見つけた
避難誘導は。
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十分ほどで終わった。
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幸い。
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大きな怪我人はいない。
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崩れた壁も。
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訓練用の結界が暴走しただけだったらしい。
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教室には。
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安堵の空気が流れていた。
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「怖かったぁ……。」
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「寿命縮んだ。」
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「神代、本当にありがとな。」
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「いや。」
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「みんな無事で良かった。」
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笑う。
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いつも通り。
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その笑顔を見ても。
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誰も違和感を覚えない。
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……一人を除いて。
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◇
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職員会議室。
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「結界の暴走?」
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担任が眉をひそめる。
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「原因は?」
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「まだ不明です。」
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「外部から干渉された可能性があります。」
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教師たちの表情が変わる。
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「侵入者か。」
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「現在、学園内を捜索中です。」
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◇
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放課後。
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校門。
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「神代君。」
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朝倉が追い掛けてきた。
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「一緒に帰ろ。」
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「うん。」
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二人で歩く。
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今日は。
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珍しく朝倉も何も話さない。
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沈黙だけが続く。
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「……さっき。」
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ようやく口を開いた。
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「怖かった?」
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悠は少しだけ笑う。
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「うん。」
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「正直。」
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「すごく怖かった。」
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「でも。」
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「逃げなかった。」
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「逃げられなかった。」
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朝倉はその言葉を聞いて。
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何も返せなかった。
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その”逃げられなかった”には。
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何か別の意味がある。
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そんな気がした。
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◇
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帰宅。
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玄関。
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靴を脱ぐ。
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鍵を閉める。
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静かだ。
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静かすぎる。
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その時。
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カタン。
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部屋の奥から。
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小さな音がした。
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息が止まる。
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「……誰?」
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返事はない。
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一歩。
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また一歩。
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リビングへ向かう。
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誰もいない。
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「気のせい……?」
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そう思った。
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机の上を見るまでは。
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一枚の紙。
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さっきまで。
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そこには無かった。
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震える手で拾う。
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白い紙。
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たった一行だけ。
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『やっと見つけた。』
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頭の中が真っ白になる。
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誰が。
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どうやって。
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鍵は閉まっていた。
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窓も閉まっている。
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なのに。
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紙だけが置かれていた。
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次の瞬間。
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バサッ。
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カーテンが揺れた。
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風は吹いていない。
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悠は勢いよく窓を開ける。
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「誰だ!」
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外には。
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誰もいなかった。
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◇
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同じ頃。
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学園から少し離れたビルの屋上。
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黒いフードの人物が。
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街を見下ろしていた。
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「笑っている。」
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小さく呟く。
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「まだ。」
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「ちゃんと笑えるんだな。」
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その声は。
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どこか懐かしそうだった。
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「でも。」
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ゆっくりと口角が上がる。
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「今度こそ。」
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「思い出してもらおう。」
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「全部。」
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フードの奥で。
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その人物は静かに笑った。
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◇
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夜。
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ベッドに横になる。
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眠れない。
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机の上には。
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あの紙。
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『やっと見つけた。』
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その文字だけが。
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頭から離れない。
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「誰なんだ……。」
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答えはない。
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ただ。
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胸の奥で。
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忘れたはずの記憶が。
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ゆっくりと。
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軋み始めていた。




