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新大陸建国記 〜未開のアパラチア山脈から始まる世界蹂躙〜  作者: tky
第6章:圧倒的火力と軍の再編

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第93話:大地を喰らう鋼の獣

建国6年、夏。

帝都がベッセマー転炉の圧倒的な恩恵に沸く中、遠く離れた北の最前線『採掘港』でも、新たなインフラ計画が動き出していた。


湖畔に築かれた強固な防衛陣地の内側で、大量の鉄筋が組まれた巨大な型枠の中に、作業員たちが次々と砕石と砂を運び込んでいた。


「よし、骨材の量は計算通りだ! セメントと水を投入して、型枠の中で直接一気に練り上げろ! ムラを作るなよ!」


郷田の右腕として育った青年カヤが、ヘルメットを被り、土木部隊の若手たちに声を張り上げていた。


生コンを作るプラントがない前線基地では、こうして現場で直接練り上げるのが最も合理的だ。彼らが建設しているのは、採掘港における『ディーゼル火力発電所』の建屋の基礎であった。


かつては郷田が陣頭指揮を執らなければ進まなかった大規模土木工事だが、現在、郷田は現場の第一線を若手たちに任せ、帝都で帝国全土のグランドデザイン(広域都市計画やロジスティクス網の設計)に専念している。


『……郷田さん。あなたが叩き込んでくれたインフラの基礎は、俺たちが確実に受け継いでいますよ』


カヤは、着々と練り上がっていく巨大なコンクリートを見つめながら、誇らしげに汗を拭った。


帝国のインフラは、建国メンバーから、現地民の若手たちへ「自立した組織の技術」として着実に継承されていた。


***


一方、帝都の機械R&D工房。


強烈な油の匂いが立ち込める中、チャパが、複雑に噛み合うギアボックスの組み立てを行っていた。


「真野さん。トラック用の直列6気筒ディーゼルを流用したトランスミッション(変速機)、組み上がりました。……いやぁ、ベッセマー転炉の恩恵は本当にすごいですね」


チャパは、滑らかに輝くギアの歯面を撫でながら感嘆の声を漏らした。


「均一で不純物のない『液体の鋼(溶鋼)』が型から抜けるおかげで、部品の強度計算がピタリと合います。以前の土木重機のように分厚くしなくても、十分な強度が得られますよ」


図面を引いていた真野がペンを置き、満足そうに頷く。


「せやろ。土木重機と違って、トラクターは自分の重さで畑の土を固めすぎてもアカンからな。ベッセマーで作った高品質な鋼鉄部品のおかげで、無駄な肉を削ぎ落として、トルクをロスなく地面に伝える『スマートで機能的な設計』が可能になったんや」


真野は立ち上がり、組み上がったギアボックスをポンと叩いた。


「レアメタルがないから、極限の軽量化とまではいかんが……それでも、既存の鉄塊に比べれば次元が違う。この洗練された駆動系と直6のトルクがあれば、未開の荒野なんぞ一瞬で耕地へ書き換えられるで」


***


数週間後。帝都郊外に広がる、見渡す限りの広大な開墾予定地。


うだるような夏の日差しの中、かつてない機械がその姿を現した。


「よし、各部クリアランス異常なし! チャパ、プラウ(鋤)を下ろせ!」


「はいっ!!」


轟音を立てて大地を震わせているのは、トラック用の『直列6気筒ディーゼルエンジン』を搭載した、帝国初の『農耕トラクター』だった。


土木重機のような分厚い装甲はない。しかし、機能美を追求して組み上げられた鋼鉄のフレームと巨大なタイヤは、大地の抵抗をねじ伏せるための洗練された力強さを放っていた。


運転席のチャパがレバーを引くと、油圧の作動音と共に、後方に連結された強靭な鋼鉄のプラウ(鋤)が、硬く乾燥した荒野の地面に深く突き刺さる。


「出力全開や!! 前進ゴー!!」


ボォォォォォォォォォッ!!!


直6エンジンが黒煙を吹き上げ、力強いトルクがトランスミッションを経て駆動輪へと伝わる。


ギギギギギッ! という音と共に、今まで何十人もの人間がツルハシを振るって数日がかりで耕していた硬い荒野が、歩くほどのスピードで数十メートルにわたって綺麗にひっくり返され、黒く肥沃な土が次々と露出していく。


「……見事だな。計算通りのトルクだ。これなら未開の硬い土壌でも、一切の減速なしでひっくり返せる」


視察に訪れていた農業担当の冴島は、白衣を風に揺らしながら、プロとしての冷徹な満足感を浮かべていた。


「これが、機械による圧倒的な『物理力の暴力』や」


真野は、荒野を驀進するトラクターを見つめながら、汗を拭って笑った。


「秋の収穫期には、この直6エンジンをベースにした『コンバイン(普通型収穫機)』もロールアウトさせる。そうなれば、小麦もトウモロコシも、刈り取りから脱穀まで全部機械が走りながらやってくれる。人間の手作業は、農業から完全に過去のものになるで」


「ああ。東が合成したアンモニア肥料とこの機械化が組み合わされば、数千、数万人規模の『メガ・プランテーション』が実現する」


冴島は、次々とひっくり返されていく黒い土を見つめた。


「そして、穀物が人間が食いきれないほど湯水のように生産されれば、その余剰分はすべて家畜の『飼料』に回せる。……つまり、農業の機械化は、そのまま畜産のメガファーム化に直結する。肉も乳も、文字通り無尽蔵に生産できるようになるぞ」


冴島が、白衣のポケットに手を突っ込みながら薄く笑う。


肉と穀物の、「狂気の余剰食糧」。


それこそが、周辺部族の胃袋を完全に掌握し、帝国という巨大なシステムから二度と逃れられないようにするための、最も強力な支配の鎖となるのだった。

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