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【O.PCO】結論:デバフ装備が最強です。〜呪いのアイテムしか装備できないせいで、《死神》と呼ばれるようになりました。  作者: 水定ゆう
EX3 《死神》がバンドを組んでみた

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第308話 五つ目のアルカナ

呪いの装備は呪いの装備に惹かれ合う。

「グリムさん、牙が手に入りましたよ!」

「いいね、D。私は……うわぁ」


 ハンタータイガーを倒した。

 ドロップアイテムを確認する。

 Dは牙を見せるので、グリムも手に入ったアイテムを見せようと思った。

 でも見せなくてよかった。グリムが手に入れたのは、ハンタータイガーの目だった。


「どうしたんですか、グリムさん?」

「なんでもないよ。それより、ニャーぷる」

「ん?」


 木の幹に背中を預けているニャーぷる。

 眠たそうに、フードを被っている、

 コクンコクンと首が上下する中、声を掛けたので、パッと瞼を開く。


「どうしたのぉー」

「さっきはありがとう。援護射撃、助かったよ」

「あぁ、そんなことかぁ。ふはぁ~、全然大丈夫だよぉ」


 欠伸をしたニャーぷる。睡魔が襲い掛かっているらしい。

 眠すぎるせいか、会話も上手く成り立たない。

一体どれだけの時間夜更かしをしていたのだろうか?

 グリムは分からない。ましてや口出しする程でもない。


「にしても、急にいなくなったわね」

「そうだねー。何処行ってたのー?」


 ニャーぷるは何故か、急に姿を消した。

 恐らくは急襲を仕掛けようと思っていたのだ。

 頃合いを見て攻撃し、アシストをする。見事にハマったのは言うまでもない。


「うぅ~ん? そこにいたよぉ」


 ニャーぷるはピンと指を指す。

 如何やらアシストのために姿を隠していた。

 自分の立ち回りが分かっている証拠で、普段からオンラインゲームを遊んでいるから……ん?


「「「えっ、そこ?」」」


 グリムもDでさえもポカンとしてしまった。

 ニャーぷるが指を指したのは、森の中ではなかった。

 開けた場所で、陽の光が当たっている。隠れるなんて無理で、幾ら意識をしていなくても視界に収まるのだ。


「どういうことよ! 隠れてないじゃない」

「隠れてるよぉ。ほらぁ」


 ニャーぷるはフードを改めて深く被った。

 その瞬間、ニャーぷるの姿がパッと消える。

 目のまえから忽然と姿を消すと、全員が目を疑った。


「えっ、本当に消えちゃいましたよ!」

「どういうことー?」

「なにかのスキルよね。でも、姿を消すスキルって【透明化】?それとも【光屈折】?」

「もしくは、【陽炎】かもね」


 姿を消すスキルはPCOに幾つか存在している。

 けれど数はそこまで多くはない。

 様々な要素を拾い上げれば特定も難しくはないが、如何にも違うらしい。


「全部違うよぉ」

「「違う!?」」


 それなら一体なんのスキルだろうか?

 もしかして、いや、もしかしなくても、通常入手可能なスキルとは違う?

 グリムとミュージュは賢いので、ある程度推測した。


「もしかして、ユニークスキル?」

「それともエクストラスキル?」

「正解はぁ、ユニークスキルだよぉ」


 パッと姿を現したニャーぷる。

 如何やら一歩たりとも動いていなかったらしい。

 フードを脱ぐと首を振り、大きな欠伸を掻いた。


「私のユニークスキル、【超隠密】だよぉ」


 正解はユニークスキル、【超隠密】だった。

 言わずもがな、隠密能力を極限まで高める。

 認識阻害効果により、一定時間の間、ある条件の下で、完全に姿も音も気配さえ殺すことが出来てしまう。まさしく盗賊や斥候には喉から手が出るくらい欲しいスキルで、コレを手にしてしまった以上、探索型以外はこなす訳にはいかない。そんな使命感まで抱いてしまう激重なスキルだった。


「【超隠密】ですか?」

「【隠密】は聞いたことあるけど、それの上位互換ってことよね?」

「正解だよぉ。私ねぇ、実は呪いの装備ぃ、〈隠者のボウガン〉を持っているんだぁ」

「「「えっ!?」」」


 グリム達は言葉を詰まらせた。

 【超隠密】というスキルも気になるが、それ以上に気になる単語が飛び出す。

“隠者”。その言葉は、大アルカナでしか聞くことがない。


「ニャーぷる、今、なんって言った?」

「ん?」

「大アルカナの一つ、“隠者”って答えたわよね?」

「そうそう~、私の装備はぁ、呪いの装備ぃ。アルカナシリーズの一つでぇ、隠者だってさぁ」


 ビンゴ。まさかこんな偶然があるのだろうか?

