第305話 ニャーぷるを誘ってみた
少し設定を変えたり、眠り姫と友達になったり。
途中で設定が変わるのはよくあることなので許して。
童輪はバイクを走らせていた。
いつも通りと言うべきか、大学まで続く道は閑散としている。
それもその筈、主要な国道から少し外れているので、その間の坂道ではほとんど行き交わない。それがバイク通学の利点で、桜浜大学はほとんどの学生が、電車通学だった。
「ふぅ。さてと……ん?」
駐車場に童輪はバイクを停めた。
ヘルメットを脱いで首をフッと横に振る。
すると視線の先に気になる姿を見つけた。
まさかとは思ってしまった。
ここは駐車場だ。普通に危ない。
これは声を掛けて注意するべきだと、余計な正義感が働く。
「いや、そんな筈ないよ」
童輪は首を振ってしまい、目を伏せた。
けれど顔を上げれば、やはりそこに居た。
本当に危ないので、童輪はサッと近付いた。
「紫川先輩」
「ふにゃぁ~ご」
大きな欠伸を掻いたのは、眠言だった。
一体何処で寝ていたのかと言えば、駐車場の中だった。
日当たりのいい場所。何匹ものネコ達が集まって日向ぼっこをする中で、何故か人間が混ざっていた。
「こんな所で寝ていると、危ないですよ?」
「ふにゃぁ? 誰かに話し掛けられているようなぁ?」
「はい、話し掛けてますよ。紫川先輩、先輩」
童輪は体を擦ってみた。
嫌がるような素振りを見せつつも、瞼が少しだけ開いた。
映ったのは童輪の姿が映り込んだ。
ボヤけてしまい、上手く見えないが、何となくの輪郭で判断する。
「ん~? その声、グリムぅ~?」
「そうです。なんでここで寝ているのかな?」
童輪は眉根を寄せてしまった。
まさか駐車場で寝ている人を見るなんて、人生でもそう経験しない筈だ。
最もな理由があるようには見えないが、一応聞いてみる。
多分、日向が温かかったからだと思う。
「日向で温かいから~」
「やっぱり。でも先輩、ここだと危ないですよ?」
「平気だよぉ~。ネコさん達も寝ているんだよぉ~?」
本当にネコみたいな感想だった。
想像していた通りで逆に拍子抜けしてしまう。
童輪は言葉を失うと、頬を掻き、何と言い返せばいいのか分からなかった。
「それよりグリムぅ~」
「なんですか?」
「敬語とかつまんないよぉ~。後、先輩呼びは嫌だなぁ~。ふはぁ~」
何故そこにだけ違和感を感じるのだろうか?
分からない。不思議って程ではないけれど、本当にネコのように自由気まま。
相も変わらず目の下に隈を作ると、童輪に自分のルールを突き付けた。
「分かった。それじゃあ眠言」
「(ピコン)!」
「今音が聞こえたような……ん?」
「ヘッドホンだよぉ~。ゲームのスタミナが回復した音ぉ~」
何処からともなく紫色のヘッドホンを取り出した。
猫耳型をしていて、音の正体はソシャゲのスタミナ回復のお知らせだったらしい。
本当に猫耳が生えたのかと想像した自分を恥ずかしく思った。
「ふはぁ~」
起き上がった眠言は、野良ネコを撫で回した。
相当眠言に懐いているのか、背中を撫でられても逃げもしない。
背筋を伸ばして嬉しそうにしていると、心地がよさそうだった。
「懐いているんだね」
「あはは、そうなのかなぁ?」
「そうだよ。なにせ、眠言の周りに集まってきているよ」
たくさんのネコ達が、眠言を中心に集まっていた。
もはやネコ達のリーダーで、気が付けば童輪も取り囲まれている。
少し動くと、ネコ達を踏んでしまいそう。危ないなと思いつつ、当の本人は気にも留めなかった。
「おっとっと……危ない危ない」
「大丈夫だよぉ。みんな耳がいいからねぇ」
確かにネコ達の耳がピクピク動いていた。
相当周囲を警戒しているらしい。
休んでいるように見えて、自然界で生きているからこそ、少しの違和感にも敏感だった。
(参考になるね)
モンスターとの立ち回り方と比べてしまった。
童輪も大概かなと思いつつも、一つの要素として捉える。
すぐさま意識を切り替えると、眠言が口を開いた。
「そんなことよりさ~、どうしたのぉ?」
このタイミングで眠言は童輪に訊ねた。
体を完全に起こし、胡坐を掻くと、膝の上にネコを乗せる。
目元を擦りながら眠そうに欠伸をすると、童輪の言葉を待っていた。
(誘われているのかな?)
眠言は完全に受動型だった。
けれど童輪はそんなこと知る由もない。
少し迷いつつも、本題に移ってみる。
「眠言、少し相談があるんだけどいいかな?」
「なぁにぃ?」
眠言はチラリと視線を向けた。
これが聞く姿勢のようで、礼儀はよくない。
本当に自由気ままなネコのようで、童輪は言葉を選んだ。
「今度、PCOでイベントがあるよね?」
「ん~あるねぇ」
「そのイベントに参加したいんだ。力を貸してくれないかな?」
単刀直入に、すぐさま主題に移った。
現状、メンバーは四人しか居ない。
眠言も見た通りの四人組で、イベントに参加出来ない。
イベントに参加するためには五人必要だ。
これは絶対条件で、集めなければ参加が出来ない。
もちろん完全に出来ない訳ではないが、連携なんて無理だった。
少しでも事情を知っている人間に集まって欲しい。
とは言え生憎と、童輪達の周りには、戦闘系のプレイヤーは多くは無い。
生産系がほとんどなので困り果てていた所、偶々眠言に出会った。
これは誘うしかない。ダメもとでも、声を掛けてみた次第だ。
「どうかな、イベントの間だけでもいいから、力を貸してくれない?」
「ん~、いいよぉ」
「そっか。いいんだ……いいの!?」
まさかのOKを貰ってしまった。
一瞬、童輪の気のせいかと思った。
けれど改めて頭の中で整理し、眠言に訊ねると、コクコクと首を縦に振った。
「別に構わないよぉ。私もさぁ、同じことを言おうと思ってたからねぇ」
流石はゲーマーな眠言だった。
好きなゲームとのコラボでもあるので、是非参加したい。
けれど陰の者であり、圧倒的に友達の少ない眠言にとっては夢のまた夢。
そう思っていた所に面白そうなプレイヤー、童輪達が現れたので、この機会を逃すまいと思ったのだった。
「いいんだね。私達とイベント参加してくれるんだね」
「いいよぉ。ふはぁ~、でもねぇ、私ってこんなだよぉ?」
眠言は自分の悪い所に目を瞑らない。
いつも気だるげで睡魔と戦い続けている。
戦闘面では役に立てるか心配で、迷惑を掛けると気にしていた。
「構わないよ。私達も、似たようなものだからね」
眠言とは少しだけ違うかもしれない。
否、童輪達が気が付いていないだけで、同じものを抱えていた。
だからこそ共感出来る。童輪は眠言に手を差し伸べた。
「それじゃあ一緒に頑張ろうか、眠言」
「うーん、よろしくねぇ」
眠言も開いていた手を差し出した。
ギュッと手を掴むと、指にはたこがある。
本当にゲームが好きらしいと、童輪は思うと、頼りにしたいと思った。
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