↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/40

5 セレスティアル 3

登場人物

位高(いたか) 憐(れん):創作物の探偵みたいな恰好の青年。

倉根(くらね) 歩夢(あゆむ):MMORPGに熱中している男子高校生。

 ――4日目――



 学校から帰った歩夢(あゆむ)は急ぎ『セレスティアル』にログインする。もちろん、アイマスクはつけて。


 >こん


 >おいすー

 >こん

 >ちわ


 いつものたまり場かからいつも通りの返事ログ。そこに行けばいつものギルドメンバー。

 アイマスクのおかげで、今日も彼らのキャラクターが目の前にいるかのように見えている。

 そして……


 >ブレ君来たね。はりきってノー城行きますか!


 いつものように楽しい狩り。

 モンスターを蹴散らしながら、時おり回復のために小休憩を挟む。


 >いやあアイマスク凄いわ。外した後も思わず明け方までインしてた。

 >平日なのに? ヤバw

 >会社休みてーよなw


 メンバーの弾む会話を横目に、歩夢(あゆむ)は頷き思っていた。


(わかる、わかる。本当、学校さぼってでも『セレスティアル』にいたいもん)


 狩りを再開するが、すぐ視界の端に「マスクを外してください」と赤い文字の表示。さらに母親が夕食に呼ぶ声も重なった。

 中断するよう皆に頼み、歩夢(あゆむ)は一旦ログアウト。


 ゲームへの名残惜しさは、先週より遥かに強くなっていた。



 ――6日目――



 アイマスクによりますます楽しくなり続ける『セレスティアル』。

 そのせいだろうか……歩夢(あゆむ)は夢の中でまでその世界にいた。



 夢の中で『ブレイド』になっている歩夢(あゆむ)は、音も空気も感じていた。

 剣を腰にさげて街を闊歩し、文字ではなく声で会話してアイテムを買う。カーソルクリックではなく自分の指で貨幣を出し、自分の手で背負い袋に道具を入れた。

 街の出入口に行けば、眼前に広がる無限の荒野。

 剣を抜いてその重みを感じながら、ブレイドは足を踏み出す……。



 朝日の中で目を覚まし、歩夢(あゆむ)はしばし呆然として、それから苦笑した。


(日付が変わるまで狩りをしてたせいであんな夢を見たのかな。もっと見ていたかったかも……)



 ――7日目――



 その日もギルドのたまり場に行くと、始めて見る女神官がいた。

 ギルマスの『ピサロ』が皆に紹介する。


 >新しい人がギルドに入ったよ

 >こん~!ラヴェですお!これからよろです!


 >よろ

 >こん

 >よろ~


(初めて後輩ができた!)


 喜んで「よろです」と入力する歩夢(あゆむ)。


 >今日はどうする?歓迎会って事でどこか金策マップでもいく?


 ギルマスの『ピサロ』がそう提案したが、新人は……


 >気にせずいつもの狩場でいいですお!威力バツ牛ンの回復魔法で皆さんの安全も有頂天!


(なんかちょっと変な人が来たな……)


 新人『ラヴェ』のテンションに歩夢(あゆむ)はちょっと不安になる。

 高レベルキャラクターの多いギルドだが、ネットで問題視されているような廃人や悪質プレイヤーのいない、安心できるギルドでもあったのだが……厄介事を起こされたりしないだろうか?


 歩夢(あゆむ)の不安を他所に、ノーデンス城への【ポータル】が唱えられた。



 いざ狩りが始まると『ラヴェ』の支援は強力だった。ギルドの古参メンバーとそう変わらないレベルである。

 新人のキャラクターが自分より高レベルらしい事が歩夢(あゆむ)には少し面白くなかったが、その自分の狭量は反省しておいた。


 >うはwww光と闇の3Kヒール連打www次回のアプデで修正必至wwwうえうえwww


 狩りの途中でも出てくる妙な発言はちょっとやめて欲しかったが……。

 アイマスクのおかげでゲーム世界にいる気分なのに、なんだか水を差されたような気持ちになってしまうのだ。



 その日の狩りも終わり、歩夢(あゆむ)はギルメンに別れを告げてログアウトする。

 ちょっともやもやしていたが……その夜も『セレスティアル』世界にいる夢を見た。


 街を歩き、荒野に出る。

 月明かりの向こうに蠢く影。

 グールどもだ。恐怖を感じつつも、闘志でそれを押しのけ、盾と剣を構えて迎え撃つ。

 騎士としての確かな技量で、行く手を塞ぐ怪物どもを斬り伏せた……。



 ――14日目――



 学校からの帰り道、歩夢(あゆむ)は昨夜の……いや、ここ数日の夢を思い出していた。

 今や『セレスティアル』の夢は毎晩見ている。その内容は一続きになっていた。


(アイマスクのおかげでゲーム世界にいるつもりになっている事が、心に影響しているんだろうな)


 荒野の果てで遺跡を見つけ、地下への階段を下りた。

 炎が燃える神殿に辿り着き、そこにいた二人の番人が次の階段を示す。

 そこからさらに、深い深い階段を下りて……今はその最中だ。


 怪物や罠を退けながらの、未知への探索。

 歩夢(あゆむ)にとって、ここ最近の夢は『セレスティアル』に次ぐ楽しみとなっていた。



 帰宅したらパソコンの電源をON。アイマスクを用意して『セレスティアル』を起動。そしてゲームにログイン。

 いつものたまり場でいつものメンバーに挨拶。


 その中の一人が『ラヴェ』だ。今やすっかりギルドに馴染み、古参の中に溶け込んでいた。

 歩夢(あゆむ)が心配していたような問題も起こしてはいない。


 >おいすー!今日も元気か謙虚な黄金のナイト!みwなwぎwっwてwるwかwいw?


 相変わらずのノリは苦手だが。



 その日の狩りが終わった後、ギルマスの『ピサロ』が発言した。


 >またオフ会やりたいんだけど。どうかな?


 >いいね!アイマスクのお礼を直に言いたい

 >オレも。毎日使ってるよ

 >賛成です


 ログアウト直前だったが慌ててメッセージを入力する歩夢(あゆむ)。


 >僕も絶対行きます


 >おお、面白そうだ。私もいくよ~。アイマスクってナニ?

 >それは会ってのお楽しみ。ラヴェさんもギルマスに貰いなよ。きっとハマるから


『ラヴェ』と古参メンバーの一人がそう会話する横で、次の集合場所の相談が始まっていた。

御覧いただきありがとうございます。

何かしら反応がいただければ嬉しい限りです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。