 ニャーぷるを置き去りにして、動揺が伝染する。

 お互いの顔を見合わせると、こんな偶然が存在するのか疑いの余地しかない。


「どういうことよ。こんな偶然あるの?」

「分かりません。ですが、その……」

「ちょっと怖いかもねー」

「もしかすると、図られているとかかな?」


 あり得ない訳ではないが、あり得ないことの連続だった。

 まさかこの短期間で、同系統の呪いの装備を持ったプレイヤーに出会うなんて考えられない。どんな偶然が積み重なってできた塔なのか? 明らかに図られているとしか言いようがない。


「もしかすると、呪いの装備同士は引き合うのかもしれないね」

「なによそれ、怖っ」

「磁石みたいなものですかね?」

「可能性はあるよ。ここまで来ると、少し不気味だね」

「あはは、ずっと不気味だよー」


 グリム達は必然に変えられた出会いに恐怖した。

 ニャーぷるは首を捻り、何に怯えているのか尋ねる。

 流石にニャーぷるもそんな偶然を信じられないだろう。


「どうしたのぉ? なにかあったぁ?」

「なにかあったね」

「大変なことなのぉ?」


 グリム達は全員、大アルカナの呪いの装備を付けている。

 想像以上に不思議なことに、ニャーぷるの頭とお尻からネコの耳と尻尾が生えた。


 ピコンと飛び出す紫色の耳と尻尾。

 グリム達はそっちが気になってしまうものの、ニャーぷるは目が右往左往する。

 装備を確認すると、確かに大アルカナそれぞれのマークが刻まれていた。


「実は、私達も持っているんだよ、呪いの装備」

「えっ!?」

「しかも全員が……」

「大アルカナの装備なんだよー!」


 それを聞いたニャーぷるは、当然混乱していた。

 頭を抱えると、ピコンと生えた猫耳を押さえ付ける。


「えっ、はい? 嘘っ、えっと……えっと、えっ?」

「だ・か・ら、全員が大アルカナの呪いの相違を持っているのよ」


 ミュージュはハッキリと伝えた。

 ここに居る全員が大アルカナの呪いの装備を持っている。

 あまりにも偶然を通り越している。恐怖としか言いようがなく、ニャーぷるも震える。


「いや、待ってよぉ。それって偶然じゃ……いや」


 ニャーぷるは突然閃いた。

 頭の中がフル回転すると、自問自答を始める。

 早口で何を言っているのか、ギリで聞き取れる程度だった。


「それって偶然じゃないよねぇ? 完全に必然だよねぇ? もしかすると呪いの装備同士には何かしらの共通項が存在しているのかなぁ? そもそも呪いの装備はかなりレアなアイテムだからぁ、入手出来ること自体が何かしらの運命に縛り付けられているとかぁ? 単なるコミュニケーションツール以上の裏が存在しているぅ? もしかして運営は私達に何かさせたいのかなぁ? 集めるといいことがあるぅ? データ収集の際に生じる動揺もぉ、重要なデータだとは思うけどぉ、それを提供することでぇ……そんなゲーム遭ったようななかったようなぁ? うーん、接待には遭ったかもしれないけどぉ……」


 ニャーぷるが覚醒した。何故か饒舌になっていた。

 これはゲームの話題だからだろう。好きな事にはトコトン猛進する。

 それがニャーぷるの本質の一つで、グリム達は呆気に取れる。


「ニャーぷる、大丈夫?」

「ぅ~ん、分かんないよぉ。でも面白いねぇ!」


 ニャーぷるも訳が分からなかった。

 考えることを諦めると、お手上げ状態になりつつ、それさえ楽しんでしまう。


「よく分からないけどさぁ、引かれ合っているのは運命ってことでしょぉ? あははぁ、知り合いと引かれ合ってよかったよぉ」

「えっと、ニャーぷるは肯定派?」

「肯定も否定もしないよぉ。引かれ合うならぁ、偶然でも必然でもぉ関係無いでしょぉ?」


 肯定もしなければ否定もしない。

 そもそも、それは必要ではない要素だ。

 知り合い同士で出会えたことが、何よりも運命じみていて面白い。

 結局の所、解釈次第で楽しむのが一番だった。


「なんだか呑気ね」

「そうだね。でも、ニャーぷるの一面が見られてよかったよ」


 結局の所、不思議な話ではあった。

 あまりにも必然過ぎるものの、その必然に救われた。

 ニャーぷるの面白い一面が見られたこと。それだけで価値はあった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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