き始めた。」


⸻


「向こう?」


⸻


「今は聞くな。」


⸻


 それだけ言うと。


⸻


 如月は教室を出て行った。


⸻


 ◇


⸻


 昼休み。


⸻


 購買へ向かう途中。


⸻


 悠は廊下の窓から空を見上げた。


⸻


 厚い雲。


⸻


 今にも雨が降りそうだった。


⸻


「神代君。」


⸻


 朝倉が紙パックのジュースを差し出す。


⸻


「今日は私のおごり。」


⸻


「え?」


⸻


「この前。」


⸻


「置いてきちゃったから。」


⸻


 屋上で残された。


⸻


 あの日のジュース。


⸻


 思い出して。


⸻


 悠は少し笑う。


⸻


「ありがとう。」


⸻


 自然に出た笑顔。


⸻


 朝倉も微笑んだ。


⸻


「最近。」


⸻


「ちょっとだけ。」


⸻


「笑い方が変わった。」


⸻


「そうかな。」


⸻


「うん。」


⸻


「前より。」


⸻


「無理してない。」


⸻


 その言葉が。


⸻


 少しだけ嬉しかった。


⸻


 ◇


⸻


 放課後。


⸻


 校門を出ようとした時だった。


⸻


「神代!」


⸻


 如月が珍しく。


⸻


 走ってきた。


⸻


 息を切らしている。


⸻


「来るな!」


⸻


 その叫びと同時に。


⸻


 キィィィッ!!


⸻


 タイヤが悲鳴を上げる。


⸻


 一台の黒い車。


⸻


 猛スピードで。


⸻


 歩道へ突っ込んできた。


⸻


「危ない!!」


⸻


 考えるより先に。


⸻


 身体が動く。


⸻


 朝倉を突き飛ばす。


⸻


 如月の腕を掴む。


⸻


 二人を引き寄せる。


⸻


 ドォン!!


⸻


 車は校門へ激突した。


⸻


 コンクリートが砕ける。


⸻


 煙。


⸻


 悲鳴。


⸻


 生徒たちが逃げ惑う。


⸻


「朝倉さん!」


⸻


「私は平気!」


⸻


「神代君!」


⸻


 悠は返事をしようとして。


⸻


 止まる。


⸻


 車の運転席。


⸻


 誰も乗っていない。


⸻


「……無人?」


⸻


 その時。


⸻


 後部座席の窓が。


⸻


 ゆっくり開いた。


⸻


 中には。


⸻


 一つの小箱。


⸻


 それだけ。


⸻


 如月の顔色が変わる。


⸻


「神代!」


⸻


「触るな!!」


⸻


 しかし。


⸻


 悠は。


⸻


 箱の蓋に書かれた文字を見てしまう。


⸻


『悠へ』


⸻


 心臓が跳ねる。


⸻


 震える手で。


⸻


 蓋を開ける。


⸻


 中には。


⸻


 一つだけ。


⸻


 焦げた銀色の鈴。


⸻


 チリン……


⸻


 風もないのに。


⸻


 鈴が鳴った。


⸻


 その音を聞いた瞬間。


⸻


 頭の奥で。


⸻


 忘れていた記憶が。


⸻


 一気に溢れ出す。


⸻


『悠!』


⸻


『鈴を鳴らして!』


⸻


『そうすれば見つけられるから!』


⸻


 少女の声。


⸻


 泣いている。


⸻


 炎。


⸻


 煙。


⸻


 崩れる天井。


⸻


 そして。


⸻


 小さな首に掛かった。


⸻


 銀色の鈴。


⸻


「……澪。」


⸻


 その名前を口にした瞬間。


⸻


 遠くから。


⸻


 誰かの笑い声が聞こえた。


⸻


「ようやく。」


⸻


「思い出したね。」


⸻


 悠は振り返る。


⸻


 校門の向こう。


⸻


 人混みの中に。


⸻


 黒いフードの人物が立っていた。


⸻


 その人物は。


⸻


 ゆっくりと右手を上げる。


⸻


 まるで。


⸻


 「こっちへ来い」と誘うように。


⸻


 次の瞬間。


⸻


 人混みが横切り。


⸻


 姿は消えていた。


⸻


 悠の手には。


⸻


 焦げた銀色の鈴だけが。


⸻


 静かに残されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。