竜 VS 悪魔 02
「我が竜よ、あの悪魔を焼き払えっ!!!」
竜の背に乗ったアルスフォードが、腕を翳し、ポーズを決めた。
それに応える様、竜は唸り声を上げ、口内から白く光る光線を放つ。
凄まじい魔力のブレスが、瓦礫に埋もれているデーモンに直撃し、
ブレスの衝撃波が周囲の瓦礫を一瞬で蒸発させた。
「ぬうっ・・・!?」
しかし、デーモンの身体がバラバラに砕ける事はない。
デーモンの身体を覆う結界が、竜の光線を防いでいる。
「なんだ、あの結界は!!! 硬すぎるだろう!」
竜はデーモンへ向け、ブレスを浴びせ続けるが、結界を砕く事は出来ずにいる。
その時、悪態をつくアルスフォードへ、デバイスから通信が入る。
相手はセンリであった。
「センリか!? なんだこんなときに!」
『アル、一度その竜のブレスを止めろ』
「・・・わかった」
アルスフォードには、センリの指示の理由が分からなかったが、しかし彼女は、センリの事を信頼している。
センリには何か、考えがあるのだろうと、すぐにそう察した。
竜がブレスの放出を止めると、無傷のデーモンはゆっくりと立ち上がる。
「ぬう・・・」
アルスフォードが眉をひそめる。
デーモンは、アルスフォードへ反撃を繰り出す為に、右側の背から生えている5本の翼を前方へ向けた。
その時。
デーモンの右肩に、センリが飛び乗った。
そして、虹色の魔力を纏う剣で、デーモンの翼の一本を斬り付ける。
魔力で切れ味を増した刃の連撃が、デーモンの翼を切り刻んでいく。
センリに気が付いたデーモンが、腕を伸ばすが。
「まずは一本、もらった―――」
既にその間には、切断された翼の一本が、地面に落下していた。
デーモンが4本の腕で、センリを振り落そうとするが、
センリはデーモンの腕に捕まれる前に、背から飛び降り地面に着地した。
「アル! あの翼を全部、切り落とすんだ」
デバイスでアルへ通信するセンリ。
デーモンは4本に分かれた腕を振るい、センリを叩き潰そうと、拳の連撃を振り下ろす。
だが、降り注ぐ打撃の雨は、センリには掠る事すら無かった。
「翼だな、了解ー!!!」
センリを追い回すデーモンへ、アルスフォードの乗る竜が突進する。
そして、竜はデーモンの翼に噛みついた。
竜の強靭な顎と牙が、デーモンの翼のを引きちぎり、更に爪の生えた腕で掴みへし折る。
バチバチと黒い電流を放ちながら、デーモンの翼が地面に落ちていく。
残る翼は、残り一本。
「おっ、おわっ!?」
だがデーモンは腕を振るい、竜の頭部を強打し、そして怯んだ竜を地面に押し倒して、反撃に出る。
「うっ、や、やばっ・・・!?」
竜の体は、並の魔物とは比べ物にならない程に強靭である。
アルスフォードの操る竜もまた、デーモンの攻撃をまともに受けて押し倒されても、
傷を負う事もなく、唸り声を上げて威嚇していた。
だが、アルスフォードは別だ。
Sランクの兵士とはいえ、デーモンの攻撃に巻き込まれれば、ただでは済まないだろう。
「あ、脚が・・・!?」
一旦、そこから離れようとしたアルスフォードだが。
しかし脚を地面と竜との間に挟まれ、身動きが取れなくなっていた。
デーモンが、残った一本の翼を、アルスフォードへ向ける。
しかし、デーモンの背中に飛び乗ったセンリが、残る一本の翼を、剣の連撃で切断する。
黒い破壊の衝撃波を放とうとしていたデーモンの翼は不発で、黒い煙を吹き出しながら地面へと墜ちた。
「今だ、アル!!! そいつにブレスを浴びせろ!!!」
センリはデーモンの背から飛び降り、そう叫ぶ。
「・・・いいだろう!!! さぁ、我が竜よ、今度こそ、焼き尽くせっ!!!」
翼の折られたデーモンは、直接竜を殴り倒そうと、左腕も4本に分離した。
そして、計8本の腕を振るいながら、アルスフォードへと接近する。
そのデーモンへ向かい、竜はブレスを放った。
白い高密度の魔力が、周囲の空気を振動させてデーモンに直撃する。
結界は発動せず、竜のブレスはデーモンの肩から上を消し飛ばした。
「ふ、ふはは。やっ、やったぞ・・・!」
頭部を吹き飛ばされたデーモンは、動きを止め、やがて地へと倒れ込んだ。
竜が起き上がると、脚が自由になったアルスフォードもすぐに立ち上がった。
「アル、怪我は大丈夫か?」
「あぁ、大したことないぞ。ちょっと足を捻挫しただけだ。治癒魔法ですぐに治る」
アルスフォードは捻挫した足を引きながら、近くの段差に腰かけた。
「しかし、なんであいつ、結界が張れなかったんだ?」
「デーモンのあの翼は、攻撃の為だけでなく、魔力を感知するアンテナの役割もあるんだ。
瞬時に、向かって来る魔法を察知し、最も適正な結界を展開出来るらしい」
「ほう、そうなのか」
センリの話を聞きながら、アルスフォードは、捻挫した脚を治癒魔法をで癒す。
「おい、マジか。あの魔物、もう倒したのかよ・・・」
そこへ、コハクが現れた。
「よう、コハク。生きてたか」
「あぁ、生きてるよ。ところで、フローラさんは別行動?」
「今は別の班と一緒にいるはずだ。
フローラは支援が得意だからな。戦闘よりも怪我人の治療をしたり、結界で後方支援したりしてる」
「なるほどね」
この緊急時では、決まった班で動くだけでなく、そういった柔軟な行動も必要となるのだろう。
「ところで、コハクは一人か? 他の班員は?」
「多分、あっちの民家の裏ら辺で、魔物共に足止め食らってるはず」
「随分と、適当な扱いだな」
センリは苦笑いを浮かべた。
「あいつら、何だかんだ強いから大丈夫だろう」
そんな会話をしている間にも、コハク達の周りには、複数の魔物が集まってきていた。
今やこの街中では、安心して一休み出来る場所など無いのだろう。
6本脚の狼型の魔物が、コハク達へ向かい疾走する。
しかし、アルスフォードの竜が、鋭い爪の生えた腕を振るい、魔物を叩き潰した。
更に、背後からも別の魔物が飛び掛かってくるが、
丸太の様に太い竜の尾が、魔物を強打し、叩き飛ばす。
「いいね。頼りになるな」
「当然。我の竜は最強だからな。
ところで、悪魔も倒した事だし、我らもフローラの元まで戻ろうじゃないか」
アルスフォードは、自慢げにそう言いながら立ち上がった。
治癒魔法により、脚はすっかり治った様子である。
「あぁ、そうだな」
その時、皆のデバイスにメッセージが届く。
「・・・ん、またメッセージか。今度は何だ」
デバイスのメッセージに目を通すコハク達。
「なになに。大型の魔物が出現、正体は不明?」
魔物の中には、普通よりも形状が大きく変化したものや、希少種の様な特殊な物もいる。
その為、初見では分別の付かない魔物がいても、驚くことではない。
しかし。
3人はメッセージの続きに書かれている文字に、思わず絶句した。
「想定危険度、SSSランク?
2体目の、SSSランクの魔物だと?」




